かつ江さん:あまりに不憫…黒鉄ヒロシさん連載に2度登場

毎日新聞 2014年09月05日 07時45分

「かつ江(渇え)さん」=鳥取市教委提供
「かつ江(渇え)さん」=鳥取市教委提供

 鳥取市教委が公募で選定した鳥取城跡のマスコットキャラクターで飢餓をテーマにした「かつ江(渇え)さん」が、漫画家の黒鉄ヒロシさんが小学館(東京都千代田区)の人気漫画雑誌「ビッグコミック」に連載中の作品で、2回にわたり登場した。7月7日に市教委のホームページ(HP)で公開され話題となったものの「不快」などの批判を受けて4日間で姿を消していたが、思わぬメジャーデビューで「復活」した格好だ。

 8月9日発売の同誌16号と同月25日発売の17号で、黒鉄さんが「赤兵衛」で登場させた。16号では、羽柴(豊臣)秀吉による鳥取城の兵糧攻めを説明し、「せっかくこの世に姿を現したのに……」など、公開終了を悲しむようなセリフもある。黒鉄さんも欄外に「あまりに不憫(ふびん)すぎて描いてしまいました」「かつ江さん、応援してます。作者」と書いている。17号では「大反響につき再登場」とし、同じく兵糧攻めがあった三木城(兵庫県三木市)の架空のキャラクター「ヒー(干(ひい))子ちゃん」とのやり取りが描かれた。

 キャラクターの著作権を持つ市教委は7月10日、2次利用や2次創作、公表を禁止したが、黒鉄さんは無断で使用した。ビッグコミック編集部は毎日新聞の取材に「許可を求めれば断られると考えた。(すぐに公開中止になった事を)批評するために掲載した。批判があれば対応する」と説明。読者からは「こんな事実があったと初めて知った」「どうして鳥取市は公開をやめたのか」などと賛同の声が多数寄せられたが、批判的な意見はなかったとしている。

 市教委は16号の発売から約1週間後にかつ江さんの「復活」に気付いた。ただ小学館への問い合わせや抗議はしていない。取材に対し、「好ましくない」としつつも「兵糧攻めの背景も説明され、悪意のある作品ではない」として不問に付している。市教委への抗議などもないという。

 しかし市教委はHPで公開した際、「同じ名前の人が不快に思う」「行政が飢餓をちゃかしている」などの抗議を受けたとして、公開中止を決めただけに、今回の黙認は対応が一貫していないともいえる。鳥取大地域学部の小泉元宏准教授(芸術社会学)は「議論をした上で対応を変えるのならば良いが、議論を避けて黙認するのは問題だ」と指摘している。【川瀬慎一朗】

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