(2014年9月3日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
2018年のサッカー・ワールドカップ(W杯)をボイコットすることは、どんどん長くなる経済制裁のリストよりもロシアのウラジーミル・プーチン大統領を説得するのに効果的だろうか?
ウクライナ危機が9カ月前に始まって以来初めて、欧州連合(EU)の外交筋が積極的にこのアイデアを検討している。
欧州諸国の政府内で2日に配布されたオプションペーパーによると、EUは自動車レースのフォーミュラワン(F1)や欧州のサッカー大会、2010年にロシアに開催権が与えられた次回W杯を含め、「注目を集める国際的な文化、経済、スポーツイベント」からロシアを排除することを勧告すべきかどうか検討している。
エストニアやリトアニアが熱心に提言
外交筋は、W杯ボイコットは今週末までに合意される新たな制裁措置には含まれないと話している。だが、1日に開催されたEUの大使の会合では、複数の代表団、特にエストニアとリトアニアがボイコット案に大きな熱意を示したという。オプションペーパーによると、新たな制裁が決定されたら、スポーツイベントからの追放で「協調行動を取ることも考慮できるだろう」。
「ロシア側からの善意が見られないため、この種の議論はタイムリーだ」と、ラトビアの外交官は言う。
1979年のソ連のアフガニスタン侵攻後、米国は1980年のオリンピック(五輪)モスクワ大会のボイコットを主導し、地政学的な瀬戸際戦術の代理として国際的なスポーツイベントを利用する前例を作った。4年後にはソ連が報復に出て、共産圏による1984年のロサンゼルス五輪のボイコットを率いた。
「権威のある国際的スポーツイベントのボイコットは、いかにも冷戦のような感じがする」。リスクコンサルティング会社ユーラシアグループの欧州分析部門のトップ、ムジタバ・ラーマン氏はこう言う。「ボイコットはEUが今回金融に関して取るどんな制裁措置よりもずっとロシア人を傷つけるだろう」
国際サッカー連盟(FIFA)は、7月のマレーシア航空17便の撃墜に対して出した声明を踏襲し、W杯の開催は「市民と政府との建設的対話を促す強力なきっかけになり得る」と述べた。
3日に欧州委員会によって議論され、週末までに承認を得るために各国政府に送られる経済制裁の提言では、欧州の資本市場に対するロシア企業のアクセス制限を拡大し、現在はロシアの大手国営銀行に限られている制裁をロシアの防衛企業と国営エネルギー企業に広げる。