名曲案内〜交響曲編X〜
(ベルリオーズ〜ベートーヴェン<運命>)



    
  やはりクラシックの華といえば大編成のオーケストラによる交響曲(シンフォニー)でしょう。
  日本のコンサートのプログラムでは常にメインに陣取る大曲ばかりです。
  クラシック鑑賞は、交響曲に始まり交響曲に終わるといってもいいでしょう。

ベルリオーズ     ・ベートーヴェン


交響曲編T(サン=サーンス〜シューベルト)へ     ・交響曲編U(シューマン〜チャイコフスキー)へ

交響曲編V(ドヴォルザーク〜フランク)へ     ・交響曲編W(ブラームス〜プロコフィエフ)へ

交響曲編Y(ベートーヴェン<田園>〜<合唱>)へ      ・交響曲編Z(マーラー〜メンデルスゾーン)へ

交響曲編[(モーツァルト〜ラフマニノフ)へ




☆ベルリオーズ
幻想交響曲  ★★★  最新更新2014年7月

  ベルリオーズという作曲家は、この交響曲以外に目ぼしい作品は残してないが、この作品は失恋の悲し  
 みを曲に込めたものであり、名作である。「恋を失った芸術家が自殺をはかってアヘンをのむが、クス
 リの量が少なすぎ、一連の奇怪な夢をみる」という説明がされている。病的なまでの失恋の物語なので
 ある。もちろん主人公はベルリオーズ本人で、5つの楽章から成り立っている。
 第1楽章は恋人への情熱を歌ったもの、第2楽章は彼女が他の男と踊る夢をみるもの、第3楽章は散歩
 しながら恋人の幻影をみるもの、第4楽章は夢の中で恋人を殺し、断頭台へ連行される場面、第5楽章
 は死刑の後地獄へ落とされ、地獄の悪魔たちがグロテスクな踊りをおどるもの、である。
 まことに異常な物語だが、感銘度は深い。
  ちなみに、現実には、何とベルリオーズはこの曲に登場する女性とめでたく結婚するに至った。二人の
 子供ももうけた。しかし・・・。
 幸せな生活は長続きしなかったという。「結婚の理想と現実」を考えさせられる・・・。

第1楽章(バーンスタイン指揮)
 ☆推薦盤☆  ★◎ミュンシュ/パリ管弦楽団(67)(ワ−ナー)                 SS  ○チョン・ミュンフン/パリ・バスティーユ管弦楽団(93)(グラモフォン)      A  ・ゲルギエフ/ウィーン・フィル(03)(デッカ)                  B  ・ゲルギエフ/ウィーン・フィル(03)(フィリップス)               B    「ブラ1」と並び、幻想交響曲のCDもミュンシュ盤が断然。緊張感溢れるスピードで全曲を    駆け抜けており、情熱と雄弁な描写は筆舌に尽くしがたい。これ1枚あれば他は必要ないほど。    現代楽器の演奏でもう1枚挙げるのなら、チョン・ミュンフン盤。ミュンフンは世界的ヴァイ    オリニストのチョン・キョンファの弟で、ピアニスト兼指揮者。現在は指揮業を中心とし、日    本でも精力的な活動をしている。もっと評価が高まれば、S評価も狙える程のCD。    ゲルギエフの03年盤はB評価なのでミュンシュ盤には遠く及ばないが、将来性も見込んで。    SHM−CDはフィリップスレーベルですが、音源は同じです。  
☆ベートーヴェン
交響曲第1番  ★★  最終メンテ 2012年5月

 ベートーヴェンが交響曲の作曲に取り組み、初めてこの曲を完成させたのは29歳の時。それだけ、長
 い時間をかけて構想を練ったベートーヴェンの意図が感じられる。
 この交響曲は第2番以降とは一線を画し、ハイドン古典的交響曲様式に基づいている。しかし、ハイ
 ドンがチャーミングな旋律美の交響曲を多く残したのに対し、この「第1番」は、様式こそ踏襲しては
 いるが、若さみなぎるベートーヴェンの躍進の交響曲。
 第2番とは逆に、第3番、第5番的な力強さと迫力がある曲。通称「ベト1」。

