ボン兄タイムス

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アイヌ騒動で明るみになった「北海道はハワイになれるか」ということ

 「アイヌはもういない」発言が問題になった札幌市の金子快之市議が自民党会派を離脱した。しかし、彼はいまだ発言を撤回していない。

 あまり報道されていないが、この主張をしているのは彼だけではない。自民党の札幌市議会議員や道議会議員には他にも幾人も存在しているのだ。セクハラやじ問題と同じで、一人に責任を覆いかぶせることで幕引きを図るやり方を取ったものの、実際には共犯者はいくらでもいるのである。

 

 今回の騒動で「北海道のアイヌの歴史」について世間の関心が集まった面もある。

 もともとアイヌの島だった北海道が明治時代に日本人によって開拓され、アイヌは「近代化に伴う日本化」を強いられ、独自の文化や産業が塗り替えられた。土地を奪われるなどの搾取が行われたほか、日本人(和人およびシャモ)と比べ権利が不平等だったりした。混血が進んでアイヌ人口が減り、アイヌ文化とともにアイヌ民族は「いない」ものにされてしまった。そういう悲劇の歴史がある。

 

 この歴史は、ハワイとダブるものだ。

 ハワイはもともと、ポリネシア系のハワイ人たちの島だった。

 しかし、アメリカ人が入植し、やがてアメリカに編入された。彼らは大規模農場を開拓し、ハワイ人はそこで過酷な労働で搾取をされた。あげくには本来ハワイに存在しない白人のもたらした疫病が蔓延し、ハワイ人の人口は激減した。現在ハワイで先住民の人口はわずか1%だという。

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 だが、現在のハワイでは、本来の先住民は尊重されている。

 現地の航空会社・ハワイアン航空の飛行機には尾翼にフラガールが描かれている。機内放送では「アロハ」「マハロ」などの日本語が用いられ、搭乗前に乗組員たちが伝統的な祝詞をあげていた。

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 戦後、ハワイの基幹産業は砂糖やパイナップルを生産する農業から、観光業に転換することができた。先住民のハワイ文化は搾取の対象を脱却し、それどころか尊重されるものになったのだ。

 ハワイ本来の言葉、食事、音楽、舞踊、風習、建物、それから「御神体」に至るまで、あらゆる近代化の中で軽視され、かき消されるのみだったものが掘り起こされ、そして大切にされている現状がある。そして、日本を含むあらゆる国にハワイ料理店や雑貨店ができている

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 日本政府や北海道は現在、「北海道のハワイ化」を進めている。

 ハワイと同じく北海道も鉱業第一次産業が衰退している。なおかつ本土にはない大自然や文化に焦がれる人は多く、人気の観光地の一つでもある。ハワイが日本をはじめたくさんの外国人観光客でにぎわっているように、外国人観光客誘致を進めていて、歌登町にはタイ人が押し寄せニセコにはオーストラリア人がたくさんいる。特に台湾や中国出身者には大人気で、ドラマのロケ地にもなったことがある。

 日本政府はアイヌ『民族共生の象徴となる空間』整備を決定したばかりだ。「アイヌの歴史・文化を学び伝えるナショナルセンター」がコンセプトで、ハワイで例えればポリネシアン文化センターに学術要素を高めたような施設なのだろう。

 

 しかし、こうした整備計画に反対しているのが、まさにアイヌ批判を唱える地元の自民党議員たちだ。金子市議の応援集会を開いた小野寺道議会議員は、「アイヌ利権」と同じように「観光利権」を糾弾している。彼が議会で追及した結果、中国人観光客が現地の免許でドライブできるようになる観光特区案はお流れになったそうだ。

  ハワイで例えると、ハワイ州議会議員やホノルル市議会議員がハワイ文化をないものとし先住ハワイ人保護策を「利権」を糾弾しつつ、外国人観光客(誘致策)の粗を探しながら観光業そのものを否定し、時代遅れとなった既存産業(例えば農業)の振興を訴えているようなものである。正気には思えない。しかし、そんな政治家がいくらでも与党にいる。彼らを支持し、投票する有権者が居るのが北海道の現状なのだ。

 

 いずれにせよ、北海道は既存産業の衰退により、現在財政的に自立・自活できていない。毎年日本政府からの地方交付税が4000億円近く投下されているが、この投下額は全国で最多だ。東京からかき集めた税金をばらまいたものである。北海道の与党議員やその支持者たちは、「自分たちの収めた税金が自分ではないアイヌに無駄遣いされている」という歪んだ意識に陥っているが、東京の人間からすれば「お前が言えることか」という話なのだ。東京の人間はもっと怒った方がいい。

 

 

 平成以降、現代の北海道では伸びている産業は観光以外に何も見られない。異文化以前に世の中の変化そのものに適合できない偏屈でチッポケな「保守派」がレイシズムをまき散らしながらかじりついている時代遅れの産業をさっさと見限り、捨て置いて、観光業に切り替える必要がある。

 

 エアドゥの機体にアイヌ民族が描かれ、アイヌ語の機内放送がされ、店に入れば店員がアイヌ語で挨拶をしたり、アイヌ式のボディーランゲージでホスピタリティを現したり、札幌や函館のあちこちにアイヌ料理店があったり、道端に復元されたアイヌにとって大切な信仰の場があり、世界中の観光客でにぎわうような、そういう場にしていかないとダメだと思う。

 

 もし観光業や先住民族や外部からの人間の流入を否定しても、北海道在住の支配層(和人・シャモ)たちだけで新たに基幹産業を作っていくことができるのならしょうがないことかもしれないが、それができないなら平成以降垂れ流された何兆円にも上る膨大なムダ金を即刻東京の人間に返還すべきだ。