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 社員が発明した特許の権利を、いまの「社員のもの」から無条件で「会社のもの」に変えるのに合わせ、政府は社員の待遇悪化を防ぐための仕組みづくりを本格化させる。この秋の臨時国会にも提出する特許法の改正案に、こうした規定を盛り込むことで、反発する研究職の社員や労働団体の理解を得たい考えだ。

 特許庁内では、報酬を定める社内の規則を社員と話し合って決めるよう企業に義務づけることなどが検討されている。報酬をめぐるトラブルを防ぐガイドラインも作りたい考えだ。

 いまの特許法では、社員の発明の特許を受ける権利は「社員のもの」で、「会社のもの」にするには、企業が社内の規則などに基づいて発明に見合う対価を支払わなければならない。

 これに対し、企業が支払う対価の金額をめぐる訴訟を避けたい企業側が、社員の特許を最初から「会社のもの」にするよう、特許法の改正を求めていた。

 特許庁は6月、「社員のもの」という原則は残しつつ、「十分な報酬制度」がある企業かどうかを事前にチェックし、条件を満たしている企業に限って、特例として「会社のもの」にできる方針を示し、具体案を検討していた。

 しかし、この方針に企業側が反発したことなどから、3日の特許制度小委員会では、条件を満たした一部の企業だけが「会社のもの」にできるようにした場合、「制度が過度に複雑化し、実務に混乱を招くおそれがある」と説明した。事実上、企業側の要望に応えて、一律で最初から「会社のもの」に方針転換する考えを示したものだ。