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【社会】

これまでも隠れた感染? デング熱、新たに19人

デング熱を媒介する蚊の発生を防ぐため、池の水を抜く作業をする職員=1日、東京都渋谷区の代々木公園で

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 厚生労働省は一日、千葉、茨城など六都県で新たに十九人のデング熱感染を確認したと発表した。いずれも最近の海外渡航歴はなく、東京都渋谷区の代々木公園でウイルスを保有した蚊に刺されて感染したとみられる。

 デング熱は八月二十七日、国内で感染した患者が約七十年ぶりに見つかって以降、国内感染は計二十二人となった。すべての患者の容体は安定している。

 厚労省はほかの地域でも小規模な流行が起きる可能性はあるとみているが、「感染しても重症化することはまれ。代々木公園に限らず、蚊に刺されて三〜七日程度で高熱が出れば、早めに医療機関を受診してほしい」と呼び掛けた。

 新たに感染が判明したのは五十代までの男女で、十〜三十代が中心。居住地の内訳は埼玉県一人、千葉県一人、東京都十三人、茨城県一人、神奈川県二人、新潟県一人。八月二十八日までに東京一人、埼玉二人の計三人が確認されていた。国立感染症研究所などは患者の周辺に感染者がいないかどうか調査している。

◆重症化はまれ

 なぜ突然、代々木公園で多くの感染者が見つかったのか。国立感染症研究所は一日の記者会見で、最初の感染者三人がたまたま公園の利用者だったと分かり、報道によってほかの利用者らが医療機関に相談したためと説明。これまでも小さな流行は起きていたが、デング熱と診断されなかった可能性があるとみている。

 デング熱の主な症状は高熱や頭痛、発疹などで、特有とはいえない。医療機関は通常、海外渡航歴のない患者にはデング熱を疑わず、原因不明のまま治療に当たる。仮にデング熱と診断されても、蚊に刺された場所の特定は難しい。

 今回は二つの偶然が重なった。一人目の十代女性を診た医師に、デング熱の患者を診察した経験があり、検査で感染が判明。この女性と同じ学校の生徒二人が感染し、共通の活動場所として代々木公園が浮上した。報道によって、公園に行ったほかの患者らが医療機関に相談し、多くの感染者判明につながった。

 厚労省は今回は地域限定の感染で、秋には収束するとみている。媒介するヒトスジシマカの活動範囲は半径約五十メートルと狭く、平均気温が一〇度以下では生きられない。成虫の生息時期はほぼ五〜十月に限られる。ただ、温暖化などで分布域は拡大しており、感染症研究所ウイルス第一部の西條政幸部長は「夏の高熱を診断する時、考えに加えるべき疾患になった」と話す。

 デング熱は、アジアやアフリカなどで毎年約一億人の患者が出ているとされる。発症者の1〜5%ほどが重症化するため注意は必要だが、治療で回復する。海外で感染し帰国した人は一九九九年以降、計約千五百人いるが、死亡は一人だった。西條部長は「比較的良性の疾患で、それほど怖がらなくていい」と説明する。 (柏崎智子)

 

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