社説:改造内閣発足 中韓と関係構築を急げ

毎日新聞 2014年09月04日 02時30分

 第2次安倍改造内閣と自民党の新体制が発足した。安倍晋三首相は主要閣僚をおおむね留任させる一方で、党の要である幹事長に前総裁の谷垣禎一前法相を起用した。

 女性閣僚を過去最多に並ぶ5人起用してメリハリをつけたが、総じて政策の継続を意識した布陣と言える。衆参ねじれ状態を解消して以来強引さも目立つ政権運営のありかたを見直し、政策面で生じたひずみを修正すべき時だ。とりわけ近隣諸国との関係の再構築や、人口減少への対応に力を注がねばならない。

 ◇本気問われる女性登用

 初の改造人事で閣僚12人が交代した。人選が注目された新設ポストでは地方の人口減少対策を受け持つ地方創生担当相に石破茂前幹事長、集団的自衛権行使を可能とする法整備にあたる安全保障法制担当相に江渡聡徳衆院議員を起用した。

 官房長官、財務、外務、経済再生ら主要とされる閣僚の多くは留任した。それだけに総裁就任以来の石破氏との双頭体制にピリオドを打つことが人事の主眼だったと言える。

 2年前の総裁選で首相と競った石破氏は「ポスト安倍」の最右翼と目され、来秋の総裁選で再度戦う可能性もある。滋賀県知事選の与党敗北などを受けて交代に踏み切るとともに総裁経験者として初めて谷垣氏を幹事長に起用するなど挙党態勢と党内融和に配慮した形だ。対中穏健派で財政再建論者としても知られる谷垣氏のバランス感覚に期待したい。

 だが、石破氏が首相からの安保法制担当相への就任要請を安保政策をめぐる見解の相違を理由に拒み、結局は別のポストで入閣した経過には疑問を抱かざるを得ない。石破氏は集団的自衛権行使を幅広く認める「国家安全保障基本法」の早期制定が持論で、慎重派の首相と違いがあるとされる。基本政策をめぐり相いれないのであれば閣外に身を置き、総裁選で論争を挑むのが筋だ。

 政権から石破氏を排除すれば対立が激化しかねないと懸念した首相と、孤立をおそれた石破氏が妥協した結果の地方創生担当相就任とすれば、せっかくの新設ポストが泣く。次期総裁選を控え、このところ低調な党内の政策論争が活発化するかどうかもこれでは危ぶまれよう。

 小渕優子元少子化担当相を経済産業相、有村治子参院議員を新設の女性活躍担当相に起用するなど女性を積極登用し、派閥均衡、順送り色を薄めたことを評価したい。だが、入閣した議員の一部には復古的な家族観に同調する傾向もありはしないか。成長戦略としてだけでなく、男女共同参画の精神を共有して女性の社会進出を本気で進めていく姿勢があるかが問われる。

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