これまでの放送
~“JKビジネス”の闇~
夏休みの東京都心。
制服姿で客引きをしている少女たち。
女子高校生と1時間8,000円ほどでデートをする、JKお散歩です。
売春の温床にもなるJKビジネスが今、全国に広がっています。
女子高校生
「ハグ、1分1,000円です。
添い寝、5分で1,500円。」
客は追加料金を支払い、さまざまなサービスを受けています。
多くの客が、性的なサービスまで要求してくるといいます。
17歳の少女
「それこそ『ホテル行こう』とか、平気で言って来ますね。」
取材に応じた少女の多くが昼間は学校に通う、一見、普通の女子高校生。
しかし、学校や家庭に居場所がないと感じていました。
17歳の少女
「お母さんとけんかが毎日絶えなくて、ずっと死にたいと思っていて。」
多くの少女を街角に立たせ、客を取らせている業者たち。
満たされない少女の気持ちにつけ込んでいるといいます。
JKビジネスに関わった男性
「ご褒美あげたり、サプライズでプレゼント差し上げるとか。
女の子たちは喜ぶのでコントロールしやすい。」
JKビジネスといわれるまでに広がった現状を、アメリカ政府は人権問題だと指摘。
児童買春につながっていると警告しています。
少女たちが次々と取り込まれていくJKビジネス。
その実態に迫ります。
「JKです、よろしければ…。」
東京・秋葉原。
少女たちがずらりと並び、客引きをしています。
高校3年生のあやこさんです。
2年前、JKビジネスに足を踏み入れました。
あやこさん(仮名18歳)
「1日最高4万円以上は稼げるみたいに言われて、ちょっとお金に困っていたので。」
昼間は毎日学校に通っているあやこさん。
学校が終わると、店が用意した制服に着替え、声をかけてくれる客を待ちます。
料金は1時間8,000円。
売り上げは店と折半するシステムです。
あやこさん(仮名18歳)
「オプション。
ハグ、1分1,000円です。
沿い寝、5分で1,500円。
ビンタ、2回500円。
おもいっきりじゃないと怒るんですよ。」
多くの客はさらに金を払い、性的サービスまで要求してきます。
あやこさんは売春を断っていますが、危険な目に遭うことも多いといいます。
あやこさん(仮名18歳)
「添い寝とかしてると、男の人も興奮する人が中にはいて、『いくらでも払うから』って、服脱がされて…。」
それでもあやこさんが続けるのは、経済的に苦しい家族を支えるためだといいます。
母親のパート代だけで生計を立ててきた、あやこさんの家族。
親に仕事の中身を言わずに、家計を助けています。
あやこさん(仮名18歳)
「(JKビジネスは)ものすごく嫌です。
でもお金が回らないし、私1人だけじゃないんです、兄弟が。
月によるけど、(親に)5万円ぐらい渡しています。」
最初は客と散歩するだけのつもりが、エスカレートしてしまった少女。
かつて売春をしていたという、高校3年生のみほさんです。
中学時代、教師とのトラブルをきっかけに学校を休みがちになり、両親ともうまくいかなくなりました。
みほさん(仮名17歳)
「学校にも居場所がないという思いは中学の時からあって、お母さんとけんかが毎日絶えなくて、ずっと毎日死にたいと思っていて。
自分がここに居る意味ってなんだろう。」
みほさん(仮名17歳)
「これがお客さんと撮ったプリクラ。」
孤独感を埋めようと、客に求められるまま売春までしてしまったみほさん。
今は、後悔しているといいます。
みほさん(仮名17歳)
「その場で優しくされても、必要とされているのが体だけだと思うと、また孤独感が増す。
自分がどんどん汚くなっていくと思っていて、すごい虚無感。」
さまざまな事情を抱える少女たちを取り込んでいく、JKビジネス。
かつて、経営に関わっていたという人物です。
少女たちの悩みにつけ込むのは、簡単だったといいます。
JKビジネスに関わった男性
「家庭環境や学校で理解してくれる人がいない、そういう経緯を持った女の子たちは扱いやすい。
『俺だったら理解できるよ、君のことは』。」
業者は、警察の取締りを巧みに逃れています。
散歩、占い、お茶やカラオケ。
業者は、こうした性風俗とは関係ない名目で営業し、性的なサービスには関与していないという立場なのです。
今後もビジネスは拡大していくといいます。
JKビジネスに関わった男性
「女子高生という言葉だけでも価値はありますから、需要と供給がありますので、今後もっと価値が大きくなると思う。」
業者の摘発が難しい中、警察は新たな対策に乗り出しています。
警察
「ホテル代別で1万円。
援助交際の書き込みです。」
今、ネット上には少女が直接、客に売春などを持ちかける書き込みがあふれています。
警察は客のふりをして少女と落ち合う約束を取り付け、補導します。
サイバー補導です。
この日は、17歳の高校生と接触しました。
警察
「歳いくつ?」
少女
「今、私17歳。」
警察
「何年生?」
少女
「高校2年生。」
警察
「悪いけど、おまわりさん。」
少女
「そうなんですか。」
警察
「こんなことやって、お金稼いでいいと思うか。」
少女
「はい、すみません。」
公立高校に通う2年生。
洋服代が欲しいという動機でした。
この半年で補導したのは全国で220人。
その大半は補導歴のない少女たちで、警察はスマートフォンの急速な普及で、すそ野が広がっていると見ています。
警察官
「私たちがやっている補導は、本当に一部分でしかまだないと思う。
今の時代背景で、ネットがこれだけ普及してる中で、どれぐらいの書き込み件数があるか分からないので、本当に氷山の一角だと思います。」
●性を売り物にする少女たちのすそ野が急速に広がっている現状、どう捉える?
