「中国の脅威があるから、集団的自衛権が必要」という理論は、まったく意味をなしていないというのは、「集団的自衛権」に書きました。

ですが、それ以前に「中国の脅威」という話自体、私は、国民を不安に落とし入れ、戦争に駆り立てるためのでっち上げに過ぎないと思っています。 

まず、中国との大きな火種になっているのは、安倍首相の靖国参拝です。これは、安倍首相が靖国神社を参拝して中国を怒らせただけです。中国は、安倍首相に対しては怒っていますが、日本に対して怒っているわけではありません。安倍首相と会うことは拒絶する中国ですが、なんと福田元首相とは春に李首相が、この7月には習主席がちゃんと会っているんです。

福田氏は「習さんも日本の悪口は言っていない。考え方は(私と)変わらないとの思いはある」と述べ、習主席にも日中関係打開への意欲があるとの見方を示した。(「福田元首相「日中は危機感共有」 中国主席との会談認める」より 2014/8/27
そして、中国のトップは二人とも、小沢一郎氏とも仲良しだそうです。

習近平国家主席、李克強首相は、小沢一郎代表と極めて親密で、世界支配層(主要ファミリー)から「国連を基盤とする世界政府」樹立を見通して「新帝王」に指名されている「小沢一郎代表」が、「ポスト安倍」を担う総理大臣(首相)に就任するのを待望している。(「「小沢一郎総理大臣待望」習近平国家主席、李克強首相は、安倍晋三首相「打倒」めざし援護射撃を強める」より 2014/3/27
ここのところ中国の姿勢が頑ななのは、単に安倍首相が嫌いなだけなんです。

(靖国参拝について、後ろの方にもう少し
私の考えを書きました。) 

次に、尖閣諸島の問題ですが、この問題は、日本人が思っているような中国の脅威には結びつかないと思います。日本では、過激な反日デモが中国の日本に対する態度そのものと思われていますが、実情はそんな感じではないようです。

今の反日デモに参加しているのは知識がなく政府に操られやすい人、街をブラブラしているチンピラ、そして警察です。
中国のネット利用者は5億人。そのうちの3億人はブログなどで反日デモを否定しています。
そもそも、反日デモでは毛沢東の肖像画がたくさん掲げられていましたが、その毛沢東自身、「尖閣諸島は日本のものだ」と言い残しています。中国でも知識のある人たちはみな知っている常識です。(天安門事件主要メンバーのインタビュー記事より 2012.11.27
実際、私も個人的に、中国に行っていた知人から「あれは中国政府に不満を持つ貧困層の人達が便乗して騒いだから、あんなに過激になっただけだ」と聞いたことがあります。

そもそも、歴史的には日本は米国との関係を安定させるためにわざと中国との関係改善を抑止していたそうです。つまり、日本側から悪い関係を維持しようと努力していたというのです。しかも、理由は中国そのものではなく、米国に擦り寄るためというのだから、中国側からしたらまったくいい迷惑です。

 日本政府が、ガス田や靖国などの問題を使って日中関係の改善を抑止していたのは、日中関係が改善してしまうと、アメリカが日本との軍事同盟を希薄化させていきかねないからだった。(「日米安保から北東アジア安保へ」より  2008年6月24日
もちろん、中国も中国です。下手な小競り合いを作ったり、反日政策を続けたりしているのは本当です。

でも、中国は、実際のところ戦争してまで日本と敵対したいとはちっとも思っていなかったと思います。日本が集団的自衛権などであまりに強行な態度に出るので、今は正直勘弁してくれと思っているんじゃないでしょうか。実際、こんな風に言ってきてくれているのです。

中国が、旧日本軍の戦犯の追悼法要に反応する中で、日本に対し軍国主義化から離れるよう求めました。

韓国・ヨンハプ通信によりますと、中国外務省の秦剛(しん・ごう)報道官は28日木曜、声明の中で、「日本政府は、戦争や侵略行為を行ってきた過去の歴史を正視し、軍国主義から距離を置くべきである」と語っています。また、日本に対し、近隣諸国や国際社会の信頼を得る為、友好的なアプローチをとり、過去に逆戻りしないよう求めました。(「中国が日本に、軍国主義から距離を置くよう要求」より  2014/08/28
中国も、多少の意地悪をすることはあれ、正直なところ戦争はご勘弁なのです。

また、諸外国も中国と仲良くしたがっていると思います。少なくとも、アメリカは「集団的自衛権」に書いたとおりの状態だし、安倍首相は、このたびインドにも中国と敵対するように持ちかけて玉砕しています。

今回の会談にあたって、日本政府は、海洋進出の動きを活発化させる中国を念頭に、両国の外務・防衛の閣僚級協議、いわゆる「2+2」の創設を水面下でインド側に働きかけてきました。
しかし、共同声明では、現在もある外務・防衛の次官級対話の強化は確認したものの、閣僚級協議への格上げは盛り込まれませんでした。
インド側は、現在の枠組みでも両国の意思疎通は十分になされていると説明していますが、隣接する大国である中国を過度に刺激したくなかったのではないかという見方も出ています。(「日印首脳会談の成果と課題は」より 2014/09/02

