名曲案内〜交響曲編W〜
(ブラームス〜プロコフィエフ)



    
  やはりクラシックの華といえば大編成のオーケストラによる交響曲(シンフォニー)でしょう。
  日本のコンサートのプログラムでは常にメインに陣取る大曲ばかりです。
  クラシック鑑賞は、交響曲に始まり交響曲に終わるといってもいいでしょう。 

ブラームス     ・ブルックナー     ・プロコフィエフ


交響曲編T(サン=サーンス〜シューベルト)へ     ・交響曲編U(シューマン〜チャイコフスキー)へ

交響曲編V(ドヴォルザーク〜フランク)へ     ・交響曲編X(ベルリオーズ〜ベートーヴェン<運命>)へ

交響曲編Y(ベートーヴェン<田園>〜<合唱>)へ     ・交響曲編Y(マーラー〜メンデルスゾーン)へ

      ・交響曲編[(モーツァルト〜ラフマニノフ)へ



   
☆ブラームス
交響曲第1番  ★★  最新更新2014年7月
 
  ブラームスの芸風は、その渋い旋律とロマンティシズムにある。彼は4つの交響曲を書きました。後に
 なるほど音楽は深刻で、暗さを帯びてくるのですが、いずれも名作。
 とりわけ、この「ブラ1」はブラームスの交響曲の中でも最もポピュラーな作品でファンも多い作品で
 す。慎重なブラームスは、構想に20年もかけてこの交響曲を作曲しました。
 ブラ1は彼独特の暗さがあまりなく、ベートーヴェンに次ぐ「第10交響曲」とまで言われているよう
 に(第4楽章に、ベートーヴェンの「第九」の「歓喜の歌」のテーマを、ブラームスが意図的に引用し
 た部分があります)、情熱とロマンティシズムに満ちた傑作。第4楽章のフィナーレはベートーヴェン
 のように勝利の曲となります。
 ブラームスの交響曲入門用としては、このブラ1かブラ4と言われています。
 「のだめカンタービレ」にも登場。

第1楽章(カラヤン指揮)
 ☆推薦盤☆        ◎ミュンシュ/パリ管弦楽団(68)(ワ−ナー)          SS    ▲カラヤン/ベルリン・フィル(87)(グラモフォン)      A    ・バーンスタイン/ウィーン・フィル(81)(グラモフォン)   B    ○カラヤン/ベルリン・フィル(87)(グラモフォン) 全集   A    ブラ1とベルリオーズの「幻想交響曲」だけはミュンシュの演奏が断然にトップ。    近年、音質の改善のおかげなのか、ますます評価を挙げています。    ブラ1においてもその雄大なスケールといざという時の迫力、情熱が素晴らしい。ティンパニ    の強打も非常に効果的で、しかも楽章によっては憂いを帯びた弦の表情も素晴らしいです。    また、フィナーレは最高にドラマティックで、ブラ1はこれ1枚あれば充分という、古くから    の愛好者も多い不滅の名盤。HQCDもいかが?専用プレイヤーのみのSACDもあります。    それに続くのはカラヤン盤。ベルリン・フィルの機能を活かしきっており、オケの厚みはミュ    ンシュ盤以上。ロマンティックな歌わせ方はミュンシュ盤にも匹敵するのでは。    バーンスタイン盤の評価は2枚に比べるとかなり落ちます。雄弁さが持ち味の彼だけに相性は    いいのですが、ファン向けのCDといったところでしょうか。    最後のカラヤンのブラームス交響曲全集は、A評価の第1番、第2番、第3番が入っているに    もかかわらず、何と2500円というお安さ。第4番は残念ながら無評価ですが、2枚で計3    600円をかけて第1番から第3番までを揃えるのならば、明らかにお得な全集です。
交響曲第2番  ★★★  2012年5月更新
 
  「ブラ1」に次ぐこの「ブラ2」はまだそれほどブラームス特有の暗さが出てはいない作品。
 ブラームスの交響曲をすべて聴こうという方は、おそらくこのブラ2を最後に聴くことになるのでは。
 ブラームスの交響曲4作品の中では、「隠れた名作」的な作品。ブラームスが好きな私個人的にも、他
 の3つの交響曲よりはどうしても地味な印象で、やはり4作品のうち最後に聴くのがお薦め。
 構想に20年を費やした「ブラ1」とは対称的に、わずか3ヶ月で書き上げた作品。
 この作品は「ブラームスの田園交響曲」と呼ばれるように、明るく牧歌的な雰囲気を持ち、かつブラー
 ムスチックな甘美な旋律も随所にみられる。第1楽章のチェロが奏でる哀愁に満ちた旋律を是非リンク
 からお聴き下さい。私のようなブラームスファンにとってはたまらない旋律。
 第1楽章は牧歌的かつ詠嘆的な曲で、まさにブラームス的な魅力満載。第2楽章はブラームスの内面を
 吐露するかのような曲で、中間部でのヴァイオリンの痛ましいほどの響きが印象的。
 第3楽章はいかにも牧歌的な曲で、この楽章が「田園交響曲」と呼ばれるゆえんなのだろうか。
 第4楽章は「ブラ1」と同様、情熱的なフィナーレ。
 ブラームスの交響曲4作品の中では最も明るく、美しい自然の中で書いたと言われる作品。
 ちなみに、「田園交響曲」と呼ばれてはいるが、ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」のように、田
 園の風景を描写するような場面はありません。

