焦点:沈む中国と浮上するベトナム、TPPで米衣料品市場が変化へ
[ワシントン 4日 ロイター] - 米国が12カ国の環太平洋連携協定(TPP)を狙い通り実現すれば、米衣料品店で中国製品を目にする機会が減ることになるだろう。
米政府が目指している枠組みの下では、ベトナムが最も恩恵を受ける国の1つとなり、米衣料品市場で中国からシェアを奪うとみられる。
一方で570億ドル規模の米繊維産業は、不振脱却の助けとなった彼らのビジネスモデルが、TPPによって破壊されるのではないかと懸念している。米繊維産業が確立したのは、地域貿易協定を利用して中米諸国に原料を輸出し、そこで衣料を製造して関税なしで米国の小売店に納入するという仕組みだ。
ただある米政府高官は、原産地規則などの手段や関税率引き下げにさまざまな時間差を設けることで、中米地域の利益を保護できると指摘した。
米加工糸メーカー、ユニファイ(UFI.N: 株価, 企業情報, レポート)のビル・ジャスパー最高経営責任者(CEO)は「TPPによって中米諸国が打撃を受けるとすれば、われわれの業界にも壊滅的な影響が及ぶ」と話す。それでも「適切で賢明な交渉が行われれば、最大の影響を受けるのは中米ではなく、中国になると思う」との見方を示した。
今週のTPP交渉官会合の開催地であるベトナムにとっては、衣料分野は最優先の課題となっている。交渉に詳しい米国の関係者によると、TPPを通じてベトナムは中国やその他の貿易優遇措置を受けない国からかなりの市場シェアを奪う可能性がある。
米政府は実際の交渉で、自国経済への影響度に応じて品目別に関税率の引き下げ期間を差別化する方針。つまり中米製が大きなシェアを占める下着や紳士物ニットなどの綿製品については、関税率引き下げはより長い時間かけて実施し、中国製が支配的なダウンジャケットや合成繊維衣類の関税引き下げは、もっと早くなる可能性がある。これがベトナムに追い風となる形だ。
米衣料品市場における市場シェアを見ると、2010年に39%超だった中国は今年半ばで37%を割り込み、ベトナムは10%超にまで伸ばしてきた。 続く...