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 地方から都会へ、お墓の引っ越し「改葬」をする人が増えています。過疎化、少子化でお墓を守り継ぐ支え手がいなくなり、血縁に頼らない新しいスタイルのお墓も広まっています。あなたはご先祖の、そしてご自身のお墓をどうしますか?

 大阪府枚方市の男性(71)は昨年、実家のある岡山県山間部の墓を引き払い、両親や祖父母の遺骨を大阪市内の墓地に移した。

 年1~2回、岡山に帰って墓の世話をしていたが、体がきつくなった。東京で暮らす40代の娘が1人いるが、男性が他界したあと岡山の墓の世話をするのは「きつい」と訴えていた。それで改葬を決意した。

 納骨先は「○○家」の家墓(いえはか)ではなく、血縁にかかわりなく不特定多数の人を埋葬する合葬墓(がっそうぼ)。岡山の墓石2基の撤去(40万円)、閉眼法要や住職への謝礼(20万円)、合葬墓への納骨費用(30万円)など約100万円かかった。

 「ずっと心にひっかかっていたことを解決できた。これで墓がほったらかしになることはない」。自身も大阪の合葬墓に入るつもりだ。「娘に負担をかけることもない」

 第一生命経済研究所が墓の心配事について35~79歳の全国600人にアンケートしたところ、「いつかは無縁墓になる」(50・3%)、「近いうちに無縁墓になる」(4・1%)と過半数が、墓守がいなくなる無縁墓になることを心配していた。

 そうしたなか、無縁化を避けて、地方から移す墓の受け皿となる都市部の墓地の需要が高まっている。

 東京の東急目黒線「不動前駅」から徒歩5分。都心の寺が管理する屋内霊園「ひかり陵苑(りょえん)」(品川区)には全国から申し込みがある。販売を代行するひかり陵苑販売の大野浩人部長(49)は「購入者の3分の1が地方からの墓の引っ越し。若い時に地方から出てきた60~70代の人たちが多い」。

 厚生労働省によると、改葬は97年度6万9862件だったが、05年度には9万6380件に上り、ここ数年は年8万件ほどで推移している。

■役所での手続き・寺への事前相談が大事

 改葬を考えていても、どこから手をつけていいかわからない人は多いだろう。

 一度埋葬した遺骨を勝手に動かすことは、刑法の墳墓発掘罪や死体損壊等罪に触れる可能性がある。法的な手続きを踏んで進めていこう。

 大まかな流れはこうだ。

 ①移転先の墓地管理者に「受入証明書」または「永代使用許可証」をもらう②元の墓がある市区町村役場から取り寄せた「改葬許可申請書」に元の墓地の管理者の押印をもらい、役場に提出。役場から「改葬許可証」を受け取る③元の墓から遺骨を取り出し、移転先の墓地管理者に改葬許可証を提出して納骨する。

 この流れを把握したうえで移転先を決める。

 新しい墓に入る場合、元の墓石をそのまま持っていけるケースは少ない。霊園や寺の多くは出入りの石材業者が決まっており、新しい墓石の購入を求められる。合葬墓や納骨堂に納めるなら問題はないが、墓石にこだわるなら新しく買う必要がある。