第1楽章(ハーディング指揮2008)
 ☆推薦盤☆  ▲アバド/ベルリン・フィル(88)(グラモフォン)         S  ○カラヤン/ベルリン・フィル(86)(グラモフォン)        A  ・ベーム/ウィーン・フィル(75)(グラモフォン)         B  △ヴァント/北ドイツ放送交響楽団(96)(RCA)  全集     A  ◎カラヤン/ベルリン・フィル(86)(グラモフォン) 全集     Aかなり売れてます!      A評価のCDがズラリと並んだ状況だったが、ここにきてアバド盤が抜け出した。    このCDは元々外国レーベルのCDで、輸入盤しかなかったのだが、2011年にようやく国    内盤が発売された。しかもSHM−CD。アバドの音楽性が存分に活きた格調高いブラームス。    流麗なことこの上なく、純音楽的な名演。    カラヤンはブラ1も得意なので、ベルリン・フィルとのハイクオリティのブラームスを堪能で    きる。旋律の歌いは抜群。かつ力強い演奏。その分、若々しい演奏だけに、詠嘆的な要素には    乏しいか。なお、カラヤンのブラ2の録音は他にもあるので、ベルリン・フィルとの86年盤    ということでお間違えのないようにお気をつけ下さい。同じく名演の、ブラ3とのカップリン    グで1枚という点は、非常にありがたい。お買い得。とはいえ、一番下の全集の方が更にお得。    ヴァント盤は、ブラ2だけの分売は元々なかったのだが、ついに廃盤にまで至ってしまった。    推薦盤の下から2番目は国内盤の全集で、今お薦めできるのはこの全集のみ。    ブラ2の演奏自体ならばお薦め度◎にしたいのだが、全集だけというのはあまりに痛い。    簡単に特徴を書くと、派手さを排除した、ドイツの巨匠ヴァントならではの、渋いブラ2。    愁いを帯び、詠嘆に満ち、味わい深さでは、アバド、カラヤンよりも上。聴くほどに魅力を増    す、最もブラームス的な演奏なのでは。    ベーム盤はベーム&ウィーン・フィルのコンビの最盛期のブラームスで、何より両者一体とな    った格調の高さと、気品のある音色が素晴らしい。淡いブラームス。  
交響曲第3番  ★★★  最新更新2014年7月
 
  「ブラ3」はブラームスの交響曲4作品の中では後期にあたるだけに、彼独特の「暗さ」が出始めてい
 る作品。ロマンティシズムに溢れ、哀愁を帯びた名作です。
 確かに「ブラ1」はベート−ヴェンのように情熱的な作品であるために、ブラームスの交響曲の中でも
 一際ポピュラーなのはうなずけます。暗い曲がお好きでない方にとってはなおさらでしょう。
 けれども、私のようなブラームスファンは、暗いながらも哀愁のたっぷりとこもった彼の作品だからこ
 そ好んで聴くのではないでしょうか。そこがブラームスの音楽の最大の魅力なのでは。
 彼の深い味わいを求めるファンは、むしろ「ブラ4」とこの「ブラ3」を好む傾向にあります。
 第3楽章はこの楽曲を象徴するかのような甘美な曲。殊更に哀しく美しいのです。

 
第1楽章     第3楽章(フルトヴェングラー指揮)
 ☆推薦盤☆  ▲カラヤン/ベルリン・フィル(88)(グラモフォン)         A  △ヴァント/北ドイツ放送交響楽団(95)(RCA)          A  ☆○フルトヴェングラー/ベルリン・フィル(49)(EMI)      A  ・ヴァント/北ドイツ放送交響楽団(95)(RCA)  全集      A  ◎カラヤン/ベルリン・フィル(88)(グラモフォン) 全集      Aかなり売れてます!       ブラ3にはこれというCDがありませんが、その中でカラヤン盤とヴァント盤が一歩抜け出し    ています。    カップリング、演奏そのものや録音の質等を考えると、本当にどれも甲乙つけがたいです。    ヴァント盤は待望の分売がされました。ブラ3の演奏自体はカラヤン盤よりもこちらをとりた    いのですが、カップリングのブラ2もA評価のカラヤン盤の方がお得となるでしょう。    第1楽章のぶ厚さはさすがにベルリン・フィルの機能を活かしきっていますし、第3楽章の哀    愁に満ちたロマンティシズムの表現も良好。第4楽章の迫力も素晴らしいです。ただ、ここに    ご紹介している他の演奏に比べれば、やや表面的な演奏に感じられないこともないかも。    もちろん、第一のお薦めは4楽曲で2000円強のお得な全集の方です。。    ヴァント盤は、いかにも彼らしい、巨匠風、ドイツ風のブラームス。ブラ2同様、効果を狙わ    ず、哀愁に満ち、頑固なまでに詠嘆的なスタイルの演奏です。その意味では第4楽章など若々    しさやダイナミズムはないかもしれませんが、ブラームスの深い味わいを醸し出しており、カ    ラヤンの、ややもすると勢いに任せた様な演奏を嫌う方は絶対にこちらでしょう。    全集は今廃盤中のようです。    フルトヴェングラー盤は、彼の持ち味が存分に発揮された凄演で、今でも堂々のA評価に値す    る歴史的名盤です。音質は悪いですが、内容主義の演奏で、戦慄がほとばしり、猛烈なダイナ    ミズムやうねりと共に迫りくる音楽の畏ろしさ、ヴァイオリンの痛ましいまでの悲痛な叫び。    全くもって芸術的なスケールは巨大としか言い様がなく、この作品を愛する方には必聴の名盤    で、フルトヴェングラーのベスト演奏の一つとも言われているほどなのです。    音質は元々古いですが、再発売によって、やや音が鮮明になり、拡がりもあり、若干良化され    ているので、それほど鑑賞に差支えはないと思われます(初心者の方にはどうでしょうか)。    第3楽章は素晴らしいです。ポルタメントを駆使して弦の表情は常にロマンティシズムの雰囲    気を漂わせながら、音符を1つ1つかみしめながら進行していくかのよう。ぜひ上のリンクから    お聴き下さい。    真価が発揮されているのは第4楽章。これほどまでに劇的な解釈があったのかと、新たな発見    すらあり、さすがはフルトヴェングラーと、有無を言わさず納得させられてしまいます。    これが歴史的名盤の神髄というものなのでしょうか。彼は全く個人的な解釈をする指揮者では    ありますが、ドイツの伝統的な演奏法の継承者でもあります。こういった精神性重視のブラー    ムスは、いつのまにかどこかへ忘れ去られていってしまったのでしょうか。    本音はお薦め度★にしたいのだが、音質とカップリングなどを考えると、初〜中級者の方には    そこまでお薦めしづらいところがツラいですね。。下のリンクは「ブラ2」とカップリングさ    れたハイブリッドSACD。正直、どのくらい音質が良くなっているかは分かりませんが、S    ACD互換機をお持ちの方にはこちらの方がお薦めです。  
交響曲第4番  ★★★  最新更新2014年7月