第1楽章
 ☆推薦盤☆  ◎ヴァント/北ドイツ放送交響楽団(97)(RCA)            A  ☆○トスカニーニ/NBC交響楽団(51)(RCA)            A  ☆△トスカニーニ/NBC交響楽団(51)(RCA)    2枚組     A  ▲バーンスタイン/ウィーン・フィル(78)(グラモフォン)        A  ▲バーンスタイン/ウィーン・フィル(78)(グラモフォン) 全集     A  △パーヴォ・ヤルヴィ/ドイツ・カンマー管弦楽団(06)(RCA)      A    第1番のCDにはこれというものがなく、A評価が4種並んでしまった。上から順にご紹介。    ヴァント盤は最晩年の録音でもあり、名演「第2番」とのカップリングであるところが大変魅    力的。齢90を目の前にしたヴァント。ブルックナー等には超名演を残しているが、この曲に    おいては、欲を言えばもう一つパンチ力がほしいところか。しかしそういう演奏は彼の芸風で    はないので、これはこれで名演奏だと思う。第一のお薦め。    ところが、国内盤、輸入盤共に廃盤中。彼の十八番ブルックナーでもそうなのだが、最近廃盤    が増えていて心配です。    トスカニーニ盤は歴史的名演で、こういったパンチ力が必要な曲は彼のお得意であるのだが、    如何せん録音が古い点は痛い。しかし、演奏だけをとればこれがベスト。    2枚組の方は、ベト1だけを聴きたい場合は論外だが、A評価の名演「英雄」も入った、ベト    1〜4までのカップリングを考えると、割安でかなりお薦め。    バーンスタイン盤はベートーヴェン全集からの1枚。こちらもベト1だけを聴きたい場合は再    発売されたばかりの方を。彼には「英雄」、「第九」などの第一級の演奏もあり、ステレオで    のベートーヴェンの交響曲全集としては最高の逸品の一つ。私は、1枚ものよりも、かなりお    得な輸入盤の方がお薦め。    パーヴォ・ヤルヴィ盤はこの度新しく追加した2006年の録音。カップリングの「運命」も    高評価だが、評価が定着しているとは言えないで、私のお薦め度は△としました。    演奏は、トスカニーニ的で、きびきびとしたリズム、速めのテンポの現代的スタイル。
交響曲第2番  ★★  最終メンテ 2011年3月

 CDの名前を伏せて、初めてこの曲の第1楽章を少し聴いて、作曲者を答えろと言われたら、おそらく
 モーツァルトと答える方は多いのでは。ベートーヴェンと一発で当てられる方はすごい。
 それくらい、ベートーヴェンの初期の交響曲第1番と第2番は、古典派の影響をまだ受けており、英雄、
 運命、第九などを聴いてベートーヴェンの作風を知っている方にとっては、彼の作品とは思えないとこ
 ろがある。特にこの「ベト2」は、古典派のように小さくまとまった交響曲であり、かつモーツァルテ
 ィックな旋律のチャーミングさに満ちているので、ベートーヴェンの交響曲の中でも「隠れた名作」と
 して愛好者が多い。「隠れた」というのは、ベートーヴェンの交響曲には大作が多いからである。
 いくらこの曲が聴きやすいとはいえ、ベートーヴェンの交響曲は、やはり運命を真っ先に、そして、英
 雄、田園第7番、第九をまず聴くというのが常道と言われている。これといった印象的な旋律は特に
 ないので、初心者の方は飽きてしまうかもしれない。ベートーヴェンの作品の中でも「マイナー」な作
 品で、大作の後に聴くからこそ光を放っているのだと思う。
 ちなみに、この第2番から大作の第3番「英雄」への一大発展は、ベートーヴェンが「音楽の革命児」
 と呼ばれる大きな要因ともなっている。当時、交響曲には「英雄」ほどの大作はなかったからである。
 そして、音楽史は古典派からロマン派へと進んでいく。

第1楽章(小林研一郎指揮)
   ☆推薦盤☆  ★◎ワルター/コロンビア交響楽団(59)(SONY) with 第6番  Sかなり売れてます!  ▲ワルター/コロンビア交響楽団(59)(SONY)  with 第1番  S  ○ヴァント/北ドイツ放送交響楽団(99)(RCA)         A   △アバド/ベルリン・フィル(00)(グラモフォン)         B    CDはワルター盤が圧勝状態でSS評価に近い。    ワルター、ヴァントアバドの三者はいずれも柔軟性の強い指揮者であり、逆にドラマチック    で迫力で押す曲には弱いので、この第2番は好評だが、英雄、運命、第九などではあまり評価    が芳しくない。従って、ベートーヴェンとはいえ、モーツァルティックなこの曲は、性格的に    ピッタリなのだろう。おまけに、三者ともにかなりの高齢の演奏だが、若々しい。    ワルター盤は以前から断然の評価を得てきた歴史的名盤。テンポ、豊かな表情の味付け、緩急    のバランスなどが絶品。59年の録音だが、ステレオ録音で、音質は古さを感じさせない。文    句なしのS評価。ここにリンクを貼ってある一番上のCDは、ベト2以上に超名演のSS評価    の第6番「田園」とのカップリングという、凄まじいCD。殿堂入りのCDなのです。    第1番のワルターの演奏は、特に突出した評価を得ているわけではないようなので、個人的に    は、ワルターの第2番を聴くのならばこのCDの方がお薦め。「田園」のカップリングとして    聴ける感覚で、しかもヴァント盤よりもお安いのならば文句なし。    ヴァント盤も素晴らしい。ベト1とカップリングのCDとしてはワルター盤よりもお薦め。    表現はワルターに似ている。ヴァントはスコアを読みきり、緻密な演奏をする指揮者だが、そ    の緻密さが細部の微妙なニュアンスにまで行き渡り、テンポも表情の味付けもこれまた絶品。    そして勢いづいた時のスピード感。とても90歳を目の前にした指揮者とは思えない。    しかし、現在は国内盤、輸入盤とも廃盤中。    2枚とも指揮者と曲の相性が抜群で、本当に素晴らしい演奏。    アバド盤は、B評価なのでおまけのようになってしまったが、彼ゆえのカンタービレを利かせ    た表現は、やはりこの曲と見事にマッチしている。
交響曲第3番「英雄」  ★★  最新更新2014年7月

