日本最大の発行部数(朝刊・夕刊合わせ1200万部)を誇る読売新聞が28日「慰安婦=朝日新聞のでっち上げ」を真っ向から取り上げ、「河野談話」の撤回を求めた。河野談話は1993年、旧日本軍による慰安婦動員の強制性を認め謝罪した談話だ。読売新聞はこの日、1面と4面に『検証 朝日「慰安婦」報道』と題する特集記事を掲載し「朝日新聞の誤報のために『日本軍が慰安婦を組織的に強制連行した』というねじ曲げられた事実が世界に拡散した」とし「(朝日新聞によって)日本の名誉と尊厳が大きく傷つけられた」と主張した。
朝日新聞は最近、第2次大戦中に済州島で慰安婦を強制連行したと主張していた吉田清治氏(故人)の証言を取り上げた1982年の記事について「裏付けられる証拠が見つからないため、関連記事を取り消す」と発表した。同紙は吉田氏の証言に関する記事を取り消したが「慰安婦の強制動員を示す政府の記録や裁判記録、証言は数多くある」と主張した。
読売新聞が「慰安婦=朝日新聞のでっち上げ」を取り上げたのは、ライバルのあら探しとともに、河野談話の破棄を世間に訴えようという意図があると考えられる。読売新聞は27日付の社説でも河野談話の破棄を主張した。読売新聞は発行部数で朝日新聞(1000万部)を上回っているが、朝日新聞はバランスが取れた深みのある報道が特徴で、影響力という面で読売新聞を圧倒している。
28日に発行された週刊誌各誌も「朝日たたき」に加勢した。週刊文春は「朝日新聞『売国のDNA』」、週刊新潮は「1億国民が報道被害者になった『従軍慰安婦』大誤報!」という特集記事を掲載した。朝日新聞は「論評の範囲を逸脱した」として、両紙の広告の新聞への掲載を拒否した。極右的な論調の一部メディアだけでなく、大衆向けの週刊誌までもが「朝日たたき」や「河野談話破棄」キャンペーンを繰り広げているのは、安倍晋三首相や与党・自民党が「慰安婦=朝日新聞のでっち上げ」を公の場で主張したのを受けたものだ。自民党は26日、朝日新聞によるでっち上げ説を取り上げ、政府に対し河野談話の破棄を求めた。安倍首相も最近、産経新聞とのインタビューで「慰安婦問題が拡散したのは朝日新聞の責任」という趣旨の発言をしている。
これに対し朝日新聞は28日「吉田氏の証言は河野談話の作成過程に影響を与えていない。慰安婦問題は女性の人権侵害だという本質に変わりはない」と反論する記事を掲載した。朝日新聞は「河野談話の作成に関わった当時の日本政府関係者は、吉田氏の証言につじつまの合わない部分があったため、談話の作成過程で参考にはしなかったと明かした」と報じた。河野談話は政府の文書や元慰安婦、旧日本軍関係者の証言を基に作成された、と同紙は主張した。