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慰安婦問題の「核心」は吉田証言ではない

集中砲火を浴びた朝日新聞が、やっと反論らしきものを出したが、その「慰安婦問題、核心は変わらず」という記事は、まったく核心をはずしている。この記事は「吉田清治氏の証言を報じた記事を取り消したことを受け、河野談話の根拠が揺らぐかのような指摘も出ている」という話から始まって、「河野談話は吉田証言に依拠していない」という結論で終わるが、そんなことは周知の事実で、今ごろ記事にするような話ではない。

核心は、朝日がこの記事でまったくふれていない1992年1月11日の大誤報だ。ここで慰安婦と強制連行を混同したことが韓国政府を勢いづけ、いったん沈静していた個人補償問題が「慰安婦問題」として再燃したのだ。このとき私も強制連行を取材していたが、それを慰安婦と結びつけて書いたのは、植村記者だけだった。なぜ彼がこういう虚報を続けたのかについて、朝日の社会部も検証記事で査問している。
金さんは同年12月6日、日本政府を相手に提訴し、訴状の中でキーセン学校に通ったと記している。植村氏は、提訴後の91年12月25日朝刊5面(大阪本社版)の記事で、金さんが慰安婦となった経緯やその後の苦労などを詳しく伝えたが、「キーセン」のくだりには触れなかった。
ここで植村氏は訴状のキーセンについての記述を読んだ上で、それを「強制連行」と書いたことを認めている。彼は義母の支援している挺対協が求めていた個人補償を実現するために、強制連行と意図的に混同したのだろう。これは彼としては義母に対するちょっとしたサービスだったかもしれないが、日韓の外交問題に発展して朝日にも手がつけられなくなった。

ここから後は、植村氏個人の問題ではない。大誤報の翌12日の朝日新聞の「歴史から目をそむけまい」という社説は、
「挺身隊」の名で勧誘または強制連行され、中国からアジア、太平洋の各地で兵士などの相手をさせられたといわれる朝鮮人慰安婦について、政府はこれまで「民間業者が連れ歩いたようだ」などと、軍や政府の関与を否定する姿勢をとってきた。しかし、この種の施設が日本軍の施策の下に設置されていたことはいわば周知のことであり、今回の資料もその意味では驚くに値しない。
と強制連行を当然の事実として、慰安婦に対する「積極的な償い」を求めている。これは朝日が訂正したように「挺身隊と強制連行を混同」したのではなく、軍の関与と強制連行を混同しているのだ。そして1996年7月21日の社説は、次のように書く。
国としての責任を認め、国費によって被害者たちに補償をすることが本来の解決の方向であることは、いうまでもない。被害者の間に基金からの「償い金」の受け取りを拒否する声があるのは、この方式を日本政府の責任逃れと受けとめているからだ。しかし、民間募金に加えて国費を支出するという枠組みを、解決への一歩とすることが、現実的な道だと思う
このように朝日は、軍の関与=強制連行とした上で、慰安婦への個人補償に国費を支出しろとくり返し求めてきた。その根本にあるのが、植村記者の虚報なのだ。おそらく朝日の首脳部も、どこかでおかしいと気づいたのだろう。今月16日の社説では「政治が真剣に取り組めば道は開ける」とお茶を濁している。

これが問題の核心である。植村氏は、なぜ慰安婦と強制連行を混同したのか。朝日の幹部は混同を知らなかったのか、それとも強制連行がないと知った上で個人補償が必要だと考えたのか。どこかで誤りに気づいて撤回したのだとすれば、なぜそのとき訂正しなかったのか。

これは植村氏個人の問題ではなく、編集幹部と論説委員室の意思決定である。1992年の社説を書いたのは、当時の大阪本社論説委員だった北畠清泰氏だと思われるが、彼はコラムでもくり返し吉田の話を紹介し、「国家権力が警察を使い、植民地の女性を絶対に逃げられない状態で誘拐し、戦場に運び、監禁し、集団強姦した」などと書いた。

これは朝日新聞社の組織的なデマであり、個人の「誤用」や「研究不足」ではない。北畠氏も含めて、当時の朝日新聞の幹部を国会に呼んで、なぜこのような大誤報を続けたのかを追及する必要がある。

訂正:北畠清泰氏は、2002年に死去した。

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