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「24時間テレビ」という「偽善番組」の必要性

「日本テレビの『24時間テレビ』について長谷川さんはどう思いますか?」

というご質問を何人かの方から頂きました。
視聴率、素晴らしかったですしね…。城島さんのゴール後のインタビューシーン、視聴率、40%超えてたそうですよ(驚)。本当にすごいと思います。これぞ「夏の風物詩」だし、何より素晴らしかったのが「募金」という文化を日本に根付かせたことだと思っています。
日本はキリスト系の文化が根付く欧米諸国と違ってそもそも「寄付文化」がほとんどありません。今週の僕の番組内でも話になりましたが、そこを確立させた「24時間テレビ」の功績は称賛されるべきです。なので「24時間テレビ」に対する感想は「番組として素晴らしいだけじゃなく、社会的な貢献も素晴らしい!」が答えです。

でも、こちらも番組の中で寄せられた感想の一つだったのですが…
「偽善の匂いがします!どう思いますか?」
これはですね…感じてらっしゃる方が多いと思うんですよね。何故かというと

偽善だから

です。はい。「24時間テレビ」ですか?ええ。言うまでもなく、「偽善」番組ですよ?しかも、「善か偽善か」なんて論じるまでもないほど、典型的な「偽善番組」です。「偽善番組」という言葉を番組にするとそのまま「24時間テレビ」が出来上がると言っても過言でないほどの偽善番組です。

これはちょっと説明が必要な方も多いと思うんですけど、「偽善臭がする」って言ってる人って多分「偽善」という言葉をちゃんと咀嚼できていないと思うんです。
「善意の行動」ってありますよね?人のためを思って。ただ、真っ直ぐに。そういう人の行動って見ているだけで、なんだか心が洗われますし、何よりも、「う~ん、僕も何か人のために行動しようかなぁ…」なんて思っちゃったりして。周りの人を巻き込んで、幸せにしますよね。善意の行動を出来る人、素敵だと思います。
色んな説明を多くの人がするでしょうが、あんまり深く考えないで、こう捉えたらいいんです。
「善意の行動」をしてる人」って、「周りの人を幸せに」します。

「偽善」は逆だと思っておいてください。
僕は元日テレの脊山ちゃんには、同じ元キー局のアナウンサーとして頑張ってほしいとは思ってもいます。でも、彼女のアイスバケツチャレンジを見て、
「僕は絶対にアイスバケツチャレンジをやらない!」
と一時期、心に決めたほどでした。一緒に思われたくない一心でした。彼女が何を思ったのかはもちろん分かりません。でも、彼女のアイスバケツチャレンジを見た人はとても気分の悪くなった人、多いと思います。

わざわざ、水で透ける薄手のTシャツを着て、アイスバケツをかぶって、そのままそのTシャツを脱ぎ始めて…。気がついたら、水着を下に着ていて…。結局、写真集かDVDの宣伝行為だったという…。
脊山ちゃんも寄付はしてくれたんでしょうし、真っ直ぐな女の子だと思うんで悪意は全くないと思うんですよね。でも、僕はそれを見て、さすがにあまり気分は良くなかった。しかも、彼女がアイスバケツをかぶったというニュースが流れたその日、僕の親友の従妹は天国に旅立ちました。ALSで。
天国に旅立った彼女の意思は「一人でも多くの人にALSという難病があることを知ってほしい」というものでした。なので、僕も24日にアイスバケツをかぶりました。遺志を継ぎたいと思ったので。

「偽善」

とは、世間的に「善意の行動」と言われ、賞賛される行為を『隠れ蓑』にして、結局私利私欲の行動、自分の欲望をかなえる行動をとる行為のことを言います。
脊山ちゃんは世間の「チャリティー活動」という一般的には評価されそうな行動を使って、自分の写真集やDVDの売り上げを伸ばそうとした、と受け取られてしまった。
この段階で「偽善」と言われてしまいます。その裏に意思があろうとなかろうと。だって、わざわざ「水着になる必要」はないんだから。

日テレさんの『24時間テレビ』も同じですね。

寄付をしよう!募金をしよう!

そう呼びかけていたジャニーズのメンバーたちが結局、超多額のギャランティーをもらっていたことが去年の週刊文春さんですっぱ抜かれました。同局は全く否定できなかったので、恐らく金額まで含めて正解だったのでしょう。去年の司会を務めたグループは司会料として5000万円ものギャランティーを受け取っていたようです。これはですね、火曜日の僕の番組でもはっきり言いましたけど、

世界的にはとてつもなく「恥ずかしい行為」です。

ゲスト出演されていた、アメリカで大成功を成し遂げた吉田ソース会長の吉田さんもバッサリ言って下さってましたが、アメリカでもし同じことが行われた場合、

もう、二度とその司会者はテレビに復帰することさえも許されないほどの悲しくヒンシュクな行為

だと思って下さい。それほど、世界的な価値観で言うとありえない行為です。チャリティー番組というものは視聴者の方々に対して
「募金してください」
「みんなでお金を出しましょう!」
と呼びかける番組を指します。世界的に、「チャリティー番組」で、「司会者がギャラをもらう」なんて恐ろしい行為は絶対にありえません。

普通に考えたら分かるでしょ?どんだけ偽善なんだよって言われておしまいです。お前、仕事で台本読んでるだけじゃないかって。一般的な先進諸国で、そんなアホな行為がまかり通ってるのって、本気で日本の「24時間テレビ」だけです。特にドネーション文化が進んでいるアメリカでは名前も名乗らずに寄付することがかなり普通です。小学校でも寄付だけで様々な行事が行われたりします。子供の頃からの教育として、「持つもの」は「持たざるもの」へ「与える」というキリスト教の文化が根付いているものですから、もしチャリティー番組でギャラなんてものをもらったらえらいバッシングとなります。

アメリカで何年も続ている有名なチャリティーショーがあります。
司会は誰もが知ってるようなセレブが勤めています。当然、ギャラなんてものは誰ももらいません。
スポンサーも同じです。お金は完全に寄付します。その番組を作るために、みんなボランティアでやります。
それ、普通です。日本以外の国で住んだことのあるすべての人間が同じことを言うでしょう。

逆に「障害を持っている人を見世物にしている!」という批判に関しては、両面を持ち合わせていると僕は考えています。
確かに24時間テレビは障害を持っている方に苦労させることによって「お涙ちょうだい」を作り出そうとしています。なので、それにあざとさを感じる人にとってはとても「不快」に感じられるでしょう。僕が脊山ちゃんに感じたのと同じ感情だと思います。
でも、彼女の行動は結局、「拡散」につながっています。日テレさんの演出も、結局、多くの方がテレビを視聴し、募金をするきっかけにはなっています。
司会を務めているジャニーズのタレントさんも同じですね。
彼らあってこそ、テレビを見た視聴者もいるにはいたと思います。ジャニーズのアイドルくんたちの求心力はすごいです。彼らのお陰で募金は増えています。いくら増えてるか分からないけれど。
「結果」として、障害を持つ方々の救いに少しでもなるのであれば、その行為自体は全部を否定されるべきではないと思います。多少気分が悪くなっても。

偽善かどうか、って言われちゃうと「典型的な偽善です」としか言えないんだけれど、日本って国はそもそも「偽善」の一つでもしなければ「善」の行為自体が全然根づいていない国なんです。なので、日テレさんの「24時間テレビ」に関しては

「ゴリゴリの偽善番組だけれど、(日本にとっては必要な)素晴らしい番組」

だと思っているのが僕の見解です。

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