宮本さん:少女たちの商品化の現状というのは、性売買の氷山の一角なんですね。
その男性の側の性的な欲求に応える巨大なシステムが、今の日本に仕上がっちゃって、出来ちゃっているっていう問題があって、一番はその巨大な性売買のシステムにブレーキをかける、そういう仕組みがほとんどないと言っていい、そういう状況にあるという、非常に恐ろしい社会が展開しているということになります。
●ブレーキとなる警察の取締り どこまで取り締まれている?
長井記者:JKビジネスは次々と業態を変えてきていて、取締りとのいたちごっこが続いているのが現状です。
最初は少女が店舗の中でサービスを行う、つまり店の内側で行われていたので、店の中で性的なサービスが行われているのを業者側が知らないはずはないと、知らないということは通用しないとして業者を摘発できたんですが、今度は女子高生と散歩などという形を取って、店の外側でサービスを行う形としたので、業者側としては店の外で売春の交渉が行われていても、そこには関知しないという立場を取っているため、業者の摘発が難しくなっているのが現状です。
このため、警察は供給源ともなる少女の補導に力を入れているんですが、業者側を取り締まるということが難しい、そういった現状は変わっていませんで、結果としてJKビジネスはなくなっていないということにつながっています。
●女子高生に性的な行為を求める男 罪悪感はないのか?
長井記者:補導された女子高校生の携帯電話のメールの履歴などから、児童買春をした男が警察に検挙されるというケースも多くあるんです。
こうした男性側を取材してみますと、総じて罪悪感が薄いというように感じました。
最初は散歩などという気軽な形で女子高校生と接点を持って、その後、互いの交渉によって売春などが成立していると、そういったように考えていまして、罪悪感が薄いということにつながっているんです。
しかし社会経験が乏しい、そういった女子高校生に対して、金銭を提示して性的なサービスを求める行為というのは、決して許されるものではありません。
●JKビジネス 実際にどんな危険な状況に置かれることになるのか?
宮本さん:この番組のタイトルは、広がる少女売春というふうなタイトルになっていますけれども、事の本質は少女売春ではなくて、少女買春が事の本質のはずなんですね。
買春というふうに考えていくと、少女たちは最初はお散歩っていう、すごく優しい言葉を使って、日常的なそういう行為をすればいいんだというふうに思う。
手をつないでいくら、腕を組んでいくら、添い寝していくらっていうふうに、限りなく細分化して、行き着く先は性行為にまで行き着くわけですね。
そのことについて、私は嫌よというふうにきちっと拒否できる女の子は、それはそれでいいんだけども、密室で行われている話で、拒否できない女の子たちだっているわけです。
女の子とお客さんとの間には絶対的な力の非対称性があって、お客さんは物理的にも経済的にも力があるわけですね。
女の子たちは非力です。
その中で性暴力が振るわれた場合に、彼女たちは、それは被害なんだというふうに認識できないし、認識したとしても訴えることもできない、そういう状態ですね。
そういうその性被害を受けた人たちが、今はJK産業というふうな形でいわれてますが、援助交際だとか、その前の時代には売春だとかっていうふうな形で、若い女の子たちが性的なそういう商品の搾取の対象にされている。
そういうところを経過して、20代、30代、40代、50代、60代になってもまだ、そのときの傷を引きずっている人たちは、結構いるという状況です。
JKビジネスの実態を知ってもらおうという講演会。
女子高校生を支援している団体の代表、仁藤夢乃さんです。
3年前に団体を立ち上げ、講演会や寄付で得た収益をもとに活動を続けています。
仁藤さんはこの日、JKビジネスで働く高校3年生のまどかさんと会いました。
まどかさんに自分のしていることの深刻さを自覚してほしいと、繰り返し伝えています。
女子高生サポートセンター 代表 仁藤夢乃さん
「普通に『JKお散歩』でホテルに行ったみたいなことを言ってたよね。」
まどかさん(仮名17歳)
「だめなことって思ったけど、それも含めて仕事かな。」
女子高生サポートセンター 代表 仁藤夢乃さん
「それやってること売春だよ。」
半年かけて対話を重ね、まどかさんは、ようやく売春をやめました。
女子高生サポートセンター 代表 仁藤夢乃さん
「いろんなタイミングがあると思う。
『本当にこれでいいのかな』と思う瞬間。
