連載
» 2014年09月04日 17時18分 UPDATE

Windows Insider用語解説:IE8との互換性を向上させるIE11のエンタープライズモード

Internet Explorer 11のエンタープライズモードを有効にすると、まだ企業内などで多く使われているIE8向けのWebサイトでも正しく表示できるようになる。

[打越浩幸,デジタルアドバンテージ]
Windows Insider用語解説
Windows Server Insider

 

「Windows Insider用語解説」のインデックス

連載目次

 Internet Explorer 11(以下IE11)には、新しく「エンタープライズモード(Enterprise Mode)」という動作モードが追加されている。これは従来のInternet Explorer(IE8)との互換性を向上させる動作モードであり、主に企業内において、IE11本来のモードでは正しく動作しないような場合に利用するために用意されている。

エンタープライズモードとは

 IE11のエンタープライズモードは、過去のIEのバージョンとの互換性を向上させるために用意されたモードである。IE8の環境をエミュレーションすることにより、特に企業内にまだ多く残っている古いIE向けのWebサイトを、IE11でも問題なくブラウズできるようにする機能だ。

 IEにはいくつかバージョンがあるが、ベースとなるWindows OSとの組み合わせにより、利用できるIEのバージョンは異なっている。以下にその組み合わせを示す。

IEとWindows OSのバージョンの関係 IEとWindows OSのバージョンの関係
Windows OSごとに利用できるIEのバージョンが異なるが、Windows XPがサポート対象外になった今となっては、IE7やIE8の挙動を再現できればよいだろう。IE7との互換性は「互換表示」モードで制御できる。IE11のエンタープライズモードではIE8互換にするかどうかを設定できる。なおIE11を利用するにはWindows 7かWindows 8.1、Windows Server 2008 R2、Windows Server 2012 R2が必要である。Windows 8かWindows Server 2012の場合はIE10しか利用できない。

 今年サポートが終了したWindows XPではIE8まで利用できたため、特に企業内で利用されるようなシステムはIE8を前提にしていることが多かった。Windows XPのサポートはすでに終了したため、今後はIE8を前提とするシステムは減少するだろうが、需要はまだまだ残っている。そのような要求に応えるのがIE11のエンタープライズモードである。

 IE8以降には「互換表示」という機能があり、必要ならIE7との互換性を実現できるようになっていた。IE11ではこの互換表示機能とは別に、新たにIE8との互換性を実現するための機能としてエンタープライズモードが追加実装されている(互換表示機能も利用できる)。

 エンタープライズモードを有効にすると、IE11の挙動が次のように変わる。

  • ユーザーエージェント文字列がIE8互換になる
  • ActiveXコントロールなどの挙動がIE8互換になる
  • IE8にはあったものの、IE9以降で廃止された機能が利用可能になる
  • IE11のプリフェッチ/プリキャッシュが無効になる

 IE8の機能や互換表示モードなどについては、以下の記事も参照していただきたい。

エンタープライズモードでWebサイトを表示する

 エンタープライズモードを利用するか、それともIE11本来のモードで表示するかどうかは、Webサイトやその中のパスごとに設定できる。IE11でWebサイトを開いた場合、エンタープライズモードが有効になっているとアドレスバーのすぐ左側にエンタープライズモードを表すアイコンが表示される。

■エンタープライズモードが無効な場合の表示

エンタープライズモードが無効な場合の表示

■エンタープライズモードが有効な場合の表示

エンタープライズモードが有効な場合の表示 エンタープライズモードのアイコン
上側の画面はIE11では表示できない古い設計のイントラネットサイトの例。IE11の本来のモードでは表示が乱れている(ページのソースコードの一部だけが表示されている)。下の画面はエンタープライズモードが有効になっている場合の表示。意図した通りに表示されている。
  (1)エンタープライズモードのアイコン(会社などの)ビルを表すアイコンが表示されている。

 エンタープライズモードのアイコンをクリックすると、次のようにアイコンの意味が表示される。

エンタープライズモードのアイコンの説明 エンタープライズモードのアイコンの説明
アイコンをクリックすると、このような説明がポップアップ表示される。互換表示の場合は、「破れたページのようなアイコン」が表示されるだけで、いまひとつその意味が分かりづらかった。そのためか、エンタープライズモードではこのようにアイコンの説明が表示されるようになっている。

●ユーザーエージェント文字列の違い

 WebブラウザーはWebサーバーに接続する際、「ユーザーエージェント文字列」というデータをサーバー側に渡し、これによってWebブラウザーの種類やバージョンを識別できるようなっている。IE11でエンタープライズモードを利用するとこのユーザーエージェント文字列も次のように変わる。

■IE11の通常モード時のユーザーエージェント文字列

IE11の通常モード時のユーザーエージェント文字列

■IE11のエンタープライズモード時のユーザーエージェント文字列

IE11のエンタープライズモード時のユーザーエージェント文字列 IE11のユーザーエージェント文字列
エンタープライズモードを利用すると、ユーザーエージェント文字列もIE8と互換になるように変更される。これはIE11の開発者ツール([F12]キーで起動できる)でユーザーエージェント文字列情報を見たところ。
  (1)通常モード時のユーザーエージェント文字列。
  (2)エンタープライズモード時のユーザーエージェント文字列。IE8のものとほぼ同じになる。

