海老原嗣生『いっしょうけんめい「働かない」社会をつくる』
海老原嗣生さんの新著『いっしょうけんめい「働かない」社会をつくる 残業代ゼロとセットで考える本物のエグゼンプション』(PHP新書)をお送りいただきました。ありがとうございます。
このタイトルから、海老原ファンの方は、「ははん、あれか」と思い当たるでしょう。そう、経済産業研究所のスペシャルレポートとして書かれた「日本型雇用の綻びをエグゼンプションで補う試案」を膨らませて一冊の本にしたものです。膨らませたというか、全体的な議論をするために、日本型雇用システムの基本的な議論にまでさかのぼって、その部分的修正の提言のキーストーンとしてのエグゼンプションを提示する本になっています。
労働時間の規制を適用除外とする「エグゼンプション制度」。
雇用の第一人者が「過労死促進法」といわれる制度の内実に迫る一冊。
amazonの内容紹介のこの台詞はいただけませんな。いやいやそんなちんけな本じゃありませんってば。
目次の項目を示しただけでそれが窺われるでしょう。
第1章 経営側が隠しているエグゼンプション導入の本音
第2章 なせエグゼンプションは必要になったのか?
1 そうして生まれた熟年ヒラの耐えられない軽さ
2 欧米型雇用は熟年・シニア・女性に優しい
第3章 なぜ欧米人は、しっかりと「働かない」のか
1 残業代をなくせば「家族団らん」というロクでもない話
2 「フランスでもエリートは日曜労働」が示唆すること
第4章 労働者都合でのエグゼンプション設計
1 米国法が示す「雇用を作り、待遇を上げる」エグゼンプション
2 ヨーロッパ諸国の「いかに休ませるか」という取り決め
第5章 どこまで日本型を変えるべきか
1 欧米では隣の席にも異動しないのをご存じ?
2 日本企業の持つ経営的自由と強権
3 日本型は教育などしていない、それでも若手が育つ
第6章 法律でできることと、企業が考えること
1 「日本型を変えるエグゼンプション」のための法律要素
2 社会が拒否せず、受け入れる導入プラン
第7章 みんなで歌う、日本型雇用へのレクイエム
1 入り口が日本型になることの諸問題をどう解決するか?
2 ジョブ型雇用の「上辺構造」を設計する意義
これを見ただけで、近年海老原さんが『HRmics』誌上などで展開してきた議論の集大成になっていることがわかります。
そして、その各章ごと、各節ごとに、私が『若者と労働』やとりわけ『日本の雇用と中高年』などで論じてきたことと共鳴し合っていることが読み取っていただけることと思います。
ちなみに、本書の第2章の章末に、私の小文がちらりと載っております。
また、本書の解説は鶴光太郎さんです。そう、規制改革会議雇用ワーキンググループで労働時間の三位一体改革を示したあの鶴さんです。
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