  数ある交響曲の中でも、人気はトップクラスの交響曲。ブラームス特有の暗さに満ちている作品ですが、
 チャイコフスキーの「悲愴」のように深刻な暗さはなく、哀愁の込められた甘美な旋律とロマンティシ
 ズムに溢れたブラームスの代表作です。ぜひ下のリンクからお聴き下さい。
 特に、第1楽章の冒頭からの哀感に満ちたヴァイオリンによる第1主題と、チェロによる第2主題は、
 ブラームスファンならずとも惹かれるものがあるのでは。
 ブラ1よりもブラームスらしい作品で、彼の交響曲を聴き始める方は、まずこの「ブラ4」から聴き始
 めるのもお薦めです。
 古くからトスカニーニムラヴィンスキーなど往年の大指揮者達も揃って録音している有名曲であるた
 め、録音の数は相当数になるはずです。

第1楽章(「晩年の」クライバー指揮)
 ☆推薦盤☆  ◎カルロス・クライバー/ウィーン・フィル(80)(グラモフォン) SSかなり売れてます!   ☆○フルトヴェングラー/ベルリン・フィル(48)(EMI)     A   ・ワルター/コロンビア交響楽団(59)(SONY)         A  B2△ワルター/コロンビア交響楽団(59)(SONY)         A    無難にいけば、万人向けなのはクライバー盤。音楽は常に緊張感を保ち、かつ流麗であり、ク    ライバーの天才的な音楽性が満喫できる。深刻になり過ぎず、かといってブラームスの味わい    にも欠けていない絶妙なバランスの演奏。格調も高い。第1楽章に漂う哀愁、第2楽章、第4    楽章での、ブラームス風のナイーブな表現も抜群。最も完成度の高い演奏、いや、完璧に近い    演奏とも言えるかもしれない。クライバーの代表盤の1枚で、人気抜群のCDです。    フルトヴェングラー盤は彼ならではの主観的な演奏で、第1楽章冒頭の1音目から、既に彼の    伝家の宝刀、デフォルメが炸裂している。特に第1楽章、第4楽章に見られる尋常でない興奮    度は、もはやブラームスという音楽を越えて芸術性満点。絶えず音楽からいのちが噴き出して    います。ここまでの領域に達すると、フルトヴェングラーだけが創りうる世界で、クライバー    だけでなく、誰もかなわないでしょう。極めて人間的でドラマチック。これぞフルトヴェング    ラー、これぞ歴史的名盤の神髄と、まさに頭が下がる思い。48年という録音が、かえって凄    みを助長させているかのように聴こえますが、鑑賞用としてはギリギリの音質でしょうか。    下のリンクはハイブリッドSACD。お好みでどうぞ。    この二つの演奏は、スタイルが違うので甲乙つけがたいです。初めて聴く方には無難にクライ    バー盤をお薦めしたいですが、ぜひ両方聴いて頂きたいものですね。    ワルター盤は陰鬱な表現のない演奏なので、凄みはないし、ブラームス的でないと嫌う方がい    るかもしれません。ブラームスの暗さが苦手な方にはお薦めの、詠嘆に満ちた純音楽的な名演    というスタイルです。お薦めはもちろんBSCD2盤の方です。
☆ブルックナー
交響曲第4番「ロマンティック」  ★★★★  最新更新日 2013年1月

