• 東予

  • 中予

  • 南予

%はの降水確率

HOME > 社説 > 記事詳細
  • [PR]

差別と人権と規制 明確に区別し毅然と「ノー」を 2014年09月02日(火)

 日本は「人種差別を平気でする国」であり「政府も放置し、容認する国」なのか―。そんな厳しい見方が、国際的に固まりつつある。極めて憂慮すべき事態で、対策には一刻の猶予も許されない。
 国連の人種差別撤廃委員会が、日本の人種差別的な街宣活動「ヘイトスピーチ」(憎悪表現)に、明確に懸念を表明。差別をあおる行為に関与した個人や団体を捜査、必要な場合は起訴するよう日本政府に勧告した。国連の人権規約委員会や米国務省の2013年版人権報告書も、日本のヘイトスピーチを特に取り上げ、改善を求めている。
 日本はこれまで、言論や表現の自由との兼ね合いから規制に消極的だった。しかし近年、人種や国籍、性別など根深い差別に基づく暴力的な言動が公然と増え始めている。これ以上、手をこまぬいて見過ごすことはできまい。
 まずは大原則として、「差別や暴力は絶対に許さない」という毅然きぜんとした姿勢を国が強く打ち出す必要がある。その上で、表現の自由と差別・暴力を明確に区別し、後者に対しては新たな法規制を含めた抑止策を求めたい。
 しかし自民党は、ヘイトスピーチ対策の検討チームを設置するや、とんでもない議論を始めた。「(大音量のデモで)仕事にならない」(高市早苗政調会長)。あろうことか、ヘイトスピーチ規制にかこつけ、国会周辺での大音量のデモや街宣活動に対する規制を検討するという。
 ヘイトスピーチは差別や憎悪を助長する「暴力」であって、守るべき言論や表現とは一線を画す。うるさいから、あるいは主張が異なるから規制するわけでもない。差別は世界中いかなる社会でも許されない人権侵害だからこそ、断固として「ノー」と言い続けねばならないのだ。
 対して、権力批判や政治的意見の表明は、民主主義を支える不可欠な人権である。石破茂幹事長が昨秋、特定秘密保護法への反対運動を「絶叫戦術はテロ行為とあまり変わらない」とブログで述べたことを思い起こせば、自民党はその区別すらできていないのではとの疑念が拭えない。
 国民の訴えや不都合な意見を「騒音」と切って捨て、ヘイトスピーチやテロと同列に扱い、軽々しく言論統制を持ち出す。人権への恐るべき無知、無理解による政治の暴挙を決して許してはなるまい。
 先日は、自民党会派だった札幌市議が「アイヌ民族なんて、もういない」などとツイッターに書き込んだ。大学や地方議会、サッカー応援…。あらゆる場で、今も差別はやまない。その自省を忘れず、差別を放置し排外主義や抑圧を強める政治への監視を怠らず、寛容な社会を守るための不断の努力を続けたい。