Windows XP と Windows Vista を1つのパソコンで動かすといった仕組みをデュアルブート(OS が2つの場合)またはマルチブートと言います。 以下の記述ではマルチブートという言葉で説明していきます。 XP でしか動作しないソフトは XP を起動し、ゲームなどは Vista でやりたいというような要求を満たすには、マルチブートにしてしまえばいい訳です。
マルチブートにする方法はいろいろありますが・・・・・。
Windows XP や Vista にはマルチブートに対する機能が含まれているため、上の 1 または 2 の方法で、例えば Windows XP をインストールした後で Windows Vista をインストールすれば、電源を入れると最初の画面でどちらの OS を起動するかを聞いてくるようになります。 この方法では他の OS のインストールされているドライブが見えてしまうことになり、いろいろと問題を起こしがちです。 このため 3 の方法がよく使われ、この制御のためのソフトが世の中にはいろいろと出回っている訳です。 System Commander などというソフトが有名ですが、ここで紹介するのはフリーソフトの MBM (Master Boot Manager) というもので、知る人ぞ知る大分古くから公開されてきたソフトです。
先ず下の図でブートの仕組みを概念的に理解しておいてください。
Fig.1
ハードディスク上にインストールされたオペレーティングシステムを起動する場合、次のようなステップが実行されています。
単純化すると以下のようになります。
BIOS -> MBR -> ブートセクター -> IO.SYS または NTLDR または BOOTMGR
Windows XP がインストールされているパソコンに Windows Vista をインストールし、マルチブートにして使う場合を考えましょう。 そのためには、下図のようにハードディスクを3つのパーティションに切り、第2のパーティションに Vista をインストール、第3のパーティションを XP と Vista の両方から使えるようにします。 パーティションには基本パーティションと拡張パーティションの2種類あります。 基本パーティションは1つのディスクに4つまでしか作れませんが、拡張パーティションには数の制限はありません。 注意を要するのは、システムをインストールするパーティションは基本パーティションでなければならないということです。 下図で言えば、XP と Vista をインストールする第1と第2のパーティションは基本パーティションでなければなりません。
Fig.2
Fig.1 のようなハードディスクを Fig.2 のようにするには、Partition Magic をインストールして、これを使えばインストール済みのファイルを壊すことなくパーティションを切り直すことができます。 或いは、別項で説明している Ghost 2003 などを使って、Fig.1 の状態で外部ハードディスクなどにパーティションバックアップイメージを作っておき、MS-DOS の FDISK.EXE などを使って第1の基本パーティションを切り直し、サイズの小さくなった第1パーティションにリカバリするのも1つの方法です。 FDISK.EXE では基本パーティションを1つしか作れませんが、第2、第3のパーティションは XP を立ち上げてから、管理ツールにある ディスクの管理 で切り直すことができます。
MBM はハードディスク先頭部の MBR の後ろにあるわずかな空き領域にインストールされます。 そしてこの MBMプログラムが、MBR が本来行う動作に介入してブートセレクターの役割を果たし、次のような制御を行うことが可能になります。
● Windows XP が選ばれると ・・・ (第1のパーティションのブートセクターに制御が渡され、第2パーティションは隠される)
Fig.3
● Windows Vista が選ばれると ・・・ (第2のパーティションのブートセクターに制御が渡され、第1パーティションは隠される)
Fig.4
MBM を使えば、このようにシステムをインストールした状態を全くいじらずにマルチブートにすることができます。 多くのマルチブート用のソフトは、第1のパーティションで何らかの処理を行ってマルチブートにするか、マルチブート制御専用の小さなパーティションを第1パーティションとしています。 MBM の素晴らしさはこの辺りにあるといえます。
| 1 | A:\>mbm install |
|---|---|
| 2 | MBM - Multiple Boot Manager RO.39 (C)ChaN, 2008. |
| 4 | |
| 5 | The boot manager will be installed into drive #0 |
| 6 | Do you wish to continue ? <Y/n>=y |
| 7 | Installing....done. |
| 8 | |
| 9 | A:\> |
| Fig.5 | |
MBM は Vector のサイト からダウンロードできます。 ダウンロードした zip ファイルを解凍するといろんなファイルが現れますが、必要なのは MBM.COM という小さなファイルです。 これを DOS の起動ディスクにコピーしておいて、パソコンを DOS から起動します。
右図 Fig.5 の1行目にあるように mbm insatall と実行すると、6行目のように Do you wish to continue ? <Y/n>=
と聞いてきますので、y と入力して Enterキーを押すだけで MBM のインストールは完了です。
Fig.7
パソコンを再起動すると下の Fig.6 のような画面が表示されて止まります。
Fig.6 に表示されている 1 から 3 が、第1、第2、第3のパーティションを表しています。
Fig.6
この画面で、F1キー または Hキーを押すと、右図の Fig.7 のようなヘルプが画面右側に表示されます。 ヘルプ画面にある F5, F6, F7, F8 の使い方を参照して、起動時の各パーティションの状態を設定します。 これらの設定値は Fig.6 の中にある
↓キーで第2のパーティションの所を指定して F7キーを押します。 これで第2のパーティションをマスクして見えなくすることができます。 表示は 2. [--m-] 58.6G 17 HPFS/NTFS と変わります。 次に↑キーで第1のパーティションを反転させて [a---] となっていることを確認してから Enterキーを押してみてください。 Windows が立ち上がり C: ドライブの他に 64.8GB のドライブしか見えなくなっている筈です。
