安倍改造内閣:消費増税「10%」へ懸念多く
毎日新聞 2014年09月04日 00時04分(最終更新 09月04日 00時38分)
第2次安倍改造内閣の経済運営で最大の焦点の一つは、消費税率10%への引き上げを予定通り来年10月に実施するか。麻生太郎副総理兼財務相が留任し、谷垣禎一前法相が自民党幹事長に就任したことで、政府・与党双方の要職に増税積極派を登用した形だが、景気冷え込みの懸念は強まっている。増税の可否を首相が最終決定する年末まで、予断を許さない状況が続きそうだ。
谷垣氏は2012年に自民、民主、公明3党が消費税率10%への引き上げで合意した際の党総裁だ。小泉純一郎政権で財務相も経験しており、財政再建論者として知られてきた。財務省内では「安倍晋三首相は12年の3党合意に関与していないため、増税への思い入れは少ない」との見方があっただけに「谷垣幹事長の誕生で消費増税の可能性は強まった」との声も出ている。
ただ、幹事長就任後の記者会見で谷垣氏は「消費税は10%に上げるレールが敷いてある。基本は法律に書かれた通り(増税を)進めていくことだ」と指摘する一方、「同時に景気情勢もよく見ていかなければならない」と述べた。来年春の統一地方選を見据える党内では「選挙を指揮する幹事長として、増税路線を貫けるか不透明」との見方も少なくない。
慎重な発言の背景には、景気動向への不安がある。今春の消費増税後の消費低迷で、4〜6月期の実質国内総生産(GDP)は年率で前期比6.8%減となり、東日本大震災以来の落ち込みを記録。西日本などを襲った今夏の大雨の影響もあり、消費低迷が続くとの懸念も台頭している。首相は3日の会見で「景気回復の風はいまだ日本の隅々まで行き渡っているとは言えない」としたうえで、「経済最優先でデフレからの脱却を目指す」と表明。11月17日発表の7〜9月期のGDP速報などを基に「経済状況などを総合的に勘案」(首相)して増税の可否を判断する方針だ。
政府・与党内では「増税を先送りすれば、国債の急落(金利の上昇)につながりかねない」との見方がある一方、菅義偉官房長官らは、増税で景気が悪くなることを警戒しているとされる。石破茂地方創生担当相が、地方経済への悪影響を避けるためとして、慎重論を唱える可能性もある。7〜9月のGDPの数字が思わしくなければ、党内に増税延期論が噴出するのは必至だ。【三沢耕平、小倉祥徳】