[PR]

 安倍晋三首相(自民党総裁)は3日に行う自民党役員人事と内閣改造で、党の要となる幹事長に谷垣禎一法相をあてる方針を固めた。谷垣氏は前自民党総裁で、谷垣グループの領袖(りょうしゅう)を務める重鎮だ。秋以降、消費税率の10%への再引き上げ判断や、中韓両国との関係改善など多くの政策課題が控える中、政策通でベテランの谷垣氏をあて、党内を安定させる狙いがある。

 谷垣氏の幹事長起用に加え、新たに入閣が決まったのは、経済産業相に小渕優子氏、総務相に高市早苗・政調会長、法相に松島みどり氏、厚生労働相に塩崎恭久氏、復興相に竹下亘氏、科学技術担当相に山口俊一氏。有村治子氏も入閣する方向だ。これで女性5人の入閣が固まった。

 今回の最大の焦点は幹事長人事だった。首相は石破茂幹事長を代える決断をしたが、石破氏は留任を求めてぎくしゃくする場面があった。石破氏は経済成長を地方へ波及させるために新設する地方創生担当相で入閣が固まったが、首相はこうした経緯から、自らの意向を踏まえて安定した党運営ができる後任を求めた。

 谷垣氏は、自民党が野党時代に党総裁を務めたほか、財務相や国土交通相など閣僚経験も豊富だ。党総裁時には、民自公3党で消費増税をとりまとめた。自民党で総裁経験者が幹事長に就くのは初めてだが、首相は野党時代に、谷垣氏が党内をまとめた手腕を評価し、異例の起用となった。

 首相は谷垣氏に加え、党四役全員を交代させる方針。新たな政調会長に稲田朋美・行政改革相、総務会長に二階俊博・元経済産業相、選挙対策委員長に茂木敏充・経産相を起用する方針だ。佐藤勉国対委員長は続投する。

 首相は麻生太郎・副総理兼財務相、菅義偉・官房長官、岸田文雄外相、甘利明・経済再生相、下村博文・文部科学相、太田昭宏・国土交通相ら重要閣僚を、政策の継続性を重視して留任させる方針だ。また、新設の安保法制担当相兼防衛相に江渡聡徳氏、農林水産相に西川公也氏、拉致担当相に山谷えり子氏の入閣もすでに決まっている。

 首相は2日の自民党役員会で、党執行部人事の一任を取り付けた。今回の人事の目的について「人心を一新し、日本を取り戻すたたかいの第二章に臨むため、内閣改造とあわせ党役員人事も刷新する」と説明した。3日午前に党の新執行部を発表。同日午後に組閣本部を立ち上げ、同日中に内閣改造を行い、首相が記者会見する。

 第2次安倍内閣は発足以来、一人も閣僚が交代していない。3日で在任期間は617日となり、同じメンバーで続いた内閣としては戦後最長記録だ。

     ◇

■留任

副総理・財務・金融 麻生(あそう) 太郎(たろう) 73 衆⑪福岡8

外務 岸田(きしだ) 文雄(ふみお) 57 衆⑦広島1

文部科学 下村(しもむら) 博文(はくぶん) 60 衆⑥東京11

国土交通 太田(おおた) 昭宏(あきひろ) 68 衆⑥東京12=公

経済再生 甘利(あまり) 明(あきら) 65 衆⑩神奈川13

官房 菅(すが) 義偉(よしひで) 65 衆⑥神奈川2

■新任

総務 高市(たかいち) 早苗(さなえ) 53 衆⑥奈良2

法務 松島(まつしま) みどり 58 衆④東京14

厚生労働 塩崎(しおざき) 恭久(やすひさ) 63 衆⑥愛媛1(参①)

農林水産 西川(にしかわ) 公也(こうや) 71 衆⑤栃木2

経済産業 小渕(おぶち) 優子(ゆうこ) 40 衆⑤群馬5

防衛・安保法制 江渡(えと) 聡徳(あきのり) 58 衆⑤青森2

復興 竹下(たけした) 亘(わたる) 67 衆⑤島根2

地方創生 石破(いしば) 茂(しげる) 57 衆⑨鳥取1

科学技術 山口(やまぐち) 俊一(しゅんいち) 64 衆⑧徳島2

拉致 山谷(やまたに) えり子(こ) 63 参②比例(衆①)

■ポスト未定

有村(ありむら) 治子(はるこ) 43 参③比例

■自民党執行部

副総裁 高村(こうむら) 正彦(まさひこ) 72 衆⑪山口1=留

幹事長 谷垣(たにがき) 禎一(さだかず) 69 衆⑪京都5

総務会長 二階(にかい) 俊博(としひろ) 75 衆⑩和歌山3

政調会長 稲田(いなだ) 朋美(ともみ) 55 衆③福井1

選対委員長 茂木(もてぎ) 敏充(としみつ) 58 衆⑦栃木5

※(敬称略、名前の後は年齢、丸数字は当選回数、地名と数字は選挙区、公は公明党、留は留任)