【フランクフルト=赤川省吾】欧州中央銀行(ECB)は4日の定例理事会で、政策金利の引き下げを決めた。下げ幅は0.1%で、指標となる金利は過去最低の0.05%となる。経済の成長が鈍り、物価も低迷するデフレの懸念が強まったことに対応する。ドラギ総裁は銀行の融資債権を証券化した「資産担保証券(ABS)」の買い入れを10月から実施することも明らかにした。
ドラギ氏は理事会後の記者会見で「国債などの資産を買い入れる量的金融緩和も議論した」ことを認めた。欧州中銀はABSなどの金融商品の買い入れと、より大量に市場に出回る国債の購入を区別し、後者を量的緩和としている。日米の中央銀行はすでに国債の大量購入を柱とする量的緩和にまで踏み込んだ。ECBにも量的緩和を迫る流れが強まってきた。
ドラギ氏はウクライナ危機などの地政学的な緊張を背景に「ユーロ圏の景気の下振れリスクが大きい」とし、厳しい景気判断を示した。
4日の理事会では、域内の銀行がECBに余剰資金を預け入れた場合に手数料を課す「マイナス金利」について0.2%と、従来より0.1%広げることも決めた。
マイナス金利には銀行がECBに資金を滞留させず、貸し出しに回すよう誘導する狙いがある。ECBはマネーが域内に十分に行き渡っていないことが経済が勢いを欠く要因と分析している。ドラギ氏は「一連の対策で銀行の融資を促したい」と発言した。
ユーロ圏18カ国の8月の消費者物価指数は前年同月に比べ0.3%の上昇にとどまった。南欧では銀行がリスクの高い中小企業への融資をためらい、企業の投資意欲が鈍い。物価の低迷と景気の冷え込みが同時に進行する不況デフレへの警戒感が高まっている。
ECBの追加利下げは市場関係者の意表を突き、4日の外国為替市場ではユーロ安が加速した。