「親子の暮らし」か「子供の保護」か 対応難しい児童虐待 ――児童相談所インタビュー
THE PAGE 9月3日(水)15時50分配信
児童相談所が、「これは虐待です、子供にとって不適切な養育です」という話をしたとしても、「いやうちはうちのやり方があるんだ」、「どうして児童相談所が勝手な判断をするんだ」と言って、ずっと話し合いにならない家庭もあります。「自分があのとき悪かった、自分はこれこれこういう理由で子供につらくあたってしまった、本当に自分はまずかった」という親も多くいます。反省している親が、今は同じことを繰り返してしまう恐れがあるけど、もう少しうちの中がこういう風になったら、経済的にこういう風になったら引き取りたいという気持ちが出て、児童相談所や子供との間で話が統一する、一つに成立する家庭になると、将来的に家に帰せるようになります。
ごく一部、このお父さんお母さんに預けたのでは、子供が大きなけがをしてしまう、大きなマイナスになってしまう、心の病になってしまうということもあります。そういう場合は、先ほどの緊急会議、児童相談所総体として、これは法律に訴えてでも裁判所に訴えてでも、子供と別れて生活させるという、強制力をもって子供の幸せを考えなければいけないというのも、一方で児童相談所の使命だと思っています。
虐待以外の児童相談所によせられてくる相談というのは、親が、あるいは子ども自身が、「自分が困っているからこういう相談をしたい、どうしたらいいのか」と相談をしてくるものです。基本的には児童相談所というのはそういう相談機関だったんですね。しかしこの虐待相談、いわゆる虐待通告は、お母さんお父さんとしてはあまり困っていない。子供自身が困ることはあるんですが、親は少なくとも困っていない。だから児童相談所が児童相談所の判断で、その家庭に入って何があったのか調査に入るわけです。
親からすれば、何で来たんだ、何でうちに来なければいけないんだよ、となってしまいます。だからなかなか相談関係ができない点が非常に難しいと思います。そのため、親と気持ちを一つにして子育てをしていこうとなりづらく、非常に難しい相談の一つだと思っています。
実際に親と話をしていて、子供のことを非常に考えてくださる親になってきたと感じるとき、変化があったなと感じるときがあるんです。お母さんの元にそれでは帰そうかと我々も考える、子供も帰りたいと思っている、そのときに親の気持ちが、なんらかのきっかけでくるっと変わってしまうことがあります。子供も、児童相談所も、お母さんも、いついつ帰る方向で考えようねとなって、その方向でまわりの環境も整えたときに、一瞬にして、何かのきっかけで親がくるっと横を向いてしまう……それはとてもつらいことです。子供もその気になっている、周りもその気になっているときにです。それが虐待問題の難しさなんですが、またそこで子供がつらい思いをしてしまう……ということに直面したときに、んーっと悩んでしまうことがありますね。
最終更新:9月4日(木)2時2分
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