ようやく、というべきであろう。

 関西電力が美浜原発1、2号機について、廃炉の検討に入った。いずれも運転開始から40年を超える古い原発であり、敷地内に断層問題も抱える。

 廃炉は合理的な選択であり、早く正式決定すべきだ。

 東京電力福島第一原発の事故後、原発の運転期間を「原則40年」とする法改正や新規制基準の導入で、古い原発や安全対策の費用がかさむ原発には廃炉が促されてきた。

 にもかかわらず、これまでのところ、東電が福島第一の1~6号機全ての廃炉を決めただけだった。

 原発は廃炉にして核燃料を取り出さない限り、事故やテロに対して安全にはならない。

 現在国内には、この美浜も含めて原発が48基ある。なかには再稼働が容易に望めない原発も少なくない。各電力会社は美浜にならい、そうした原発の廃炉を真剣に考えるべきだ。

 ただ、廃炉を決めれば全ての問題が解決するわけではない。

 まず、その費用だ。電気料金から積み立ててはいるものの一部では不足が見込まれる。

 経済産業省は原発で発電した電気に基準価格を設けて費用を確保する制度案を打ち出している。が、これは新増設費用までまかなう原発優遇策になりかねない。廃炉費用だけに絞って財源を確保する方策を検討する必要がある。

 さらに深刻なのが廃炉で生じる大量の廃棄物の行方である。

 1998年に国内の商業用原発で初めて廃炉になった日本原子力発電東海原発は昨年、今年度から予定していた原子炉の解体作業着手を遅らせ、全体の廃炉完了時期を2025年度に5年間先送りした。

 原子炉内の部品など「低レベル放射性廃棄物」は50~100メートルの地下に埋める計画だが、その処分地が決まっていないためだ。処分地で安全を保つための基準さえできていない。

 東海に限らず、日本は、使用済み燃料から、こうした原子炉内の部品まで最終的な行方が決まっていない。現在の原発敷地内に置いたまま、という事態になりかねない。

 安倍政権のもとでは、原発再稼働に向けた動きばかりが目立って、廃炉に備える手立ては進んでいない。

 廃棄物問題に代表される廃炉の課題は、原発推進、脱原発の立場に関係なく解決が迫られている。

 政府は課題を直視し、解決に全力を挙げるべきである。