コラム:日銀総裁の発言に重み、消費増税延期なら対応困難も
田巻 一彦
[東京 4日 ロイター] - 今年後半における最大の政策課題である10%への消費再増税に対し、日銀の黒田総裁は4日の会見で再増税しない場合のリスクが大きいと明言した。背景には、量的・質的金融緩和(QQE)が機能する前提として、財政の信認が決定的に重要という構造がある。安倍晋三首相のブレーンには増税延期論が根強いが、延期すると対応が難しくなる可能性があると総裁が発言した重みは大きい。政府の議論に大きな影響を与えると予想する。
<「対応しようがない」と黒田総裁>
首相の周辺では、10%への消費税引き上げに消極的な見方が多くなっているのではないか──。こうした見方が、市場関係者の中で広がりを見せ始めていた。特に首相の経済ブレーンで内閣官房参与の本田悦朗・静岡県立大教授が1日のロイターとのインタビューで、1年半先送りして2017年4月からの実施を主張。市場では、株買いの材料にもなっていた。
だが、このムードに変化が起きている。3日の内閣改造・自民党役員人事で、財政再建論者の谷垣禎一氏が幹事長に起用され、市場には「もしかして、安倍首相の本心は10%容認ではないか」(邦銀関係者)との声も出てきた。
そこにこの日の黒田総裁の発言が加わった。それも、単純に財政の健全性の重要性を指摘するだけでなく、政策の効力の面から言及したことの意味は、相当に大きいと考える。
黒田総裁は、増税見送りの場合のリスクに関し、「政府の財政健全化の意思、努力が市場から疑念を持たれることになると、確率は低いとは思うが、そういった事態が起きると、政府・日銀としても対応しようがない」と述べた。
かみくだいて言い直せば、マーケットが日本の財政赤字に関し、コントロールが出来ず、膨張したままになると判断すれば、日銀が追加緩和で国債などの資産購入額を大幅に増やしても、かえって長期金利の上昇と行き過ぎた円安を助長し、その結果として財政赤字がさらに膨らむという「最悪のシナリオ」になるということだろう。 続く...