自転車とよく似た幼児向けのペダルなし二輪遊具が大人気だ。ブレーキもないため、使い方によっては危険だと国民生活センターなどが注意喚起しているが、熱が冷める気配はない。

■幼児のレース、保護者が夢中

 真夏の日曜日、大阪城公園。最高気温32・5度の暑さの中、2~6歳の幼児約480人とその保護者が集まった。「世界最年少」の二輪レースとうたった「ストライダーカップ」だ。

 「ストライダー」はペダルなし二輪遊具の一番人気のブランドで、レースは販売会社「豆魚雷」(東京)が2010年に始めた。最初は1回で約30人だった参加者が、昨年は4回で延べ2千人に増えた。親子が集まって練習するためのコミュニティーが、この2年ほどの間に各地に生まれた。今ではほぼ毎週末、全国どこかで大会が開かれている状況だという。

 子どもたちはヘルメットをかぶり、サドルにまたがり自分の足で走って、止まる。コースにはモトクロスのような障害も設置されている。カーブで曲がりきれず転倒する子どももいる。

 子ども以上に熱中しているのが親たちだ。懸命に声援を送り、ゴールした我が子をハイタッチで迎える。

 大阪府東大阪市の消防士甲田雅哉さん(42)は「親子のコミュニケーションが格段に増えた」と語る。長男の輝也君(3)は2歳の時の初レースで惨敗。まだ幼いので何も感じないかと思ったら、大泣きした。「悔しさを表現してくれたことがうれしかった。体育会系なんで」。それ以来、親子で練習に取り組み、各地の大会に参加している。

 もともとは自転車にスムーズに乗れるように、バランス感覚を養うために開発された練習器具。ところが多くの親子がそれ自体の魅力にはまった。「何もできないと思っていた我が子がコースを走りきったときの感動は何にも代え難い」と甲田さん。2、3歳児が競いあう場は他にはあまりないことも、ボルテージが上がる理由になっている。

■ブレーキもなく、坂道で重傷も

 一方で、事故も起きている。国民生活センターは7月、ブレーキがなく危険だとして注意を呼びかけた。普及し出した2年前には消費者庁も同様の注意喚起をしている。

 センターが把握している事故は09年度以降21件。その6割は坂道での事故だ。13年11月には千葉県の4歳男児が団地内のスロープを下って、坂の下の縁石にぶつかって放り出され、植え込みの枝が顔に突き刺さって重傷を負った。