『こんな自分』とか思ったり。
その時に、その一瞬に、(私の)顔を思い浮かべてもらいたいよね。
よろしくお願いします。」
まどかさん(仮名17歳)
「こうやってちゃんと話を聞いてくれる人、あんまりいないから。」
女子高生サポートセンター 代表 仁藤夢乃さん
「もうやらないね?」
まどかさん(仮名17歳)
「はい。」
女子高生サポートセンター 代表 仁藤夢乃さん
「気をつけて。」
仁藤さんは少女たちに、かつての自分の姿を重ね合わせています。
仁藤さん自身、家庭や学校に居場所がないと感じ、高校を2年で中退。
繁華街をさまよう日々を送っていました。
女子高生サポートセンター 代表 仁藤夢乃さん
「20歳まで生きたくないって思ってたし、10代で自殺した友だちも3人いるんですけど、みんなどうしていいのか分からなくて、もう先は見えなかった。」
自分自身の経験から、少女たちには信頼できる大人の存在が必要だと考えています。
女子高生サポートセンター 代表 仁藤夢乃さん
「女の子いっぱいいるよね。
彼女たちを守りたいとか、支えたいと思っている大人側が、支援につなげていくことが必要なんだと思います。」
さきさん(仮名16歳)
「夢乃さん、こんにちは。
こんにちは、お邪魔します。」
仁藤さんは少女が前向きに生活するためには、将来の目標を持つことが大切だと考えています。
この日JKビジネスで働いていた、高校1年生のさきさんを自宅に招きました。
女子高生サポートセンター 代表 仁藤夢乃さん
「お誕生日おめでとう。」
家族とうまくいかず、ここ数年、誕生日を祝ってもらっていませんでした。
女子高生サポートセンター 代表 仁藤夢乃さん
「将来は?」
さきさん(仮名16歳)
「将来は保育士になりたい。」
仁藤さんはこの日、子どもに関わる仕事をしている仲間を集めていました。
さきさんの夢を後押しするためです。
子ども支援のNPOスタッフ
「もしよかったらおいでよ。
ちびっこがキャーキャー言ってるけど。
泥とか水とか、いつ何が飛んでくるか分からないから。」
さきさん(仮名16歳)
「すっぴんで行った方がいい?」
子ども支援のNPOスタッフ
「その方がいいね。」
仁藤さんは今後、保育士の資格を取るための大学や専門学校を紹介するなど、将来を見据えた支援を考えています。
女子高生サポートセンター 代表 仁藤夢乃さん
「子どもと関わってたら、『超やりたい』みたいになったら、勉強スイッチ入るかもしれないじゃん。」
さきさん(仮名16歳)
「かもね、かもしれないね。
行動してみたいと思った、早く。
きっかけを作ってくれて、ありがとう。」
女子高生サポートセンター 代表 仁藤夢乃さん
「今、関わってる子たちを見ても、まだ15歳とか17歳とかそのくらいなので、全然まだまだ、いくらでも人生の可能性があるし。
だからその可能性を信じて、大人がいかに関われるかだと思う。」
●仁藤さんの取り組み、どう見る?
宮本さん:仁藤さんの取り組みは、ソーシャルワーク的に言うと、彼女の活動の方法ってアウトリーチの方法論取ってるんですね。
アウトリーチの一番大事なことは、彼女たちのテリトリーの中にみずから入っていって、彼女たちの話を聞き、そして彼女たちに話をさせて、彼女たちに自分はどういうことをしていきたいのかということを、彼女たちの言葉で、彼女たちに見つけてもらう、そういう活動だと思うんですね。
それが一番大事で、もう一つ大事なのは…。
(みずから自覚させるということ?)
そうです。
それには、そういう丁寧な丁寧なつきあいが必要で、それともう一つ大事なのは、彼女たちにとってのロールモデルとしての大人に巡りあう、そのチャンスになるんじゃないかなというふうに思います。
だからとても大切な活動をされていると思います。
(信頼できる大人と出会えると?)
そうです。
(もっと支援は必要か?)
必要ですね。
仁藤さんの活動なんかが、公的なバックアップだとかサポートが受けられるといいなと思います。
●問題は少女売春ではなく買春 何が一番問われている?
宮本さん:日本の社会全体として、買春することについて、非常に寛容な社会なんですね。
今まで買う側の男の人の姿が見えてこなかった。
男の人の姿を見させるべきだし、それから声を上げてきたのは女性たちですけれども、男性のセクシャリティーもおとしめられてるんですね。
ので、男性も積極的に自分のセクシャリティーはもっと大切なものがあるんだよということを、男の人たちみずからに言ってもらいたいというふうに思います。