【CEDEC2014】オリジナルグッズ販売で年間3000万円稼ぐ!サイバーコネクトツーの“副産物”活用方法
社内の“お宝”をまとめて、“濃い”ファン向けにグッズ展開!
開発者向けセッション「CEDEC 2014」の開催2日目にあたる2014年9月3日(水)、「ファンも会社も大喜び!ゲーム開発の副産物で年間3000万円稼ぐ宣伝広報室のヒミツ」と題したセッションが実施されました。
このセッションは、サイバーコネクトツーの業務部 戦略企画課 宣伝広報室のチーフである山之内幸二氏が講師を務めました。
同社の宣伝広報室は、2008年4月よりオリジナルグッズを販売する通信事業を創設。2014年9月現在までで150点を越える商品を展開。セッション名が表すとおり、非開発部門でありながら、なんと年間3000万円もの収益を上げています。
本セッションでは、これまでどのような取り組みを行なってきたのかについて詳しく語られました。
デベロッパーがグッズ制作する理由
デベロッパーであるサイバーコネクトツーがグッズ制作をするようになった理由はシンプルで、「だれもグッズ化してくれないから!!」というもの。リリースしたゲームの中でも、成功した作品でなければグッズ展開が行なわれないという現状があります。
そこで、同社の代表取締役社長である松山洋氏の「だれも作らないのであれば、自分たちで作ろう!!」という鶴の一声があり、グッズ制作を行なうことになったのだとか。
山之内氏は、「デベロッパーが作るグッズにこそニーズがある」と語ります。なぜなら、作品のことは開発会社が一番深く知っているから。グッズを作るなら、デベロッパーにしか作れないものを、ということで企画が持ち上がりました。
それは、社内に転がっている世界観設定資料や、アフレコ台本、キャラクター設定、デザインラフ、絵コンテ、コンセプトアート、開発の様子がわかる写真、初期デザイン、あるいはラクガキや没案といったもの。山之内氏は、「皆さんの社内にこのようなものがあるなら、今すぐ冊子にまとめて販売しましょう!」と力説。
これらのゲーム制作を通じて生まれた“副産物”は、倉庫にしまっておかずに、ファンに見てもらう機会を与えるべき。ファンからすれば、のどから手が出るほど欲しい、読みたい“宝物”なので、これを眠らせずにするべき、とのこと。「そのためには、デザイナーに捨てさせずにとっておかせることが重要です。下手したらシュレッダーにかけちゃったりしますからね」ともアドバイスしています。
サイバーコネクトツーは、これらの副産物などを活用して、7年間で約150種のグッズを制作。2011年と2012年には約3,800万円、2013年でも約3,200万円と、安定して3,000万円代の売上を計上しているのだとか。2014年上半期までの売上をまとめると、この3年半で1億2700万円もの売上を記録しています。
具体例として、ケモナー向けの冊子「THE KEMONO BOOK」は自社の完全オリジナル作品のため、版権料は0円、利益率79%という高い数字に。損益分岐点(この数以上売ったら儲けが出はじめる)は443冊ですが、発売から初週で600冊を売りあげ、すぐに利益回収ができたのだとか。現在も増刷を重ねるほどの人気です。
一方、版権モノとしては、映画「ドットハック セカイの向こうに」に関する冊子の場合、版権量も発生することから、利益率は147.4%。こちらは損益分岐点の突破に向けて販売冊数を伸ばしていっている状況とのこと。
なお、このようなオリジナルグッズを展開するにあたっての注意としては、「決して出版社・権利元などの商売を邪魔しない」ことが重要なのだとか。グッズ展開は、作品のメディア展開が終わったあとに行い、メディア展開が終了した後もついてきてくれるような濃いファンに向けて商品展開を行なうべきとのこと。
安定したグッズ展開を可能にする社内体制
サイバーコネクトツーの場合、DTP経験者が所属する「デザイン室」を設けているとのこと。
こだわりのあるグッズを作るためには、企画、デザイン、校正、販売をすべて自社で実現し、グッズ制作の様子をブログやSNSで拡散告知することもできるのが望ましい。
また、安定した新商品展開をおこなうため、ニーズや商機にあわせて年間30点以上のグッズを制作。企画段階からデザイナーを参加させて、制作スピードを向上させているとのことです。
なお、「デザイン室」所属のメンバーはDTPデザイナーとして、ロゴやアイコンの制作など一部の開発業務を担うことで、人月単価を軽減しているのだとか。
また、宣伝、広報を兼任して、非開発部門の収益化と、ファン増加のための広報活動、両方の視点で考えることも大事にされているとのこと。
グッズとイベントが生み出すファン増加サイクル
自社でグッズを作ることができれば、WEBやイベント、説明会、会社行事など、何かにつけて販売が可能になります。
物販によってゲーム開発以外の方法で利益を上げることが可能。したがって、出展費用や人員コストがかかるイベントにも積極的に参加できるようになります。
そして、イベントに参加する機会が増えるとユーザーとのタッチポイントが増加し、ファン獲得を促進。最終的にファンが増えることで売上も増加し、新たなグッズ制作が可能になる……というサイクルができています。
すべてはファンを増やすため
山之内氏は、「Fanfirst」(ファンファースト)で考えることの重要性を延べ、「ファンは情報に飢えています。小さくても展開を続けていくことでファンを退屈させないようにするべき」とのこと。
ファンからは、「タイトル発売後に展開が止まって寂しい」「作品の裏側まで全部知りたい」「関連グッズがたくさん欲しい」といった意見が出てきています。このような根強いファンを獲得することが、ゲームタイトルの販売にも繋がることになるのです。
つまり、会社にある“副産物”を上手く活用して、グッズ販売で活動の選択肢を広げ、根強いファンをつくりタイトルの販売に繋げる、という流れが大事というわけです。
<質疑応答>
――設定資料集などを出す場合、インタビューなどの原稿を版権元にチェックしてもらう必要はあるのでしょうか。
★山之内氏:
チェックは入ります。ただ、弊社の松山が“言わなくていいこと”をいつも言ってしまう人間なので、「本当に言っちゃいけないこと」は削られ、我々が言いたい部分は残してもらえる…ということも多いです(笑)。ある意味、「本当に言っちゃいけないこと言う」というのもひとつの手じゃないでしょうか(笑)。
また、ページ数がかなり多い設定資料集については、正直、版権元がきちんと全部チェックしているのかどうか、我々にもわかりません!ページ数を膨大にすれば、“抜け”が出るかも…(笑)。
――版権元から、グッズを出してほしいという依頼が来ることはありますか?
★山之内氏:
今のところありませんね。我々の展開しているグッズは、非常に濃いファン向けで、数も多くは出していません。そのため、メーカー側が出すグッズと比較すると効果が低いとの判断だと思います。
――ぬいぐるみなどもグッズ展開されていますが、本と比較して、どちらが儲けやすいでしょうか?
★山之内氏:
本です!本は、一回作ってしまえばまた増刷できます。ぬいぐるみは嵩張るので管理コストもかかりますし。それに比べてタペストリーは、原価率も高いし、販売単価も高く設定できます。その…うまく設定資料集で使った素材を、タペストリーにも使用すれば…(笑)。
――版権モノのグッズを出す際には、版権元とあらためて契約を盗んでいるのでしょうか。
★山之内氏:
グッズを出す際には、別の契約が必要で、ゲームとは別に契約しなおしています。
――売上が一番良い販売サイトは?
★山之内氏:
販売本数はアマゾンが一番高いですね。ちなみに自社の通販サイトを作っていましたが、発送業務に大変さを感じていました。