解像感について
これはアニメ業界全般の傾向だと思うのですが、2014年現在の映像技術のグローバルな視点で見て、アニメの解像度はどうも低過ぎるように感じます。1.3〜1.6Kの横幅では、そろそろ‥‥というよりは、もはや限界に達していると思います。
私の取り組んでいる新しいアニメーション技法(2.5〜4K)を引き合いに出すまでもなく、現在の実写映画(2K〜)と比べても、フォーカスが全体的に甘く感じます。
アニメのキャラクターは、いわゆる「セル塗り」されたグラフィックである事から、実写に比べてエッジが格段にキツく、テレビ放映でのチラツキを除去する為に、多少のデフォーカスをおこなう必要があります。しかし客観的に見て、現在のアニメのフォーカスは「チラツキ防止」処理としては「過多」です。地デジ以降の現在のテレビの品質ならば、チラツキを防止する目的に対し、全体を大きくボカす必要はありません。「エッジのスタイリング」的な処理を、作品の作風に合わせて、ポスプロ直前の出力で「最低限」加味すれば良いのです。エッジのシャープ感を残したままでも、チラツキは防止できるんです。
しかし、この「ボケ」た状態は、チラツキ防止の処理上とは別の理由、解像度を低くする事で生産効率を向上させる「都合による弊害」とも感じられます。そうなってくると、簡単に解決できない問題です。単にコンポジットに用いるAfter Effects等の設定変更だけでは済まず、どんどんさかのぼって、下手をすると、描線に深く関わる動画工程にも及ぶ大問題だからです。
私も過去に劇場作品の撮影監督を担当してきたのでわかるのですが、「じゃあ、解像度を上げよう」と簡単に決着するものではないのです。「解像度を上げる」事は、生産ライン全体の処理能力を向上させる事と同義なので、ソフトウェアの設定を変えて済む話ではありません。生産ラインが自社で完結している事例は稀で、大概は各社が作業を受発注しながら成立しているので、縦割りと横割りの両方のラインを能力向上(機材の買い換えによる高性能化など)させねばなりません。
さらに昨今の「極限まで圧縮された」撮影スケジュールでは、「フォーカスをどうこう」などと悠長な事は言ってられないのも事実です。少なくとも私は、現在のテレビのスケジュールでは「ハイクオリティな映像制作」なんて標榜できません。
でも‥‥です。どんな理由があろうと、周囲の映像作品に比べて、現アニメ作品のフォーカスがゆるくて不鮮明なのは事実です。映像作品は全て、同じ土俵の上に立たされるのです。
生粋の2Kや4K基準で作られる作品が増えるほどに、フォーカスボケ具合は際立って視聴者の目に映る事でしょう。また、フォーカスのクリアな新しいタイプのアニメーション作品群が姿を現した際に、1.3Kくらいで制作されているアニメは前時代的な品質に感じられる事でしょう。ちょうど、ブルーレイに慣れた目で、DVDを見て酷くボケて見えるのと同じように。
私は、超解像技術を用いれば、未来の4Kには、現業界のフローを維持したままでも2.5Kの作業で何とか対応できると考えていますが、それでも今のアニメ業界からすれば「スペックオーバー」で「無理な想定」なのかも知れません。4Kを作るのなら、やっぱり3K以上、できれば4Kネイティブにしたいところなのに‥‥です。
私はインハウスのグレーディング(ラボの直前の工程)も作業し、ラボでのスクリーニングによるグレーディングに立ち会っており、1ピクセル単位の粒状や微細なエッジのフォーカスを扱っていますが、そうした日頃の視点から見ても、現アニメ制作の完成物のクオリティは、どんどん時代から遅れをとってズレてきているように思います。
こんな話を書くと気分を害される人もいるかも知れませんが、まさに「村人全員が竜宮城にいる」状態と言えます。
作風の話ではなく、映像技術面において、徐々にスペックアップしてクオリティを今日的なレベルに追随させないと、後で巻き返そうとしても「どうにも歯が立たない」事だってあり得ます。2000〜2005年が「アニメ業界のデジタルへの移行期だった」と振り返る人は多いとは思いますが、実はその期間は単なる「準備期間」であって、ホンモノの移行期はこれから先‥‥のような気がします。
