会社勤めをしている社会人でうつ病にかかる人は、ほぼ間違いなく仕事が嫌でうつ病になっています。
社会人のうつ病は、目が覚めても体がだるいとか、朝起きられなくなるといった症状からはじまります。なぜ、そういう症状が出るかというと、仕事のことを考えるだけで嫌な気持ちになり、疲れてしまうからです。
これは登校拒否児のケースと似ています。いじめに遭った生徒が先生の名前を聞くだけで学校に対する拒絶反応が出るのと同じで、社会人も会社や仕事のことを考えるだけで身体に拒絶反応が出ているのです。
朝起きられないとか、疲れが抜けないという状態を続けていると、そのうち吐き気を催したり、考えがまとまらなくなったりという症状があらわれます。それから文字を読んでも内容を把握できなくなったり、仕事でケアレスミスを連発したり、場合によってはパニック障害を起こしたりします。そして、心療内科や精神科の扉を叩くことになるわけです。
うつ病患者は「まずいことになった、どうしよう」と心配しがらも無意識では安堵しています。
病院では診断を受ければ堂々と会社を休む理由が生まれますし、今抱えている仕事も誰かに肩代わりしてもらうこともできるからです。周囲の人もたいていは労ってくれますし、そのあいだの給料も保障されます。仕事がほとほと嫌になった社会人にとってこれほど好都合なことはないわけです。
うつ病の人は、様々な不遇な事情があったのだから、「私がうつ病になるのも仕方ない」と思っています。つまり、うつ病を正当化し、自分を納得させているのです。自分のうつ病が正当化され、その状態にとどまっていることが心地よいのです。
今、うつ症状に悩みながら続けている仕事は、心からやりたいと望んでいる仕事でしょうか。
今の会社の待遇、給料、ステータス、そういうものを手放したくないから続けているだけで、本当はやりたくない仕事なのではないでしょうか。本当はやりたくない仕事をしているから、仕事がかさんだり、嫌なことが重なったりしたときに、身体に拒絶反応が現れてきます。そして、それが我慢の限界を超えると、うつ症状が現れます。
今のポジションを守りたい自分と仕事が嫌でしょうがない自分と、その両方に折り合いをつけようとして、うつ病に理由を求めようとするわけです。この場合の解決策は、とても単純です。
嫌な仕事は今すぐ辞めることです。
実際、会社を辞めると社会人のうつ病はすぐに治ってしまいます。
うつ病の人の中に、嫌な仕事をなかなか辞めようとしない人がいます。嫌な仕事にしがみつき、今のポジションをキープすることばかり考えている人がいます。だから余計にうつ病を必要とするようになり、それを免罪符に延々とさぼりつづけようとするわけです。
収入がなくなるから大変だといっても、3カ月は雇用保険がおりますし、くだらないプライドさえ捨てれば、その間に次の仕事を見つけることは決して難しいものではありません。
本当にやりたい仕事にありつけるかどうかという問題はありますが、嫌な仕事を辞めるという決心をすれば「このポジションにしがみついていなければならない」という思考パターンが壊れ、これまで見えてこなかった選択肢が見えるようになってきます。
うつ病の人は往々にして、自分のせいで病気になったのではないと考えています。うつ病の原因は、そのほとんどが自分の中にあります。「会社の方針が悪い」とか「家庭環境が悪い」とか「上司が悪い」などと他人のせいにしているかぎり、うつ病は治りません。
ではどうすればうつ病は治るのでしょうか。
それは「何事も自己責任だ」とい考えて選択と行動を行うこと以外にありません。
「自己責任だ」と考えることのできる人はうつ病になりません。
例えば、みっともない失敗を繰り返し、周囲の人から能力を疑われ、仕事で散々な目にあって精神的におかしくなった。それは、先ほど述べたように嫌で嫌でしょうがない仕事に就いているからです。
また、親の命令でやりたくもない人生を歩まされ、精神的におかしくなった。そのときは、そんな人生は思い切って捨て去ることです。一切を捨てて、自分がやりたいように人生を組み立てれば、たとえ貧しくなったとしても間違いなくうつ病にはなりません。
安穏とした現状を守ることに必死になるために、やりたくもないことを自分に強いる。こうした精神のまた裂き状態ほど悪いものはありません。
心は鍛えられない
「心を強く持ちなさい」という言葉を耳にすることがあると思います。
心を強く持つことは大切なことかもしれませんが、それはどんな状態を指すのか、我々は必ずしも共通の理解を持っているわけではありません。そのため「心を鍛える」とか「折れない心」というように、心がまるで鍛えることのできるもののように錯覚しています。しかし、心はそもそも強くしたり、鍛えたりできるものではありません。
というのも、心というものは存在しないからです。我々が便宜的に心といっているものは、脳の情報処理の状態のことであり、科学的には「現象」というべきものです。現象であるものを、テクニックで鍛えたり、強くすることはできないのです。
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