すしネタで人気の太平洋クロマグロの漁獲制限を26の国・地域で話し合う中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)は4日、福岡市で小委員会を開き、幼魚(重さ30キロ未満)の漁獲枠を2015年から、過去の実績の半分とすることで合意した。減少しているクロマグロの生息数を増やす狙いだ。12月の総会で正式に決める。

 合意では、15年から日本周辺を含む西太平洋での幼魚の漁獲量を基準期間である02~04年の平均の半分に制限する。30キロ以上の親魚も、基準期間の実績を上限とする。制限により、この10年間で地域の親魚を今の倍近い約4万3千トンに増やすことを目指す。

 02~04年を基準とするのは、各国の漁業統計が統一的にそろっているからだという。日本の幼魚の漁獲枠は年間4007トンとなり、沖合漁業と沿岸漁業にほぼ半分ずつ割り振る。枠を超えた分は翌年の漁獲枠から差し引く仕組みだ。

 漁獲半減は、太平洋クロマグロの約8割を消費する日本が委員会に提案した。幼魚の取りすぎで親魚が過去最低の水準に減っており、日本に対応を求める声が出ていたからだ。委員会は昨年、幼魚の漁獲量を基準年から15%減らすと決めたが、その後の計算で、親魚を順調に増やすには一層の規制が必要と判断した。

 日本への輸出を増やしている韓国からは当初、経済的な打撃を受けるとして異論があった。だが、枯渇を懸念する国際世論などを踏まえ、最終的に合意した。会合で議長を務めた水産庁の宮原正典顧問は会見で、「資源回復には50%削減以外に道がないことが科学的に理解された。各国がどう管理していくか詰めていく」と強調した。

 気になるのは小売価格への影響だ。水産庁は、過去に不漁で漁獲量が減った年を例に「漁獲が半減しても小売価格に大きな影響はない」とみている。(澄川卓也)

     ◇

 〈太平洋クロマグロ〉 南西諸島などで産卵し、アメリカ沖を周遊して成長する。クロマグロは本マグロとも呼ばれる。マグロ類で最も高級で刺し身などで人気が高い。大きな親魚は400キロを超える。幼魚は「メジ」や「ヨコワ」と呼ばれ、スーパーのパック詰めなどで人気だ。メキシコや韓国が漁獲量を増やし、多くを日本に輸出してきた。