MBM を使ってパーティションをアクティブに設定することと、マスクして隠してしまうことを覚えたところで、第2のパーティションに Windows Vista をインストールしましょう。 このためには、第1のパーティションをマスクし、第2のパーティションをアクティブにしてから、Vista のインストールディスクを光学ディスクドライブに入れ、パソコンを再起動させます。 パソコンによっては、BIOS の設定で光学ディスクドライブの起動順位をハードディスクより上位にしておく必要があるかもしれません。
Vista のインストールが済むと、第1のパーティションは隠されたままとなっており、第2パーティションが C: ドライブ、第3パーティションが D: ドライブとなっています。 インストールの際に、MBR 領域は書き換えられてしまうため、再度 MBM をインストールしてください。 再起動すると再び Fig.6 の画面が出て停止するようになります。
Fig.8
ここで MBM をもう少し使いやすく設定しておきましょう。 F8キーを使って第1パーティションをマスクグループ1 に、第2パーティションをマスクグループ2 に設定します。 F8キーを押すたびに -、1、2、3、-、1、2、3 という具合に設定値が変化します。 マスクグループの設定をしておけば、選ばれたパーティションが自動的にアクティブになり、他のグループを自動的にマスクしますから、F5キーによる Activate、F7キーによる Mask/Unmask の操作を気にする必要がなくなります。
また、F2キーを押して各パーティションに名前を付けておきます。 この例では、Windows XP、Windows Vista と名付けています。 名前を付けるとファイルシステムの表示はなくなります。
Fig.9
この状態で F4キーを押すと、Fig.9 のような表示になります。 第3パーティションが表示されなくなりましたが、これは Fig.8 で 「*」 という名前を付けたからです。 これで起動ドライブだけが表示されるようになりました。 Diskette というのはフロッピーディスクのことです。
このままでは起動したいドライブを選び Enterキーを押すまでは何時までもこの画面のまま停止しています。 F3キーを押して時間(秒数)を設定すると、この設定した時間が経過したら自動的に選ばれているドライブから起動されるようにすることができます。
Fig.10
F3キーによる起動時間の設定をしておけば、MBM 画面は Fig.10 に示すような表示になります。 この状態で何かキーを押せば自動スタートは解除されます。
MBM は前回起動されたドライブを記憶していて、そのドライブが選択された状態で表示されます。 従って、毎回起動ドライブ選択のため矢印キーを操作する必要はありません。 前回起動されたドライブに関係なく、特定のドライブが選択された状態で表示が出るようにするには、そのドライブを選んでおいてスペースキーを押します。 すると、その行の先頭部に * の表示が出て、このドライブをデフォルトでの起動ドライブと設定することができます。
● ハードディスクを2個使うとき
BIOS が認識できるハードディスクを2個使っている場合、BIOS は最初に認識されたハードディスクからの起動を試みます。 ハードディスクが認識される順序は、IDEケーブルで接続されている場合はマスター、スレーブの順に、SATAケーブル接続と IDEケーブル接続が混在する場合は通常 SATAケーブルで接続されている方が上位になります。 何れにせよ、最初に認識されるハードディスクに MBM がインストールされていると、MBM は他のハードディスクのパーティションも操作することができます。 結果として下の FIG.11 に示すように、ディスク1 の第1、第2パーティションを隠し、ディスク2 の第1パーティションから起動させるような芸当が可能です。
Fig.11
ディスク1 にインストールされた MBM は、ディスク2 に切られた各パーティションの Activate、Mask/Unmask などの制御はできますが、ディスク2 のパーティションに名前を付けることはできません。 ディスク2 にも同じバージョンの MBM をインストールすれば、この問題を解決することができます。 ディスク1 を外しておいて DOS から起動して MBM をインストールするのが確実な方法です。
● パーティションを再度切り直すには?
上に示した例では、ディスク1 の第1パーティションが 30GB、第2パーティションが 60BG と切られていますが、これを 40GB、50GB と切り直すことを考えてみましょう。 いろいろなやり方があるでしょうが、GHOST 2003 を使う方法の手順を示します。
上に示した手順で、ディスク2 を外し ディスク1 の第2パーティションの復元を最初に行っているのは、OS の起動修復と MBM の再インストールが必要になることを見越しているからです。 OS の起動修復を行うときに、OS のインストーラーに複数の OS が見えると、Windows のマルチブート切り替え画面が表示されるように修復されるため、これを嫌ったためです。
● MBM のアンインストール
新しく OS のインストールを行うと MBR 領域が書き換わり、MBM はアンインストールされた状態になります。 MBM にはアンインストーラーはありません。 DOS の FDISK.EXE を使い、fdisk.exe /mbr を実行すれば、MBR 領域が書き換えられ、MBM がアンインストールされた状態に戻ります。
● MBM の画面に画像を表示する
MBM の起動切り替え画面にマスコット人形などの画像を表示する機能があります。 但し、この画像データは MBR 近傍の空き領域には収まらないので、C: ドライブなどに配置せねばなりません。 そのため、C: ドライブのデフラグなどで配置場所が移されると、MBM の設定をやり直す必要があるようです。
● パーティションテーブルの編集
MBM の拡張機能として、パーティションテーブルの編集機能があります。 MBR にあるパーティションテーブルを直接書き換えることのできる機能ですが、余程自信のある人しか使うのを控えるべきです。 パーティションの境目をシリンダー番号などで指定する上級者向けの強力な機能ですが、それだけ危険も多く、操作を間違うとパーティションを壊してしまいます。 これを使いこなせれば、FDISK.EXE などは不要となるわけですが ・・・