1.はじめに
金融庁検査・・・・。 よく新聞でも、どこの銀行に検査が入ったという報道がなされます。 また、この検査での対応が問題で、UFJ銀行という一つのメガバンクが姿を消しました。
では、金融庁は何を検査するのでしょうか? とても興味深いですよね。
本来、金融庁は健全な金融行政を行い、国民生活を守る義務があります。
ことばを変えると、皆が安心して銀行を利用し、銀行に働き、銀行に投資することができるようにする義務があります。 そしてその結果、経済を安定させ、国民が安心して生活ができるようにする義務があるのです。
でも、果たして今の金融庁の検査は、国民生活を守るという義務に資するものでしょうか? この記事では、金融庁検査の正体についてお話したいと思います。
2.入検通知
入検通知は検査が入る2週間前に行われます。 従来、大蔵省検査の時は、時期を明確にせずに突然入るというのが建前でしたが、入検時期などについて銀行のMOF担が探りを入れて情報を入手していました。
この情報を得るために大蔵省に対して銀行が過剰な接待を行った結果、不祥事となり、大蔵省は財務省と金融庁に分かれました。
でも、検査の入検時期を明らかにしてもらわないと、大きな組織を一度に動かすことはできません。 やはり準備は必要でしょう。 金融庁の側でも、ある程度準備してもらわないと、無駄に時間が経過することにもなります。
ということで、2週間前には、いつから入検するかが通知されます。 尚、終了時期は未定です。 2ヶ月の時もあれば半年くらい入ることもあります。
それにしても、そもそもこんなに長い期間入ること自体不思議です。 そもそも金融庁の検査は年に1回入ります。 ということは銀行からすれば、1年の2割~3割は検査に体力を取られるのです。 銀行だって、民間企業かつ営利企業としても社会的責任を負うわけですから、、これほど重い検査負担をかけるのは、ある意味営業妨害とも言えそうです。
さて、入検通知が来ると、各支店は準備をします。 何の準備をするかというと、資産査定の準備をするのです。
「銀行の不良債権」 でもお話しましたが、銀行の資産である債権は5つの段階に分けられています。その5つの分類がきちんとできているかを検査するのが資産査定です。
もちろん、全ての債権を検査するのはとてもできないので、大口先とか赤字先とかを抽出して検査します。 この抽出基準については毎回変わるのですが、準備期間中は前回の基準に基づいて準備を始めるのです。 具体的には自己査定の資料を整えたり、金融庁向けの資料を作ったりします。
尚、この時に注意しなければならないのは、お客さまから資料をいただくときです。 絶対に金融庁検査の為とは言ってはいけないと金融庁からきつく厳命されています。
これについてもおかしな話で、実際には銀行がお客さまから頂く資料以上のものを金融庁は要求してきます。 もし、全てのお客さまにそれだけの資料を要求すれば、銀行は資料集めに体力がかかり過ぎて、貸出ができなくなります。 お客さまにとっても迷惑です。 更に、検査の最中に新たに資料を要求してくることもあります。
なぜ、それだけの資料が必要かお客さまに説明しなければなりませんよね。 金融庁はあくまでも検査の為に資料を要求されたと言われて、クレームやトラブルになることを恐れているのです。 まさしく役人根性というか、自分たちの保身の為に金融庁という言葉を出してはいけないと言っているのです。 しかし、お客さまもバカではありません。 これだけ大量の資料が要求されるのは、金融庁検査の為であるということを百も承知されています。
さて、銀行が資産査定の準備をしている内に、抽出基準が示されます。 これに基づいて、今回の資産査定先が明確になったところで、いよいよ入検です。
では入検後の動きはどうなるのか・・・・。 次回、お話したいと思います。