私の取り組んでいる新しいアニメーション技法(2.5〜4K)を引き合いに出すまでもなく、現在の実写映画(2K〜)と比べても、フォーカスが全体的に甘く感じます。
アニメのキャラクターは、いわゆる「セル塗り」されたグラフィックである事から、実写に比べてエッジが格段にキツく、テレビ放映でのチラツキを除去する為に、多少のデフォーカスをおこなう必要があります。しかし客観的に見て、現在のアニメのフォーカスは「チラツキ防止」処理としては「過多」です。地デジ以降の現在のテレビの品質ならば、チラツキを防止する目的に対し、全体を大きくボカす必要はありません。「エッジのスタイリング」的な処理を、作品の作風に合わせて、ポスプロ直前の出力で「最低限」加味すれば良いのです。エッジのシャープ感を残したままでも、チラツキは防止できるんです。
しかし、この「ボケ」た状態は、チラツキ防止の処理上とは別の理由、解像度を低くする事で生産効率を向上させる「都合による弊害」とも感じられます。そうなってくると、簡単に解決できない問題です。単にコンポジットに用いるAfter Effects等の設定変更だけでは済まず、どんどんさかのぼって、下手をすると、描線に深く関わる動画工程にも及ぶ大問題だからです。
私も過去に劇場作品の撮影監督を担当してきたのでわかるのですが、「じゃあ、解像度を上げよう」と簡単に決着するものではないのです。「解像度を上げる」事は、生産ライン全体の処理能力を向上させる事と同義なので、ソフトウェアの設定を変えて済む話ではありません。生産ラインが自社で完結している事例は稀で、大概は各社が作業を受発注しながら成立しているので、縦割りと横割りの両方のラインを能力向上(機材の買い換えによる高性能化など)させねばなりません。
さらに昨今の「極限まで圧縮された」撮影スケジュールでは、「フォーカスをどうこう」などと悠長な事は言ってられないのも事実です。少なくとも私は、現在のテレビのスケジュールでは「ハイクオリティな映像制作」なんて標榜できません。
でも‥‥です。どんな理由があろうと、周囲の映像作品に比べて、現アニメ作品のフォーカスがゆるくて不鮮明なのは事実です。映像作品は全て、同じ土俵の上に立たされるのです。
生粋の2Kや4K基準で作られる作品が増えるほどに、フォーカスボケ具合は際立って視聴者の目に映る事でしょう。また、フォーカスのクリアな新しいタイプのアニメーション作品群が姿を現した際に、1.3Kくらいで制作されているアニメは前時代的な品質に感じられる事でしょう。ちょうど、ブルーレイに慣れた目で、DVDを見て酷くボケて見えるのと同じように。
私は、超解像技術を用いれば、未来の4Kには、現業界のフローを維持したままでも2.5Kの作業で何とか対応できると考えていますが、それでも今のアニメ業界からすれば「スペックオーバー」で「無理な想定」なのかも知れません。4Kを作るのなら、やっぱり3K以上、できれば4Kネイティブにしたいところなのに‥‥です。
私はインハウスのグレーディング(ラボの直前の工程)も作業し、ラボでのスクリーニングによるグレーディングに立ち会っており、1ピクセル単位の粒状や微細なエッジのフォーカスを扱っていますが、そうした日頃の視点から見ても、現アニメ制作の完成物のクオリティは、どんどん時代から遅れをとってズレてきているように思います。
こんな話を書くと気分を害される人もいるかも知れませんが、まさに「村人全員が竜宮城にいる」状態と言えます。
作風の話ではなく、映像技術面において、徐々にスペックアップしてクオリティを今日的なレベルに追随させないと、後で巻き返そうとしても「どうにも歯が立たない」事だってあり得ます。2000〜2005年が「アニメ業界のデジタルへの移行期だった」と振り返る人は多いとは思いますが、実はその期間は単なる「準備期間」であって、ホンモノの移行期はこれから先‥‥のような気がします。