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2014-09-05

「自国の平和」と「世界の平和」が隔てるもの

見習うべき(?)ドイツの平和論。


ドイツ大使館 ドイツ総領事館 - シュタインマイヤー外相寄稿

そういえばドイツ外相であるシュタインマイヤーさんがクルドへの武器支援に関連してとても面白い寄稿を読売新聞にしていたそうで。

私たちは、世界の秩序が崩壊しても、外界から隔絶していられると幻想を抱くべきではない。私たちの豊かさと安全は、全世界とのつながりによって保障されている。それゆえ、私たちに何ができて、何を行わなければならないのかと冷静に問わなければならない。同時に私たちの可能性の限界も、常に認識していなければならない。

ドイツ大使館 ドイツ総領事館 - シュタインマイヤー外相寄稿

ぐうの音も出ない正論。

今も尚『一国平和主義』を愛する日本にとっては耳の痛すぎるお言葉ですよね。もし読売寄稿という形で日本に向けてのメッセージとしてやったのであれば、知日派として優秀すぎるライターであります。


でもこうした信念は、アメリカやヨーロッパの主流にある所謂『国際主義』としては基本的なお話でもあります。世界の――それは必然的に自国とイコールである――平和は、自らの手で維持し続けなければならない。それは重要すぎるほどに重要だからこそ「他の誰か」に委ねるわけにはいかない。もちろんそれは一歩間違えれば危険な道に入りかねないやり方ではあります。でもだからといって全てを成り行き任せに「何もしない」という選択肢はずっと大きな破滅が待っているから。

故に国際主義を信奉する人たちはただ自国のみ平和であれば良いのではなく、「世界への関与」を続けることこそが世界平和の道だと信じている。


私たち日本のようなポジションからはあまり理解されないお話ではありますが、戦後ドイツというのは加害国であり敗戦国であるからこそ、むしろヨーロッパにおける国際主義――最近の日本風に言えば「積極的平和主義」の旗手であり続けたのでした。自らの平和は、周辺国と連携した積極的な外交活動によってこそ、守られるのだから。

その結実があの欧州連合であると。ユーロはともかくとして、東アジア共同体を視野に欧州連合のプロジェクトを称賛する人たちは尚も少なくありませんけども、その辺の事を解っているのかなぁと。

自国の平和を守るのは当然で、その上で、外界をも射程に入れた行動を採らねばならない。だからこそ自らの地位に見合った責任は、例え批判されようとも果たさなければならない。何故なら「世界に国際脅威なんてない」という幻想のまま、その脅威を現実逃避しながら放置し続けた結果があの世界大戦であったわけだから。

国際主義の本質について。

いやぁやっぱり日本にとってひたすら耳の痛いお話ですよね。


ちなみに、こうした現代にまで続く『国際主義』というのは、上記のように第二次大戦や冷戦構造下の経験こそが欧米の政治的エリートたちにそれを根付かせたわけです。ということは、戦中戦後世代や冷戦世代が徐々に世代交代しつつある中で「段々何で自分たちがそんなことしなくちゃいけないんだよ」という意見はアメリカやヨーロッパで徐々に増えつつあるのもまた事実なんですよね。その国際主義の後退の筆頭が現在のアメリカでもあるわけだし。

自分たちさえ平和であれば別に世界がどうなろうがどうだっていいではないか、なんて。

……世界が日本に追いついてきたな!

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