 ブルックナーの交響曲の中では、第7番あたりと並んで、最も親しみやすいのが、この第4番とされて
 います。しかし!ブルックナーの音楽を聴いたことのない方が注意しなければならないのは、この交響
 曲もブルックナーの音楽には変わりはないということです。「ロマンティック」という副題は作曲者が
 つけたもので、作曲されたのもロマン派の時代となれば、いかにも勘違いをしてしまうでしょうが、ブ
 ルックナーの交響曲は、ベートーヴェンブラームスらの交響曲とは全く違う。音楽そのものが違う。
 よって、「ロマンティック」という名前につられて興味半分でこの曲を聴いてしまったら、訳がわから
 なくなってしまうこと必至。上級者の方でも苦痛にしか感じないかもしれません。
 この曲は、確かにブルックナーの交響曲の入門用にいいとは思いますが、今までのロマン派の交響曲と
 いう概念を捨てて、「ブルックナー」の交響曲とはどういうものかを知ろうという覚悟で聴く必要があ
 ります。作曲者自身が、この曲は中世の騎士が狩に出かけ、大自然に触れることをイメージして聴くの
 が良いと言っているだけに、初めて彼の交響曲を聴く方は、ぜひこのイメージを大切に、ブルックナー
 の音楽というものがどういうものなのかを理解して頂ければと思います。この曲を聴いて、ブルックナ
 ーの交響曲に興味を感じたら、次は第8番か第9番でブルックナーの核心に触れて頂きたいです。
 また、すでにブルックナーの交響曲に慣れている方、ブルックナー上級者の方にとっても、第4楽章の
 壮麗な音楽はブルックナーそのもの。さすがに第8番、第9番ほどの深みには乏しいですが、充分ブル
 ックナーの魅力を堪能できる逸品。

全楽章(何とヴァント指揮!!)
 ☆推薦盤☆   ・ヴァント/ベルリン・フィル(98)(RCA)               SS  B2★◎ヴァント/ベルリン・フィル(98)(RCA)              SS  ○アバド/ウィーン・フィル(90)(グラモフォン)              A   ▲ベーム/ウィーン・フィル(73)(デッカ)                 A  ・ベーム/ウィーン・フィル(73)(デッカ)                 A   △ハイティンク/ウィーン・フィル(85)(フィリップス)           A       ブルックナーの交響曲と言ったら、ヴァントの演奏でお決まりというのが、クラシック界の定    説となっていると言ってもいいくらい、彼が最晩年にベルリン・フィルと録音したブルックナ    ーの交響曲は、いずれも各交響曲のベスト1級の評価を得ています。これにより、ヴァントは    クラシックの歴史上最高のブルックナー指揮者としての名を不動のものとしました。    この第4番でも堂々のSS評価。細部の繊細さから強音部分までのバランスは、絶妙の一言で、    90歳を目の前にしたヴァントの神業に頭が下がる思い。当然第一に、いや、唯一のお薦めと    言いたいくらい。お薦めCDは、上から二番目のBSCD2の方です。    しかし、古くからのブルックナーファンの方は、緻密すぎるヴァントの音楽の構築に抵抗があ    るかもしれません。そういう方のためにはA評価の3枚がいいのでしょうか。    アバド盤は、イタリア生まれのアバドらしく、ドイツ的というよりはイタリア的なアプローチ。    彼の音楽性が活き、みずみずしく、透明感のある響きで純音楽的に美しい演奏。    ベームはどちらかというと緻密な、重厚な演奏スタイルの指揮者だけにどうでしょう。それな    らば、ハイティンク盤をお薦めしたいのですが、旧フィリップス音源のため、1000円のは    ずが3倍のお値段になってしまいました。輸入盤もありません。 
交響曲第5番  ★★★★★  最新更新2014年8月

 ブルックナーの音楽は特殊である。とても初心者の方が聴く音楽でないし、かといってよほどのクラシ
 ック上級者でも、相性が合わないと駄目。たとえ相性があったとしても、本質を理解していないといず
 れ飽きてしまう。「ブルックナーの音楽の本質」については、このページに紹介してある第8番の方を
 お読み下さい。ブルックナーの本質を理解するには、第8番と第9番が解りやすいと言われている。
 この第5番は、ブルックナーの九つの交響曲の中期にあたる作品であるが、とにかく難しい音楽で、ブ
 ルックナーを初めて聴く方がこの曲から聴きはじめたら、まず挫折するでしょう。挫折するどころか、
 ブルックナー自体、いや、最悪、クラシック音楽をも嫌いになってしまう可能性もある。その点にはく
 れぐれもご注意下さい。ブルックナーをとにかく聴き込んだ方のみが、この曲を聴く権利を与えられる
 ようなもので、聴き込んだ方でさえ、この「ブル5」を理解するのには時間がかかるだろう。
 いつかこの曲が理解できたのならば、第8番、第9番のように無上の感動を得ることができるはず。
 そこまでいけば、めでたくブルックナーは卒業。

