先月開かれた米ジャクソンホールでの各国中銀総裁の会合で、ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁が講演草稿から離れて話し始めると、世界は耳をそばだてた。
同氏はユーロ圏のデフレを回避するために「何でもする」とはっきり約束したわけではない。しかし、投資家がECBはついに経済停滞の脅威に目覚めたと信じるのに十分な言葉だった。
ドラギ氏は4日、反撃策にさらなる援軍を送った。ユーロ圏の物価上昇率が今後3年間は期待する水準に届かないだろうことを認め、ECBが低迷する需要を下支えする一連の措置を打ち出すことを表明した。
ドラギ氏は伝統的な金融政策に最後の一線を引いた。レポ金利を0.15%から0.05%に引き下げ、域内銀行のECBへの預金に課す手数料を0.2%に引き上げた。
より重要なのは、資産担保証券(ABS)の買い入れを開始すると表明したことだ。
■ABS買い入れに利点と難点
これは多くの市場関係者が求めていた本格的な量的緩和ではないが、ユーロ圏の銀行がバランスシート改善に取り組まねばならない現状では利点がある。このような状況で国債利回りが低下しても、金融機関に融資を促す効果はあまりないとみられるからだ。
ドラギ氏の計画に難点がないわけではない。ABSの購入は、原資産の規模が十分でなければならず、銀行のバランスシートの緊張を本当に解消し、新規融資の余地を生み出してこそ効果があるからだ。
ECBは今後、購入資産の範囲を不動産担保証券などに拡大する意向で、購入可能な資産は2000億ユーロ規模になるとみられる。ドラギ氏はさらに、ユーロ加盟国が保証することを条件に、よりリスクの高いメザニン債なども進んで買い入れると表明した。
そうした約束を実行する意味があるなら、それを実現しなくてはならないことを各国政府は理解する必要がある。仮にABSの購入だけでは不十分だとわかれば、ECBはすぐ本格的な量的緩和に乗り出せる準備を整えるべきだ。
先月開かれた米ジャクソンホールでの各国中銀総裁の会合で、ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁が講演草稿から離れて話し始めると、世界は耳をそばだてた。…続き (9/5)
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