(2014年9月1日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
「中華民族の偉大なる復興」を掲げる習近平国家主席〔AFPBB News〕
今年8月、米ミズーリ州ファーガソンで白人警官が武器を持たない10代の黒人青年を射殺した事件は暴動と内省を引き起こし、米国はその多民族社会が持つ忌まわしい側面と向き合うことになった。
また、米国の騒動は、ロシア、イラン、中国、北朝鮮など、ひどい人権侵害の過去について批判されることに慣れている国々の権威主義的な政権にプロパガンダの贈り物を与えた。
米国中部の郊外の町で完全武装した警官がデモ隊と対峙すると、これらすべての国の国営メディアは、他人の不幸を喜ぶ気持ちを隠すことができなかった。
市民の扱いが国連が人間性に対する犯罪と呼ぶものに当たる北朝鮮は、米国を「人権の墓場」と断じた。
負けじとばかり、中国の国営メディアは、米国の人種差別主義を「米国社会を分裂させ続けている根深い慢性病」と表現し、米国に対し、「常に他国を批判するのではなく、自国の問題に集中すべきだ」と忠告した。
黒人は「猿」、白人は「洋鬼子」、日本人は「小日本鬼子」
しかし、中国は露骨な人種差別と無縁ではない。北京では、別の面では見識があり、教養を持った国際人である中国の企業幹部や官僚が、アフリカ人やアフリカ系米国人のことを「猿」と呼ぶのを聞くのは当たり前のことだ。もう少し優しい表現でさえ、英語に訳すと「blacky(黒人)」となる。
中国と接触した歴史を持つ事実上すべての民族に蔑称があるが、白人は一般に十把一絡げにされ、「洋鬼子」と呼ばれる。
大方の中国人は白人を――本人に面と向かって――「老外(ラオワイ)」と呼ぶ。文字通り訳すと「古い外人」となる言葉だ。民族的に中国系の人たちは、米国に移住し、あらゆる意味において「米国人」になることができるが、外国人は、どれほど長く中国に住んだとしても、同化するためにどれほど努力したとしても、いつまでも老外だ。
人種差別的な特別な蔑称が、日本から来る隣人のために取ってある。日本人は「小日本鬼子」と呼ばれている。大多数の中国人は、日本に行ったこともなければ、一人たりとも日本人に会ったこともないが、第2次世界大戦の前と戦時中の日本軍の中国占領を理由に、すべての人が日本人という人種全体に対する深い憎しみを表す。