このように見ていくと、「中国の脅威」などというのは、日本政府が作り出したまやかしに過ぎないということがよくわかるでしょう。

以下、私がツイッターで見つけた中国関連のツイートです。







プーチンさん、ごめんなさい…。


《靖国参拝について思うこと》

靖国神社は、A級戦犯が合祀されているため、天皇陛下も参拝していません。これは、天皇陛下が戦死者をおざなりにしているのではなく、A級戦犯の祀られている場所を参拝することをよしとしないからです。天皇陛下でさえこのように理解している合祀です。どんなに戦死者への気持ちを語っても、諸外国には言い訳にしか聞こえないでしょう。根本的な問題解決として、A級戦犯と戦死者を祀る場所は切り離すべきだと思います。

しかも、中国が求めているのは首相が参拝したり、政治家が集団で参拝したりしないことであって、一般国民の参拝まで批判してはいませんから、中国との友好関係を保ちたいという気持ちがあれば、首相になったときには参拝すべきではないでしょう。実際、ほとんどの首相は参拝していないのですから(安倍首相の前に靖国に参拝した首相は、イラクに自衛隊を送った小泉首相)、安倍首相が中国との関係をおざなりにしていると思われても当然です。

また怖いのが、安倍首相の場合、実際のところ、本音の気持ちは戦死者ではなくA級戦犯に参拝していると思われることです。こんなことを発言するような人です。

安倍晋三首相が4月、A級、BC級戦犯として処刑された元日本軍人の追悼法要に自民党総裁名で哀悼メッセージを書面で送っていたことが朝日新聞の調べで分かった。連合国による裁判を「報復」と位置づけ、処刑された全員を「昭和殉難者」として慰霊する法要で、首相は「自らの魂を賭して祖国の礎となられた」と伝えていた。(首相、A級戦犯ら法要に哀悼メッセージ「祖国の礎に」より 2014年8月27日

これについては、ニューヨークタイムズも呆れています。



関連記事:

福田元首相が訪中 共産党指導者と会談か(朝日新聞デジタル) 2014年8月1日

福田元首相「日中は危機感共有」 中国主席との会談認める(日本経済新聞) 2014/8/2

尖閣諸島領有紛争で中国が望んでいること(東洋経済オンライン) 2014年08月10日

「小沢一郎総理大臣待望」習近平国家主席、李克強首相は、安倍晋三首相「打倒」めざし援護射撃を強める(板垣 英憲(いたがき えいけん)「マスコミに出ない政治経済の裏話」)2014年3月14日

天安門事件主要メンバー「『尖閣諸島は日本のもの』と毛沢東は言ったんです」(日刊SPA!)2012.11.27

「反日デモや抗日ドラマ? あんなの茶番よ」日本人が中国人を誤解し恐れる“不幸の構造”の正体――ジャーナリスト・中島 恵(ダイヤモンドオンライン)2013年11月7日

中国が日本に、軍国主義から距離を置くよう要求(IRAN Japanese Radio)2014/08/28

日印首脳会談の成果と課題は(NHK News Web)2014年9月2日

日米安保から北東アジア安保へ(田中宇の国際ニュース解説)  2008年06月24日

(最後の関連時期から抜粋です)

▼東シナ海ガス田の解決

 日本の政界やマスコミには、まだ北朝鮮や中国に対する敵意に満ちているが、日本政府は現実的な態度をとっており、すでに日米安保体制から北東アジア新安保体制への移行期の動きとして、中国との関係改善のプロセスに入っている。

 その象徴は、東シナ海ガス田をめぐる日本と中国の紛争が、意外な速さで解決したことだ。日中両政府は6月18日、中国がすでに開発している白樺ガス田(春暁ガス田)に日本が出資し、他の区画の今後の開発は共同で行うことで最終合意した。未解決の、排他的経済水域の境界線問題は棚上げし、日中外相は、2004年以来のガス田紛争の解決を発表した。

 この決着の最重要の意味は、日本政府が中国との関係改善を遅延させる目的で紛争化していたガス田問題を決着させたこと、つまり日本政府が中国との関係改善を抑止するのをやめたことである。中国は以前から、すでに中国側が進めているガス田開発に、日本が資本参加することで対立を解消しようと表明していた。今回の解決は、中国の提案を拒否し続けてきた日本が、態度を転換して対中協調することにした結果である。

 日本と中国では、境界線に対する主張が対立しているが、中国側は、日本が主張する境界線より中国側、中国の排他的経済水域で春暁ガス田を採掘しており、日本側はもともと春暁ガス田について中国を非難する立場になかった。日本側では「ガス田自身は中国側領域にあっても、そこからガスを採掘する地中のパイプを日本側まで越境させて伸ばしているに違いない」と、立証できない非難(いちゃもん)を中国側に対して行うなどして、ガス田問題を紛争化した。日本政府は、他に小泉元首相の靖国参拝などによって中国の世論を反日化させ、中国政府が日本に外交接近することを阻止していた。

 日本政府が、ガス田や靖国などの問題を使って日中関係の改善を抑止していたのは、日中関係が改善してしまうと、アメリカが日本との軍事同盟を希薄化させていきかねないからだった。6者協議が成功し、北東アジア安保体制へと移行していくと、もはや日米軍事同盟の希薄化は避けられない。そのため、日本政府は、ガス田をめぐる中国敵視策を破棄し、北東アジア安保体制に順応する準備を開始したのだろう。(「日米安保から北東アジア安保へ」より  2008年6月24日