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日本の条理は世界の不条理!? 田島麻衣子

オックスフォードが教えてくれた
日本のブラック企業問題が世界から理解されない理由

田島麻衣子 [国連職員]
【第1回】 2014年8月29日
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 これに対して、ロンドンの人々は団結して工場と交渉し、世界でも先駆けとなる最低賃金の設定に関する労働者保護立法や、労働組合の設立のきっかけを作った。だから同時期に、大陸を隔てたオホーツク海上の日本漁船で、生命の危険を犯しながら蟹工船に乗り組み蟹を水揚げしていた人々の苦労が、その後どのような形で日本社会に制度としての恩恵をもたらしたのかについても、筆者は是非知ってみたいと思う。両者の意味するところは似ているので、Sweatshop-type office work system in Japanと言えば、大体の外国人がそれに近いイメージを脳裏に浮かべることができるのではないかと思う。

日本のブラック企業問題が
海外の人々に理解されない本当の理由

 さてこの海外のSweatshop問題であるが、21世紀の今日においては、富める国の人々の関心の大多数は自国の働き手の苦悩ではなく、途上国の人々の過酷な労働環境に移ってしまったようだ。

 スタンフォード大学で哲学を専攻し、社会問題にも詳しい知人のアメリカ人に聞いたところ「は、何?途上国の話?」と返されたのも、決して偶然ではない。

 例えば、2013年のバングラディッシュで1200人以上の死者を出したアパレル工場の崩壊事故は、様々な国際世論を巻き起こした。いつか崩れるとわかっていながらも、その日工場に出勤した人々の理由は、社内の複雑な人間関係などではなく、また「やればできる」という上司の無茶振りでもなく、はたまた辞めたら世間からどう思われるかという世間体でもなく、ただどうにもならない貧しさであったという。

 7万円弱が国の平均年収のこの国で、月の家賃1000円と食費2000円を払うために、彼らはいつか崩れるとわかっている工場に今日も向かう。世界の人々が、日本のブラック企業問題の根本を、理解しきることができない理由はここにある。

 何故こんなに富める国の日本人が、この21世紀に劣悪な労働環境に悩まなければならいのか。ブラック企業で疲弊する日本人のほとんどは、工場労働者などではなく、正社員雇用の恵まれた環境に置かれた人ではなかったのか、と。

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田島麻衣子 [国連職員]

新日本監査法人国際部(KPMG)を経て、国連世界食糧計画(WFP)勤務。これまでアメリカ、イギリス、フランス、イタリア、ラオス、アルメニアに日本を加えた7ヵ国で生活、60ヵ国籍以上の同僚達と共に仕事をしてきた。途上国/先進国、アジア/ヨーロッパ/アメリカ/アフリカを横断する自由な視点を持つ。見た目からは想像できないと良く言われるが、水も電気も通っていない途上国の河原での入浴も、普通にこなす。職業柄、各国の大使、外交官、様々な国の若手起業家達に知り合い多数。東京都出身。

オックスフォード大学院修士課程修了。青山学院大学国際政治経済学部卒。青山学院高等部終了(フェンシング東京都大会準優勝)。

田島麻衣子ブログ
Twitter: maiko_tajima

 


日本の条理は世界の不条理!? 田島麻衣子

日本の条理は、世界の不条理。中にいると良くわからないことでも、外からみるからこそわかることがある。このコラムでは、日本のビジネスパーソンが日常で経験する職場の気になる出来事が、世界の一流人達の間ではどのように扱われているのか、また日本で現在話題になっているトピックが、世界中のビジネスパーソンからどのように見られているのか等について書く。

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