「輸出大国」ドイツの輸出が減速
ユーロ圏で再び、デフレリスクが台頭している。ただ、従来のデフレリスクと様相が異なる。これまでは、ギリシャ、ポルトガル、スペイン等の「周辺国」で、ユーロ危機の後遺症によって、景気が大幅に悪化し、その結果としてインフレ率が急低下してきた。しかし今回は、ユーロ圏経済で唯一の勝ち組といわれてきたドイツの景気が急激に悪化し、同国のインフレ率が低下してきている点が特徴である。
ドイツの4-6月期GDPの結果は散々な内容であった。実質GDP成長率は季調済前期比-0.2%と2013年1-3月期以来のマイナス成長となった。民間消費が同+0.1%と横ばいにとどまり、これまでドイツ経済を牽引してきた建設投資が同-4.2%と大幅減となったほか、設備投資も同-0.4%と減少に転じた。
ドイツといえば、日本同様、「輸出大国」というイメージが強いが、実はこのところ、輸出はさえない状況が続いている。4-6月期は季調済前期比+0.9%とプラスだったが、1-3月期は同0.0%だったので、2014年に入ってから1%程度しか増えていないことになる。このままのペースでいくと、2014年の輸出は前年比2%程度の低い伸びにとどまるという計算になる。
ドイツの輸出は、2010、2011年には、リーマンショック後のユーロ危機によるユーロ安によって中国向けを中心に大きく増加し、全体では2年連続で前年比2桁台の伸びを示した。
だが、ユーロ危機によるユーロ圏のデフレリスクの台頭から、為替レートがユーロ高に転じると、対外競争条件の悪化したドイツの輸出も減速してきた。2012年の輸出の伸び率は前年比+4.3%、2013年は同+1.0%であり、2010年の同+19.2%、2012年の同+12.2%から大きく低下した(いずれも貿易統計で名目金額ベース)。
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