【松本学の知って得する社会保障】
日本の年間医療費が40兆円に届こうとしている。厚生労働省が8月26日に公表した平成25年度の概算医療費(速報値)は過去最高の約39兆3千億円となり、11年連続で最高を更新した。毎年約1兆円のペースで膨らみ続ける医療費を抑制するため、政府は来年度にも各都道府県に対し年間の支出目標を設定させる方針で、有識者による専門調査会で検討を本格化させる。
都道府県別に上限額を決めるのは、地域ごとの医療費に大きなばらつきがあるためだ。
厚労省がまとめた24年度の都道府県別1人当たり医療費(実績値、国民健康保険と後期高齢者医療の合計)によると、最も高額の高知県(62万5千円)は最少の千葉県(40万1千円)の約1・6倍だ。
高知県に続いて多いのは山口県(61万6千円)、大分県(60万円)、広島県(59万8千円)、佐賀県(59万6千円)。一方、少ない方は埼玉県(41万1千円)、沖縄県(41万2千円)、茨城県(41万5千円)、栃木県(42万6千円)と続く。西日本に医療費の高い地域が集中する「西高東低」の傾向が顕著に見てとれる。
こうした差を生じさせているのは病床数の多寡だ。
「病床数が過剰な地域では入院治療を勧められやすい傾向にある」と話すのは都内の大学病院関係者。25年度概算医療費を診療種類別でみると、最も割合が高いのは医科の入院で、全体の40・2%(約15兆8千億円)を占める。入院費の伸びが医療費全体を押し上げる要因になっているのだ。