第4楽章「フィナーレ」(何とヴァント指揮!)
 ☆推薦盤☆ S○★◎ヴァント/ベルリン・フィル(96)(RCA)                 SS   ・ヴァント/ベルリン・フィル(96)(RCA)                  SS   ○ヨッフム/アムステルダム・コンセルト・ヘボウ(64)(フィリップス) 再発売待ち A   ・ヨッフム/アムステルダム・コンセルト・ヘボウ(64)(デッカ)          A   ▲ヨッフム/ドレスデン国立管弦楽団(80)(EMI)                 B   ▲クナッパーツブッシュ/ウィーン・フィル(56)(デッカ)             B       ヴァント盤は、このCDによってヴァントがクラシックの歴史上世界一と言ってもよいブルッ    クナー指揮者として君臨するに至ったきっかけのCDでもあります。その後ブルックナーの録    音をするごとにブルックナー指揮者としての評価を高めていったので、当面このCDを超える    演奏は出て来そうにありません。超えうるとすれば、ヴァント以上の新たなる歴史的ブルック    ナー指揮者による演奏でしょう。96年の録音ですが、既に歴史的名盤と言ってもいいほど。    国内盤は在庫がないようなので、SACDと輸入盤へのリンクを作っておきました。    しかし、ヴァントの緻密な表現を好まないブルックナーファンもいらっしゃるはず。そういう    方にはヨッフム盤がお薦め。ヴァント盤が出る前はブル5のベストCDであったので、既に名    盤という評価は確立されています。ヴァント盤に比べて軽快な印象で、開放感があります。    ところが、なんとこの名盤が長らく廃盤中。旧フィリップスの音源なので、近いうちに再発売    される可能性に期待し、ジャケットだけでもと思い、リンクは残しておきました。    その下のリンクは、ようやく再発売がされたと思われるものですが、100%音源が同じ確証    は得られておりません。おそらく間違いはないでしょうが…。    また、AよりのB評価である新盤へのリンクを作っておきましたが、現在廃盤中です。    クナッパーツブッシュ盤は、評価はB評価ですが、ブルックナー的なスケールの大きさでは誰    もかなわない巨大な演奏です。
交響曲第7番  ★★★★  最新更新日 2013年1月

 ブルックナーの交響曲は9曲ありますが、第7番、8番、9番は後期の3曲と称されます。第8番、第
 9番がブルックナーの音楽の核心ですが、第7番は、第4番「ロマンティック」と共に、その2曲より
 もとっつきやすく、演奏頻度も高いです。
 ブルックナーの交響曲を聴くには、まずは第8番から入って頂くのが私はベストだと思いますが、第7
 番の第2楽章は名作で、ブルックナーにあまり親しんでいない方も聴けると思います。この曲は作曲者
 が、かのワーグナーの死の予感のうちに書かれた葬送行進曲ですが、もちろんベートーヴェンの「英雄」
 の第2楽章などとは違い、至って宗教的なブルックナーの世界。非常に荘厳、美しい祈りに満ちた曲な
 ので、この楽章を聴いて少しでもブルックナーの音楽に共感できた方は、是非とも第8番を聴きこんで
 頂きたいですね。
 既に第8番、第9番を聴きこんだ方には、フィナーレ(第4楽章)が今一つ物足りない分、やはり聴き
 所は第2楽章なのでは。

第2楽章(ヨッフム指揮)
 ☆推薦盤☆   ○ヴァント/ベルリン・フィル(99)(RCA)             SS  B2★◎ヴァント/ベルリン・フィル(99)(RCA)            SS  ▲カラヤン/ウィーン・フィル(89)(グラモフォン)           A    ヴァント&ベルリン・フィルの一連のブルックナーの録音は、ほぼすべての曲においてベスト    の評価を受けていますが、特にこの第7番の演奏が最高傑作という人は少なくありません。    彼の、神経質で緻密なスタイルは、第5番のように巨大なスケールを持つ曲では、時に息苦し    ささえ感じさせてしまうきらいがあるのですが、この第7番のような曲には相性がピタリと合    っており、神業という他ないでしょう。特に第2楽章の深い瞑想と祈りに満ちた表現は特筆す    べきだと個人的にも思います。お薦めはもちろんBlu-spec CD2盤の方です。    カラヤン盤は、さすがにウィーン・フィルだけあって、第2楽章の崇高な美しさは素晴らしい。    ただ、少し表面的な美しさに聴こえてしまうだけに、この曲はやはりヴァント盤が決定盤。
交響曲第8番  ★★★★★  最新更新2014年7月

