化膿蝉のヘドロblog

25歳童貞ニート、よく鳴きます

蝉は何故大きな声で鳴く?

「死期をはやめるだけなのに…」

 

キミはポツリとそう呟いた。僕はキンキンに冷えたアイスキャンディを頬張りながら、ツーンと醒める頭でその事を考えた。

蝉の一生は長い。17年生きる種もいるようだ。だがその大部分を暗くじめじめした地中で過ごす。長い長い下積み生活の後、蝉の晴れ舞台は唐突にやってくる。眩い光の中で、命を削るようなありったけの声で鳴くのだ。そのうち幸運な雄蝉は、意中の雌蝉に愛の叫びが届き結ばれる。そしてすぐ死ぬ。

人々は、蝉の晴れ舞台ばかりに注目して、その奥に連なる永遠とも思われる思索の日々に目を向けようとしない。考えてみたまえ。彼らは17年間、暗い部屋の中で一人、ただ生きることだけをしてきたのだ。一片の灯りもともらない暗闇で、蝉は自らの生きる意味と向き合わなければならない。

何の為に生きるのか?今までの生に意味はあったのか?そしてこれからは…?

蝉は悟るだろう。ただ生きていることの無価値を。

無為に生きることは死んでいることと同じなのだ。

心の底から、命を削りながら、生を全うしたい。

みぃいいいいいんみんみんみぃいいいいいいいん

みぃいいいいんみんみんみぃいいいいんみぃいいいいいん

濃い。濃いのだ。最後に蝉は、濃く生きたのだ。

生への執着とは、何も長く生きることに対してだけではないのだ…。

 

「でもあたしも、そんな風に生きたい、かな。」

 

僕を脳の奥底から呼び戻す爽やかな声が聞こえる。僕とキミは、そんな風に、心の中をすっと交換できることがある。二人共黙っていただけなのに、ね。

「そうだね。」

僕は笑いながらそう言った。そして、これをプロポーズへの導きだと受け取った。

言おう。今、言おう。命を削るようなありったけの叫びで。この雑踏の中で、誰にも負けない大きな叫びで。

 

 



 

「みぃいいいんみぃんみぃいいいいいいいいいいいいいいん」