より説得力のある説明は、彼らは母国の退屈さから逃れ、自分のアイデンティティーを見つけたいという欲求から聖戦に参加している、というものだ。
「自分の人生では大したことは起こっていないからという理由で、あの場所へと引き寄せられた者もいる」と、ロンドンのシンクタンク、英国王立防衛安全保障問題研究所(RUSI)のアナリスト、ラファエロ・パントゥッチ氏は言う。
母国での生活は退屈、聖戦はアルコール抜きの学生の休暇?
ビリヤードをしながら、甘い物を食べ、プールに飛び込む戦闘員たちの映像は時に、見る者に、聖戦はアルコール抜きの学生の休暇のようなものだと思わせてきた。
冴えない町で先の見えない仕事に就いている若者にとって、同胞意識と勝利の栄光と銃は、身を震わせるような興奮を与えてくれるように見える。
ベルギー出身の戦闘員の多くは、最も退屈な町の出身だ。過激派はそのような町で集中的に、新たな聖戦戦士を募る努力を費やしてきた。
ジハード主義者のネットワークや過激派はもはや、モスクに拠点を構える必要はない。アブ・ハムザがフック型の義手を振りかざし、ウサマ・ビンラディンを称えたフィンズベリーパークのモスクなど、一部のモスクは運営母体が代わった。誰を歓迎するかについて、以前より慎重になったモスクもある。
小さなジハード集団は、モスクの代わりに、その活動が発見されにくいガレージやアパートに集うことができる。ジハードに関心のあるヨーロッパ人は、インターネット上で好きなだけ扇動に触れることができる。フェイスブックとツイッターのおかげで、パスワードに保護された専門フォーラムを使う必要さえなくなった。
イスタンブールからシリアに向かう「ジハードエクスプレス」
トルコは国境警備を厳しくしたものの、シリア入りは概して簡単だった。何のコネも持たずにやって来る志願兵もいる。戦闘員に必要なのは、イスタンブールまでの片道切符だけだ。大方の人はイスタンブールから国内便で、822キロに及ぶトルコとシリアの国境沿いにあるどこかの町へ飛ぶ。地元の人たちはこうした国内便を「ジハードエクスプレス」と呼んでいる。
新入りは、国境を越えて密入国するか、シリアの偽造IDカードを使ってトルコの入国審査を通過するまで、隠れ家で過ごす。大半の英国人戦闘員は銃を持ったことがないが、ひとたびシリア領土に入ると、基地で訓練を受ける。