国際激流と日本

日本非難の大合唱に異を唱えた元太平洋軍司令官「歴史の上ではどの国も加害者だった」

2014.09.03(水)  古森 義久

・中国のような独裁政権は、自己の権力の掌握を強めるために、過去の歴史上の過ちを利用して国内のナショナリズムを煽ろうとする。

・日本や韓国のような民主主義国家も、政治権力を強化するために、歴史上、自国が受けた傷や侮辱を利用する。特定の歴史に特殊な思いを抱く国内のグループにアピールするのだ。

・独裁でも民主主義でも、政治指導者たちは「愛国心が不足している」という非難には弱い。一方、ほとんどの指導者はナショナリズムはコントロールできると信じている。だから自分たちの政治目的にかなう範囲までは、歴史にからめてナショナリズムを煽るのだ。

・しかし、どの国でも健全な愛国主義と偏狭な民族主義を区分するのは難しい。議論が決着していない過去の歴史的出来事を現在の政策や政治に持ち込むと、往々にしてその区分を超えることになる。

 プレア氏は全体として以上のような点を強調した上で、中国と日本と韓国について次のような指摘をした。

・中国は現在のような形の政府の下では、歴史に関して誠実であり続けることは難しいだろう。独裁政権は自国自身の歴史に脅かされることがよくある。

・日本は自国より強いことが明白な米国に対して、なぜ戦争を仕かけたのか。この点を徹底的に調査して理解しなければ、これからの前進と進歩の前に多様な障害が立ちはだかるだろう。

・韓国は自国の軍隊がベトナム戦争でどのような行動を取ったかを調査すべきだ。ベトナムでの韓国将兵は残虐だったと言われる。

 このようにブレア氏は日本に対して非難をほとんど浴びせなかった。靖国参拝や慰安婦の問題を拡大して糾弾することもせず、その点は、米国側の識者や専門家の中では明らかに少数派である印象を与えた。

「自分だけが」という主張は間違っている

 同シンポジウムでは、ブレア氏の演説の後に安駐米韓国大使がもう1つの基調演説を行った。その主な内容は前回の当コラムで伝えたように、歴史問題に関して日本を非難するものだった。慰安婦を「性的奴隷」とする従来の日本糾弾である。

 すると、安大使の日本糾弾を受けるかのようにブレア氏…
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