エンタープライズモードを管理する

 IE11のエンタープライズモードはデフォルトではオフになっており、これを利用する(有効にする)ためには事前の設定が必要である。互換表示はユーザーが自由にオン/オフできたが、エンタープライズモードは基本的には管理者が事前に組織全体で導入するかどうかを設定して使うことになる。

 エンタープライズモードを有効にするには、グループポリシーかレジストリによる設定を行う。

●エンタープライズモードをグループポリシーで有効にする

 エンタープライズモードを制御するグループポリシーには次の2つの項目がある。

  • エンタープライズモードを有効にするサイトをXMLファイルで指定する――管理者が事前に設定した定義に基づいて自動的にオン/オフを行う
  • エンタープライズモードのオン/オフをユーザーに許可する――ユーザー自身がIE11の[ツール]メニューでオン/オフを行う

 これらのいずれか、もしくは両方を設定する。

IE11のエンタープライズモードを利用するためのグループポリシー設定 IE11のエンタープライズモードを利用するためのグループポリシー設定
IE11のエンタープライズモードを利用するためには、2つのグループポリシーオブジェクト(のいずれか)を設定する。
  (1)[コンピューターの構成]か[ユーザーの構成]の下にある[ポリシー]−[管理用テンプレート]−[Internet Explorer]を開く。
  (2)「[ツール]メニューからエンタープライズ モードを有効にして利用できるようにする」を有効にすると、ユーザー自身でエンタープライズモードを有効にするかどうかを選択できる(詳細は後述)。
  (3)「エンタープライズ モードIEのWebサイト一覧を使用する」をオンにすると、管理者が特定のサイトやURLだけをエンタープライズモードで利用できるように設定できる。
  (4)エンタープライズモードで利用するサイトの情報はXMLファイルにして、Webやファイル経由でアクセスできるようにする。これについては次の「エンタープライズモードのサイト情報の管理」参照。

●エンタープライズモードをレジストリで有効にする

 レジストリで設定する場合は、次のキーを設定する。

項目 内容
キー HKEY_CURRENT_USERかHKEY_LOCAL_MACHINEの、
\Software\Policies\Microsoft\Internet Explorer\Main\EnterpriseMode
値の名前 SiteList(サイト情報のXMLファイルを使う場合)
REG_SZ
XMLファイルのパスかURL
値の名前 Enable(ユーザーに制御させる場合)
REG_SZ
(オプション)POST通知先のURL
エンタープライズモードを制御するためのレジストリ設定
上のグループポリシーに相当するレジストリ設定。2つある。

●エンタープライズモードのサイト情報の管理

 エンタープライズモードを有効にするサイトを管理者が設定する場合は、どのサイトやURLでエンタープライズモードを有効/無効にするかを指定したXMLファイルを作成し、そのファイルの場所(URLもしくはファイルパス)を指定する。このリストを作成するには「Enterprise Mode Site List Manager」というツールが利用できる。

Enterprise Mode Site List Managerによるサイト情報の管理 Enterprise Mode Site List Managerによるサイト情報の管理
Enterprise Mode Site List Managerツールでエンタープライズモードを有効にするサイトやURLの情報が含まれたXMLファイルを作成できる。
  (1)対象となるサイトやパスを指定する。1つのサイト内でも、パスごとにエンタープライズモードの有効/無効を混在して設定できる。
  (2)エンタープライズモードにするか、それともデフォルトのモードにするかを指定する。

 このツールでXMLファイルを作成して、グループポリシーやレジストリで指定した場所に配置しておく。

ユーザーにエンタープライズモードのオン/オフを任せる

 グループポリシーの「[ツール]メニューからエンタープライズ モードを有効にして利用できるようにする」か、レジストリの「Enable」という値を設定しておくと、IE11の[ツール]メニューに[エンタープライズ]という選択肢が表示され、エンタープライズモードを利用するかどうかを、ユーザー自身が変更できるようになる。

ユーザーによるエンタープライズモードの変更 ユーザーによるエンタープライズモードの変更
グループポリシーなどを設定しておくと、エンタープライズモードを利用するかどうかを、ユーザー自身で選択できるようになる。
  (1)この項目が表示されている場合は、ユーザーがモードを選択できる。

 管理者はグループポリシーかレジストリで、POSTコマンドの通知先のURLを設定しておくこともできる(先の設定方法参照)。通知先が設定されていると、ユーザーがエンタープライズモードを有効にしたサイトの情報が収集される。管理者はこのデータに基づいて、エンタープライズモードを適用するサイトのリストデータを更新できる。

「Windows Insider用語解説」のインデックス

Windows Insider用語解説

Copyright© 1999-2014 Digital Advantage Corp. All Rights Reserved.

TechTargetジャパン

ホワイトペーパー(TechTargetジャパン)

注目のテーマ

Focus

- PR -

転職/派遣情報を探す

【転職サーチ】SIer/Web企業/新規事業 スマホ開発で、あなたのキャリアを生かす

「派遣・フリーで働くメリット」とは? 活躍する派遣エンジニアの本音

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。