忠清北道曽坪郡の第13空輸特殊戦旅団に所属する隊員2人が2日夜、実戦を想定した極限状況の訓練中に死亡した。問題の訓練は15日に特殊戦司令部の全部隊を対象に本格導入される予定だった米国式の「捕虜体験訓練」だ。これは敵の捕虜となった状況を想定し、さまざまな極限状況を経験するための訓練で、米陸軍特殊戦団「グリーンベレー」のプログラムを取り入れたものだという。しかし特殊戦司令部は、訓練の過程で状況対処マニュアルや安全対策をきちんと準備していなかったことが分かった。
特殊戦司令部関係者は3日、国軍大田病院で行った記者会見で「今回の訓練と関連し、各状況への対応内容を記した説明書は目にしていない。米特殊戦司令部で実施している訓練を実戦感覚をもって行うため、今年4月からプログラムを作成する一方で関係機関の支援を受けるなど、準備を徹底してきた。本格的な実施を前に初めて行われた訓練で事故が発生したのは遺憾だ」と述べた。
国防部(省に相当)によると、将校や下士官からなる訓練チーム10人は2日午後9時から広さ3坪(約9.9平方メートル)の独房内で、縛られた状態で2時間30分間にわたり捕虜体験訓練に臨んだという。膝を曲げた状態で頭に袋をかぶせ、両手は後ろ手に縛り、そのロープを両脚の間に通していたため、誰かの助けなしには姿勢を変えることができなかった。死亡した23歳と21歳の下士(伍長に相当)をはじめとする隊員たちが苦痛を訴えたのは1時間後の午後10時ごろからだった。第13旅団の関係者は「下士2人は苦痛を訴えたが、教官らは日常の訓練の過程だと判断、迅速に対処できなかったようだ」と話している。
陸軍広報課のナ・スンヨン課長は「訓練に参加した隊員たちは激しい痛みを訴え、もがいたり、叫んだりして懇願していたようだ」と説明した。中には「助けてくれ」と叫んだ隊員もいたという。だが、独房の外で「敵軍」役をしていた幹部2人は隊員たちの訴えを「演技」と思っていたとのことだ。午前中にも同じ条件で訓練をしていたため、こうした状況を本当のことだと考えていなかったのだ。ところが、午後の訓練時は布を頭にかぶせた後、首の辺りもロープで縛っていたため、呼吸困難を起こしたとみられている。訓練を行う教官4人は、状況室と独房の廊下を行き来しながら訓練を監督・管理していたという。
陸軍関係者は「今回の訓練で頭にかぶせられた黒の袋は軍用品がなかったため、市販品を購入した物で、防水処理されたポリエステル製だった。首の辺りのロープが締まってしまい、通気性に問題があったことが分かった」と述べた。教官は午後10時40分ごろ、ようやく事態の深刻さに気付き、呼吸困難の症状を訴えていた23歳の下士を病院に緊急搬送した。さらに、ほかの隊員たちの様子を確認していた際、下士2人が死亡しているのを発見したという。教官と軍医は応急処置をしたが、2人が息を吹き返すことはなかった。
特殊戦司令部関係者は「非常にハードで危険な訓練だった。適切な監督・管理下で訓練を行うべきだったが、不十分な点があった」と説明した。