 交響曲だけでなく、あらゆる音楽作品の中でも最高傑作の一つとの誉れが高い作品。私自身も交響曲の
 中でベートーヴェンの「第九」を抜き、ベストの作品だと思い
 ます。しかし、ブルックナーの交響曲は、初心者の方には分かりにくいです。真価が分からないと、こ
 れといった旋律もなく、非常に長いので、ただの苦痛になってしまうでしょう。そうなるとクラシック
 音楽自体が嫌いになる恐れがあるので、初心者の方は手を出してはいけません!私も初めの頃はブルッ
 クナーが全く分かりませんでした。これが何で交響曲の中で最高傑作の一つなのか、不思議で仕方あり
 ませんでした。しかしある日、突然その真価が分かり、以来ブルックナーの愛好家になってしまったの
 です。
 上級者向けでしょうが、さすがの上級者でも初めは退屈で仕方ないと思います。しかし、ブルックナー
 を愛するファンは誰もが通って来た道なので、いつかその魅力が分かるはず。あまりにも勿体無い話な
 ので、食わず嫌いだけはやめてほしいのです。それでも、どうもダメという方はブルックナーとは無縁
 でしょう。誰にでも共感できる音楽ではないので、それ以上聴くのは苦痛でしかないでしょう。
 ブルックナーの交響曲で一般的に最もポピュラーなのは第4番「ロマンティック」ですが、むしろそち
 らの方が分かりにくく、この「ブル8」から入るべきだと思っています。
 ブルックナーの交響曲は、作曲者の言いたいことが分かりづらいので難しいです。それに、後述するよ
 うにブルックナーと相性のいい指揮者の演奏に巡り合ってないのも原因なのでは。
 ブルックナーの本質は、悠久な大自然と、限りある生命の明滅、時には人間業を超える自然の怖ろしさ、
 そして大自然、大宇宙、生命を創造した神に対する崇高な祈りと畏敬の念。これらが音楽から感じ取れ
 ればブルックナーが解るようになるでしょう。一貫して、人間世界とかけ離れているのがブルックナー
 の音楽。
 「ブル8」の第3楽章は言語を絶する音楽美を伴って陶酔的な音楽で、大自然の崇高な美しさに身を浸
 ことができます。始めのハープが奏でる部分は、清らかな川の流れ。これだけ陶酔的な音楽は他に例が
 ないでしょう。第4楽章のフィナーレもブルックナーの魅力満点で、印象的な冒頭からしてまさにブル
 ックナーの世界。この冒頭は再現部で繰り返されますが、この部分だけでも頭に残るようになれば「ブ
 ル8」への理解はぐっと深まるはず。そしてクライマックスではアルプスの威容が眼前に立ちはだかる。
 これら第3、第4楽章が「ブル8」の核心なので、初めて聴く方はこの2つの楽章だけでよいのでは。
 なお、ブルックナーの音楽には人間のドラマは存在しないため、その点を理解している相性のいい指揮
 者でないと、とたんに音楽が壊れてしまう。作為的な演出をした途端大自然の音楽で無くなってしまう。
 詳しくは「名作曲家列伝」のブルックナーの項を御覧下さい。

    第3楽章(ヨッフム指揮途中まで)
第4楽章(何と最晩年のヴァント指揮最終部分) 第4楽章(クナッパーツブッシュ指揮)
 ☆推薦盤☆    ・ヴァント/ベルリン・フィル(01)(RCA)            S↑SS売れてます!   B2★◎ヴァント/ベルリン・フィル(01)(RCA)           S↑SS    ・ヴァント/ミュンヘン・フィル(00)(キングレコード)         ?    ▲シューリヒト/ウィーン・フィル(63)(ワ−ナー)            A    ×カラヤン/ウィーン・フィル(88)(グラモフォン)         S↓×    ×フルトヴェングラー/ベルリン・フィル(49)(グラモフォン)    S↓×    ☆クナッパーツブッシュ/ミュンヘン・フィル(63)(ウェストミンスター) B    まず真っ先に推薦したいのは、ヴァントの新盤です。    テンポ設定、弦の表情、金管の素朴さなどが練れ切っていて、ベルリン・フィルの機能もあい    まって、最も完璧に近い演奏なのでは。    ヴァントは93年の旧盤では彼独特の緻密さが目立って息苦しい面もありましたが、この演奏    では見事に吹っ切れている。90歳を目の前にしたヴァントの進化に頭が下がるばかり。ヴァ    ントのブルックナーとしては珍しく断然のSS評価ではありませんが、私は最も完璧に近いと    思っているので、迷うことなくSS評価にしました。ブル8の演奏に必要な素朴さ、ダイナミ    ックさ、スケール、寂寥感などの要素をすべて兼ね備えている神業的演奏なのでは。    RCAのヴァント&ベルリン・フィルのブルックナーのCDとしては最後に録音されたもので、    彼の最後の大仕事となりました。彼が残してくれた遺産。お薦めはB2盤の方です。    このCDのレヴューに、何と当サイト「CLASSIC MUSEUM」に触れていただいたコメントが載    っています。こういう方が1人でも増えて頂くために私も頑張ります。    上のリンクから見れる映像は2001年のもので、永年、ドイツ音楽を追究してきた1人の音    楽家の姿がここにあります。超貴重映像。    また、その下、前年に彼がミュンヘン・フィルを振った演奏もありますが、私個人的にはイマ    一つ。やはり、ベスト盤はベルリン・フィルとのコンビという面も大きいのでしょう。    次に、シューリヒト盤を挙げておきます。    この演奏も古くから「ブル8」の名盤として語り継がれてきたものですが、シューリヒトとい    う指揮者はスケールが小さく、テンポが速いので、外面的にはブルックナーとは正反対に思え    ますが、ブルックナーの本質をつかみ切っているため、安心してブルックナーを堪能できます。    重々しさがないため、気軽さでは一番で、長い演奏に抵抗のある方向けの演奏ですが、スケー    ルの大きさではかなり物足りないかもしれません。私個人的には、スケールが小さく、雑な印    象を感じることを考慮して、お薦め度は▲にしましたが、素晴らしい演奏だとは思います。    CD1枚というのもお買い得。お薦めは、上から四番目、通常のCDです。SACDは廃盤中    のようですが、リンクは残しておきました。    ヨッフム盤は、ベストまではいかなくとも、常にこの曲の名盤に顔を出している常連です。    フィナーレなど異常な速さなので私はあまり好みませんが、その速さゆえに1枚で買えて、し    かもお安いので、この作品を愛する方なら一度は聴いてみるのもいかが。しかし、謎の廃盤中。    次に、私の主観で×評価にした2つのCDにつきまして。    カラヤン盤は本来はS評価。確かに、表面の美しさでいけば名演なのですが、肝心な寂寥感が    全く感じられません。これではブルックナーの本質は理解できないでしょう。美しささえ伝わ    ってこない演奏よりははるかにマシでしょうが、詠嘆的な要素に全く乏しいのは疑問です。    フルトヴェングラー盤は本来はAよりの評価ですが、カラヤンより更にひどいのでは。彼    は、ベートーヴェンブラームスのような人間味に溢れる曲とは抜群に相性がいいのですが、    ブルックナーもそのように演奏してしまっています。確かに他のどの演奏よりもドラマチック、    ダイナミックなので、「こういうブルックナーの演奏があるのか」という意味では開眼するか    もしれません。さすがフルトヴェングラーと頭が下がるかもしれません。けれども、ブルック    ナーの音楽は大自然、別世界の音楽であって、人間のドラマなど存在しないのだから、本質と    はズレているのではないでしょうか。そして49年という録音の悪さもマイナス。ブルックナ    ーの音楽は「響き」がいのちであって、基本中の基本の音質の良さ、弦や金管の音色の鮮明さ    がないと表面の美しささえ伝わってきません。物足りないどころか音楽を壊しています。    クナッパーツブッシュ盤は古くからこの曲の別格の演奏として名高いCD。「別格」というの    は、クラシックの演奏においては、他の演奏と比較が困難なほど個性的な演奏を称する時によ    く使われます。この演奏が「別格」というのは、ブルックナー演奏においてデフォルメ    はタブーなため、さすがの「デフォルメの鬼」クナも極力客観的になるよう努めてはいるもの    の、彼が何もしないでいられるはずがなく、やはり所々にデフォルメがあります。特に第3楽    章のスローテンポなどは、人によっては強い違和感を感じるかもしれません。そこが作為的な    デフォルメになってしまうとブルックナーの音楽はおしまいなのですが、いずれもギリギリの    ところで収まっており、音楽を壊すまでには至っていません。デフォルメというよりは「誇張」    だと私は解釈します。古くから名高い演奏ながら、大衆向きでないということで専門家の評価    ではB評価が妥当なところなのですが、聴くたびに新たな発見がある演奏ですし、フィナーレ    の最後の最強音はさすが巨人指揮者クナと言わんばかりの宇宙的大爆発。    これらの「誇張」を私は曲の魅力を増大させているととりたいのです。クナのような超個性的    な指揮者には賛否がつきものなのですが、「ブル8」は彼には貴重なステレオ録音であるし、    この曲に必要なスケールの大きさは疑いようもないので、ご紹介しておきます。    この作品を聴き込んだ方は上のリンクから視聴されるのはいかがでしょうか。       なお、このCDには何と同日のライヴ録音もあります。レーベルが違うのでお気をつけ下さい。    以上、評論家にさえ喧嘩を売るような主観的な評価になってしまいましたが、この曲を愛する    が故のわがままだとお許し下さい。
交響曲第9番  ★★★★★  最新更新日 2013年1月

