ラブホ予約事業に進出するグリー田中社長の苦境
今夜のラブホテルが10秒で予約できます――スマートフォンで周囲のラブホを検索し、空室があれば予約できる新サービス「Tonight for Two」が8月11日から始まった。
新サービスを提供するのは、ソーシャルゲーム大手のグリーが3月に設立した子会社「Tonight」だ。同社は、6月から一般ホテルの「当日予約」ができる新アプリの提供を開始。今回はそのシステムを転用した「ラブホ版」というわけだ。
かつて携帯ゲームで飛ぶ鳥を落とす勢いだったグリーはスマホへのシフトチェンジが遅れ、2012年6月期の決算をピークにして2期連続の減収減益に陥っている。今年6月期の売上高は前年同期比17.5%の減少、7月からの3カ月間も前年比26.4%の大幅減となる見通しで、減収傾向が止まらない。
穴の開いたジーンズ姿で右肩上がりの業績を読み上げていた創業者の田中良和社長(37)も、今ではスーツ姿に神妙な表情だ。8月13日の決算会見では、記者からスマホ向けゲームに注力するタイミングの遅れを指摘されて、「遅かったとは思いません!」と気色ばむ一幕もあった。
ただ、ここにきて売上のほとんどをゲームに依存する体質から脱しようと、第二、第三の事業を模索している。5月以降に新規参入しただけでも、リフォーム事業に中古ブランドバッグの買い取り、介護施設のクチコミサイトなど5件にのぼる。
さらに、9月の株主総会では定款の変更を提案。旅行代理店業、不動産業、タクシーやハイヤー事業を追加するなど事業拡大に意欲的だ。
しかし、新規事業の1つであるラブホ検索は、関東地方一都六県の約30軒にとどまっている。8月末時点で、実際に予約できるのは港区は1軒、渋谷区はゼロなどお寒い限り。「少人数でスピーディーに事業を立ち上げたため」(グリー幹部)だという。
33歳の若さで東証一部上場を果たし、雑誌「フォーブス」では43億ドル(約3500億円、2012年長者番付)の資産を持つと報じられた田中社長。ただ、今年に入り、元交際相手から「やむなく中絶させられた」として民事提訴され、9月8日には本人尋問が予定されている。
田中社長の試練が続く。