あざ:いつもありがとうございます。司会進行の「あざ」です。今回は座談会形式で第50回メフィスト賞受賞作
早坂吝「○○○○○○○○殺人事件」
について語りたいと思います。
メフィスト賞を知らない方もいらっしゃるかと思うんですが、講談社の文芸誌メフィストが行っているミステリの新人賞でして過去の受賞者には第一回の森博嗣や第十九回舞城王太郎、そして第二十一回の佐藤友哉、第二十三回に西尾維新など後の文芸界にさまざまな影響を与えている賞でもあります。
今回「○○○○○○○○殺人事件」を語るにあたりましてメフィスト賞で選考で使われる座談会形式にしました。
それでは座談会メンバーに簡単な自己紹介をしていただきましょう。
なえ:どうも。「なえ」です。黄金期本格(チェスタトン、クイーンなど)を愛する本格ミステリ好きです。
るな:こんにちはー。「るな」です。新本格大好きです。お願いしまーす。
わの:関西人「わの」です。バカミス担当なんで今回は盛り上がってますw
「○○○○○○○○殺人事件」
あざ:ではそれぞれに今回の「○○○○○○○○殺人事件」についてネタバレなしで語っていただきたいんですが……なえさんどうですか?
なえ:いきなりあたしですか?!(笑)わのさん担当の作品ですよね。ロジカルな面は案外しっかりしているし「タイトル名当てミステリ」と言う趣向もキチンと最後に収束する。とある部分で途中で解るんですけど、
わの:あそこですよねw
なえ:そうです(苦笑)でも、とても久々にバカミスらしいバカミスだなぁ、と。でもバカミスと切り捨てるには、いろいろとトリッキーな仕掛けが満載ですね。あと文体が若い感じがしましたね。
るな:アレってわざとなんですかね?
なえ:うーん、どうでしょう。地の文は語り手が「南国モード」に入るところで変わるのと、神の視点とがあって。でも固さが無いのも作品には合っていますけど。
るな:ですねー。アタシは綾辻さんとか新本格が好きなので、あまりバカミス?と言うのは読んでいなかったんですけど、こーいうのなんだってw
あざ:では、バカミス担当のわのさん的にはどうですか?
わの:久々にキターーーー!と思いましたわ。とてもメフィスト賞っぽくてw
あざ:メフィスト賞っぽいと言うのは?
わの:メフィスト賞って森博嗣とかそーいうイメージがあるんですけど、なんちゅーのか、ナイトスクープのネタをトリックにした蘇部健一とか壁投本のJDCを書いた清涼院流水とか、一時期は「ミステリ番外地」「ミステリ地雷原」「ミステリの極北」とか危険球も多いと言われとったわけで、なんか「○○○○○○○○殺人事件」はそういうにおいがプンプンするし他の賞は獲らんやろうなぁ、って言うw
なえ:なのでアタシは微妙なんです。元々メフィスト賞苦手なので(苦笑)
あざ:んー、ではどういった方にお勧めですかね?
わの:メフィスト賞ってこういう「新本格です!」って言うモノだけやのおて、地雷ギリギリやったり、趣味嗜好が別れる珍味みたいなもんも多いし、今回はかなりの珍味やったとw
あざ:なるほどw まさにわのさんのストライクゾーンだったわけですね。 ではここからはネタバレありで書いていきたいと思います。
一切ネタバレしたくない方はまたどこかでお会いしましょう。
「○ンコの神話」
あざ:ではここからはネタバレ解禁で行きます。あまりモロにやるのはあまりにあまりなので少し伏せますが、他の作品のネタバレもあるので注意してくださいね。
わの:えーと、まずメフィスト賞っぽい言うのは、乾くるみの「Jの神話」を思わせるチ○コが重要なポイントになってるところかと。
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るな:そんなにはw それがトリックのひとつのポイントになってるので。
なえ:あたしも最近の作品はもっと過激な性描写があるものも多いので、特に気になりませんでしたけど。「Jの神話」は、当時壁に投げましたけど(笑)この作品も包茎がまさか……。
わの:あれぞバカミスってとこですねぇw よーく読んでみると地の文は嘘をついてない。フェ○も、やるのにジッパーぐらい下ろさんと。
なえ:もし、これをトリックに思いついてもメイントリックに据えないでしょ(笑)これではやってますけど。物理トリックなんかおざなりなのはいまどきのミステリっぽいと言うか。
わの:書店員さんの感想とか言うのんが今回売り文句になってて
早くも話題沸騰!
カリスマ書店員が驚愕! 喝采!!えっ!? えっっ!? えーっ!!?? 何だこのミステリー!! ジュンク堂書店西宮店 水口真佐美さん
あまりの騙されっぷりに晴れ渡る南国の空のように爽快だ! 文教堂書店西葛西店 水野知博さん
全てが伏線でした。もう一度読みたくなる「読み直しミステリー」の誕生です! MARUZEN名古屋栄店 竹腰香里さん
ちゃんと「本格」なのにちゃんと「メフィスト」な快作。どうやって売り込めばいいんだ!! 紀伊國屋書店渋谷店 竹村真志さん
本格ミステリーでありながら、ところどころに笑いがあり、そしてまさかまさかの結末。
騙されたと思って読んだ甲斐がありました! SHIBUYA TSUTAYA 内山はるかさん閉塞感を覚える今のような時代に必要とされる本なのだ! さわや書店フェザン店 松本大介さん
「南国の空のように爽快だ!」「閉塞感を覚える今のような時代に必要とされる本なのだ!」っていうのはよく考えてみたらミステリやのになんかいろいろと匂わせてるなぁ、とw
”ちゃんと「メフィスト」な”とかきちんと表現してるし。
るな:ホントだー、これ気づきませんでした。これもトリックとか?
なえ:そういえば表紙も。これは、らいちでしょうけど、半分下ろしてますものね(苦笑)
わの:つまりそういうトリックや言うのんを匂わせてたいうことですよね。よーできてますわ。
なえ:細かい伏線が多いんですよね。わざわざ服にこぼしたり、「服に頓着が無い」だとか、いろいろ。
まとめ
あざ:それでは各人、まとめていただきましょうか。では、なえさんから。
なえ:えー、そうですね。ロジカルなミステリとしてのキモは押さえつつもバカミス(?)だったのであたしはちょっと肩透かしでした(笑)トリックの扱い方とか、とてもいまどきのミステリですけど、語り口がちょっとラノベっぽいと言うか軽くて。私は、重くて暗い作品が好きなので。星をつけるなら★★ですかね。
るな:アタシはこう言う作品あまり読んだこと無かったので、「こーいうのってありなんだ」って驚きました。★★★
わの:メフィスト賞というのは 高田大介「図書館の魔女」であったり、広いエンタメ作品も多いし、こういうバカミスをキチンと扱えるし評価できる貴重な賞なんで、この「○○○○○○○○殺人事件」をメフィスト賞が受賞したっちゅーのも、納得しました。もしメフィスト賞を正統派な本格ミステリの賞と思ってる人がいるなら読んでほしいですね。久々にバカミスの快作が登場、と言いたいんで星四つ~★★★★
あざ:アレ?五つかと思ったら一個少ないですね?
わの:ネタはおバカなんやけど笑えるところが少なかったんで。これで笑えるんやったら五つですわw
あざ:なるほどー。と言うことで今回は早坂吝「○○○○○○○○殺人事件」について語ってみましたー。ではまた、いずれ。