 第3楽章まで作曲したところでブルックナーが他界してしまったので、3楽章しかありません。しかし、
 内容は非常に深く、「ブル8」と共にブルックナーの魅力満載の作品です。
  3楽章しかないので当然演奏時間は短く、この曲を聴き始める方にはありがたいけれども、「ブル8」
 に比べて宗教的要素があるので、やはりブルックナー入門は「ブル8」からが良いと思います。
 「ブル9」の第1楽章は「ブル8」に比べて素晴らしい。第3楽章のアダージョは奥が深すぎて難しい
 ため、「ブル9」の中では第1楽章が一番聴きやすく、この曲を始めて聴く方は第1楽章から入るべき
 でしょう。まずはこの楽章を何度も繰り返し聴くのがいいと思われます。ブルックナーへの理解がぐっ
 と深まるはず。
 そして第3楽章ですが、宗教的要素が強く、いよいよ神の来迎のシーンも。私のように何度でも聴いて
 いる者でも、第3楽章は実に奥が深い。ブルックナーの奥の院といった趣なので、じっくりと腰をす
 えて聴く必要があるでしょう。
 「ブル8」「ブル9」まで理解できたら、次は第4番、第5番、第7番のいずれかを聴くのがお薦め。
 CDはもちろん、ヴァント&ベルリン・フィル盤で決まり(!?)。

