韓国陸軍の申鉉惇(シン・ヒョンドン)第1軍司令官(陸軍大将)が今年6月、軍事対応態勢強化措置期間中に、担当地域の外に出掛けて母校で講演を行い、さらに飲酒して醜態をさらしていたことが最近になって分かった。申司令官は、事実上の解任(退役)となった。
第1軍司令官は、今年6月に銃器乱射事件が発生した第22師団をはじめ、約10万の兵力を指揮する野戦軍司令官。現役の陸軍大将が「品位を損なった」などの理由で退役になるのは今回が初めて。銃器乱射事件や1等兵集団暴行死事件など、このところ軍の綱紀に関連する事件が相次いでいる中、現役の野戦軍司令官が軍事対応態勢強化期間中に酔って醜態をさらし、解任されたというのは、韓国軍の綱紀の緩みを端的に示すもの、と指摘されている。申司令官の事件が起きてから2日後の6月21日午後には、第22師団で銃器乱射事件が発生した。
韓国国防部(省に相当)の関係者は2日「申司令官は(大統領の外遊期間だった)今年6月19日、安全保障に関する講演を行うため(忠清北道清州にある)母校を訪れ、指揮官としての責任地域を離脱した。講演を終えて同窓生らと飲酒した後、品位を損なう行為があったことについて責任を取り、今日付で退役志願書を提出した」と語った。軍事対応態勢強化期間中は、指揮官の外出・外泊や飲酒・会食などが制限される。表向きは自ら退役を願い出たという形になっているが、実際は問責含みの解任・退役措置と解釈されている。さらに、事件が起きてから2カ月以上たった今月2日に、ようやく措置が取られたことをめぐり「第22・第28師団の事件など大事件が相次いで起こったことを受け、さらなる波紋を懸念して、国防部がこの事件を隠蔽(いんぺい)しようとしていたのではないか」という疑惑も持ち上がっている。
ある消息筋は「国会国防委の野党議員が、申司令官の事件に関する情報提供を受けて確認に乗り出したことから、申司令官が退役志願書を出した。退役措置には朴槿恵(パク・クンヘ)大統領の意向が反映されたようだ」と語った。
韓国軍の消息筋は「申司令官は、母校近くの飲食店で同窓生らと酒を飲み、真っすぐ立てないほど泥酔した。申司令官は、部隊に戻る途中、梧倉サービスエリアのトイレに行ったが、大将の階級章が付いた軍服はかなり乱れた状態だった」と伝えた。最大野党の新政治民主連合所属で国会国防委の委員を務める陳声準(チン・ソンジュン)議員は2日、声明を発表し「情報提供によると、申司令官は憲兵に背負われてトイレに向かった。当時、申司令官は、軍靴を片方しか履いておらず、もう片方は脱げた状態だったという。申司令官がトイレで用を足している間、憲兵が出入りを規制したため、怒った民間人がこの件を警察に通報し、関連事実が警察庁に報告されたと聞いた」と主張した。
韓国政府は、第1軍司令官の後任が任命されるまで、チャン・ジュンギュ副司令官を職務代理に任命した。