理化学研究所の改革案は百害あって一利なし
2014年09月03日
理化学研究所の改革案が8月27日に発表された。小保方晴子氏が所属し、故笹井芳樹氏の所属していた発生・再生科学総合研究センター(CDB)は名称を変更し、現在の研究室数を半減、竹市雅俊センター長は退任して次期センター長を国際公募により選定するといったものであった。
筆者は「またか」と呆れた。日本に大昔から習慣化(?)している「連帯責任」がここでも適用されたのだ。筆者は、この連帯責任文化が「個」の独創性を妨害し、日本の国そして組織が「固いがもろい」たる根源的理由だと確信している。その弱点を放置していいのか。むしろ、今の日本にとって必要なのは「柔らかいが強い」組織づくりではないか。それを目指そうとするなら、今回の改革案はまるで失格である。
まず、理化学研究所のようにアカデミアの研究所では、各研究室はそれぞれが独立したグループであり、各研究室はPI(Principal Investigator:研究室責任者)とよばれる独立したリーダー(責任者)によって運営されているということを明確にしておきたい。それぞれの研究室は独立した研究テーマで研究を行っているのだ。つまり、ひとつひとつの研究室は別々の中小企業みたいなものなのだ。複数の研究室が共通の興味や目的を共有したときには、共同研究という形でいくつかの研究室が協力しあうが、そうでなければ研究はバラバラに行う。一方、企業の研究所は、多くの場合、会社のミッションを達成するために会社の利益につながる研究を研究所または会社が「一丸」となって皆が協力し行う。
つまり、今回のケースでは、STAP細胞の共同研究を行った研究室以外の研究室は、いわば別の中小企業のようなものである。各研究室は理化学研究所という親会社の部署や子会社ではないのだ。それにも関わらず、今回のような連帯責任を負わされることになった。高校野球で、ひとりの生徒が万引きをしたという理由で、その野球部全員が連帯責任をとらされ公式試合への出場を1年間停止されるのと同様、あるいはそれよりひどい扱いを受けたのだ。理不尽としか言いようがない。この理不尽に皆が耐え忍ぶのが日本の昔からの習わしなのだ。
筆者は、・・・・・続きを読む
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- 佐藤匠徳(さとう・なるとく)
(株)国際電気通信基礎技術研究所(ATR)佐藤匠徳特別研究所 特別研究所長。独立行政法人 科学技術振興機構(JST)ERATO佐藤ライブ予測制御プロジェクト研究総括・米国コーネル大学教授・豪州センテナリー研究所教授(兼任)。1985年筑波大学生物学類卒業後、1988年米国ジョージタウン大学神経生物学専攻にてPh.D.取得。ハーバード大学医学部助教授、テキサス大学サウスウエスタン医科大学教授、コーネル大学医学部Joseph C. Hinsey Professorを歴任後、2009年に帰国、2014年まで奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)バイオサイエンス研究科教授。2014年7月にNAIST退職後、2014年8月1日より現職。専門は、心血管系の分子生物学、ライブ予測制御学、組織再生工学。
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