第1楽章途中まで(何とヴァント&ベルリン・フィルの再UP超貴重映像!!)
全楽章(シューリヒト指揮)
 ☆推薦盤☆    ◎ヴァント/ベルリン・フィル(98)(RCA)            SS  S○・ヴァント/ベルリン・フィル(98)(RCA)            SS     ☆○シューリヒト/ウィーン・フィル(61)(ワ−ナー)        S   ☆シューリヒト/ウィーン・フィル(61)(EMI)           S  S○☆シューリヒト/ウィーン・フィル(61)(EMI)           S    ・ジュリーニ/ウィーン・フィル(88)(グラモフォン)         B        「ブル9」のCDはヴァント盤とシューリヒト盤が決定的な名盤。しかし、私はヴァント盤に    軍配を挙げたい。専門家の評価もヴァント盤がベスト。    「ブル8」と違い、曲が宗教的要素を持っているだけに、ここはヴァントの独壇場。彼は緻密    な音楽を創り出しますが、それが曲の相性と絡んで、独特のヴァントの世界を形成しています。    神のお告げ、神への祈りを聴く演奏と言ってもいいほど。    2番目にはハイブリッドSACDへのリンクを載せておきました。    正直お高いですが、普通のCDプレイヤーでも再生可能です。なお、1000円以下の輸入盤    もありますが、どうも音質等において問題があるようです。ご注意下さい。    「ブル9」は、「ブル8」のヴァントの新盤と違い、彼の緻密さが前面に出ているため、開放    感がなく、息が詰まるようで嫌う方もいるかもしれません。そういう方に真っ先にお薦めした    いのがシューリヒト盤。4枚ありますが、お薦めは通常音質のCDです。    シューリヒト盤は古くから「ブル9」の決定盤として君臨してきました。確かに彼は曲の本質    をワシづかみにしていて、楽器の素朴な音色はブルックナーそのもの。全体的にテンポは速め    なので、初めてこの曲を聴く方はこの演奏から入るのもお薦めです。しかし、ブルックナーを    聴きこんだ方には、イマイチスケールの雄大さに欠ける点が淡白に聴こえるかもしれません。    それがシューリヒト盤の唯一とも言っていい欠点。HQCDならば、拡がりが感じられるかも。    SACDも含めて4種類のCDへのリンクをはっておきましたが、お好みで。    3番目にはジュリーニ盤を選びましたが、第1楽章は極端なスローテンポで、極大なスケール    を生み出しています。異常なほどの遅さ。しかし、宗教的要素に乏しいため、この曲の入門用    にはいいでしょうが、聴き込んだ方にとっては物足りなく感じられるかもしれません。    いえ、それ以上に、本来1000円のはずが、廃盤直前ということで異常にお高くなっていま    す。今は買い時ではありません。    やはりヴァント盤が第一のお薦めです。
☆プロコフィエフ
交響曲第1番「古典交響曲」  ★★  2011年3月更新

 プロコフィエフという作曲家は1953年没の20世紀のロシアの作曲家。交響曲というよりは、協奏
 曲や管弦楽曲で、CDやコンサートのプログラムなどでたまに見かける名前。
 よって、初心者の方はプロコフィエフの曲を進んで聴こうとは思われないのではないでしょうか。彼よ
 りももっと有名な作曲家は山ほどいるし、有名な交響曲も山ほどあるので、それも当然。私個人的にも、
 かなりクラシックを聴き込むまで、この作曲家の曲を聴こうという気すら起きなかった。
 しかし、彼の交響曲の中で最も有名なこの「交響曲第1番」は、初心者の方にこそ是非お薦めしたい曲。
 というのは、何と、長い楽章でもせいぜい4分少々、音楽自体も、大変優雅で、まるでバレエ曲のよう
 で、美しい旋律に耳を傾けていると、あっという間に1つの楽章が終わってしまう。つまり、とても聴
 きやすく、親しみやすい作品。
 私も初めてこの作品を聴いてみて、「こんなに初心者向けの交響曲がまだあったのか」と驚いた。
 副題の「古典交響曲」というのは、ハイドンの形式、つまり古典派の交響曲様式に基づいて作曲したと
 いう意味で、この交響曲が作曲されたのは1917年、ロシア革命の起きた年なのだが、現代における
 古典様式の交響曲を作ろうという意図によるもの。確かにハイドン並みに短く、聴きやすい。
 しかし、クラシック上級者の方にはどうだろう。旋律が優雅なので当然一度は聴いて頂きたい曲ではあ
 るが、ロマン派の交響曲ように深みのある交響曲ではないので、飽きがきやすいかも。

第1楽章
 ☆推薦盤☆  ★◎デュトワ/モントリオール交響楽団(88)(デッカ)      SS  ○ゲルギエフ/ロンドン交響楽団(04)(デッカ)          A  ▲プレヴィン/ロスアンジェルス・フィル(86)(フィリップス)   A  △アバド/ヨーロッパ室内管弦楽団(86)(グラモフォン)      B      デュトワ盤がまさにダントツのSS評価。2番手でさえA評価なのだから、いかに飛びぬけて    いるかが分かる。ましてやカップリングは交響曲第5番、しかも両方とも80年代後半の録音    となれば、多少お値段が高い以外に文句のつけようがない。絶対的な1枚。    しかし、謎の廃盤中のまま。輸入盤も探したものの、音源が同じか、さだかではありません。    ゲルギエフ盤はデッカレーベルからすぐに再発売されたもの。ダントツのデュトワ盤の再発売    を待つのが得策かと思われますが、待てない方は、S評価に近いこのCDでもOKなのでは。    プレヴィン盤はデュトワ盤と同じくカップリングは第5番。デュトワ盤よりは少し安い。    しかし、こちらも、旧フィリップスの音源なので、当面は廃盤のままでしょう。    アバド盤は、2枚組なのに1500円とお安いシリーズのもの。プロコフィエフの他の作品も    聴けるが、特筆すべきは、超SS評価の、アルゲリッチとのコンビによる同作曲家のピアノ協    奏曲第3番が入っていること。その意味ではこのCDのお薦め度もかなり高い。       ということで、入手可能なのは、この作品に限ればゲルギエフ盤、CDとしてはアバドしかな    くなってしまった。同じくB評価程度のCDをあたってみたものの、異常に廃盤だらけ。    なぜこんなに冷遇を受けているのか謎です。


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