 ベートーヴェンの交響曲の中でも「第九」に次ぐ大傑作で、あらゆる交響曲の中でも有数の傑作の一つ。
 「英雄」か「エロイカ(英雄の意味)」という。「ベト3」という言い方はしないよう。
 スケールは雄大で、大きな拡がりをもち、風格、立派さの点で素晴らしい曲なのだが、第2楽章の「葬
 送行進曲」が冗長になる点や、大曲の部類に入るので、初心者の方は気軽に聴けないのが難点。
 ベートーヴェンの交響曲といえば「運命」から入り、「第九」へと進み、この「英雄」に戻る聴き方が
 一般的と言われるが、この大曲を聴き込めるかどうかが一つの壁だと思う。それがクリアできれば、残
 りのベートーヴェンの交響曲はおろか、他の作曲家の交響曲もかなり多く聴き込めるはず。
 ベートーヴェンは初めこの曲を「英雄」ナポレオンに捧げようとしたが、ナポレオンがフランス皇帝に
 就いてしまうと烈火のように怒り、「献呈」の文字を塗りつぶしてしまった。そして「ナポレオンも俗
 物にすぎなかったのだ」と語り、ナポレオンが死去すると、第2楽章の「葬送行進曲」を指し、「私は
 これを予言していた」と言い放ったとのエピソードがあまりに有名。

第1楽章(何とフルトヴェングラー指揮44年!)
 ☆推薦盤☆  ☆◎フルトヴェングラー/ウィーン・フィル(52)(ワ−ナー)      SS  ☆△フルトヴェングラー/ウィーン・フィル(44)(ウラニア)       S  ☆フルトヴェングラー/ウィーン・フィル(44)(ターラ)         S  ☆△トスカニーニ/NBC交響楽団(53)(RCA)            A  ☆△トスカニーニ/NBC交響楽団(53)(RCA)    2枚組     A  ○バーンスタイン/ウィーン・フィル(78)(グラモフォン)        A  ・バーンスタイン/ウィーン・フィル(78)(グラモフォン)        A  ・パーヴォ・ヤルヴィ/ドイツ・カンマー管弦楽団(05)(RCA)      B  ▲バーンスタイン/ウィーン・フィル(78)(グラモフォン) 全集     A  ☆△トスカニーニ/NBC交響楽団(39)(メモリーズ)   全集    ↑A    「英雄」のベストCDには永らくフルトヴェングラーの新盤が君臨してきたが、一時期音質の    劣化のためこれというCDがなかった。しかし最近は非常に音質が向上しており、再びフルト    ヴェングラー盤が復権を果たした。私も、今の音質ならば充分鑑賞には差し支えないと思うの    で、文句なしのお薦め盤。    何よりスケールが雄大で、精神的な深みも併せ持ち、まことに立派な演奏。戦時中の悲壮感か    ら脱したフルトヴェングラーとウィーン・フィルの誇りや風格があり、格調は高く、あいまい    さはどこにもない。「英雄」という大曲を堂々と、満足いくまで「聴かせて」くれる。    また、フルトヴェングラー&ウィーン・フィル盤には44年録音の旧盤もあるが、52年の新    盤の方が流通しており、評価も高い。上から2番目はハイブリッドSACD。    44年盤は、正規のEMI盤は廃盤中。現在入手できるのは別レーベルからの音源で、上から    3番目は「ウラニア盤」と言われ、米ウラニア社から発売された有名な音源のもの。    しかし、在庫切れの模様で、その下のリンクは、2010年にターラというレーベルから発売    されたCD。確かに「ウラニア盤」と同じ音源のようですが、在庫が少なく、早い者勝ち。    フルトヴェングラーと言えばライヴでこそ燃える実演派だったので、音質は悪くても、こちら    の44年盤を採る人もいる。なぜEMI盤は国内盤、輸入盤ともに廃盤のままなのだろう。    私も新盤をずっと愛聴してきたが、旧盤の方が、明らかに熱気、迫力に満ちているダイナミッ    クな演奏で、「これがフルトヴェングラーのライブか」と思い知らされる。    新盤に比べて、風格、スケール、そして何よりも音質の点では劣るが(かなり努力の跡は見ら    れます)、音質が気にならない方には、演奏そのものはこちらに軍配を挙げる方がいらっしゃ    るはずなので、ぜひこちらも、とお薦めしたい。私も、新盤とは優劣をつけがたい。    上のリンクから試聴できます。    ただいかんせん、音質が悪いし、初心者の方向けという点、お値段、EMIからの正規盤が発    売されているという入手しやすさを考慮して、第一のお薦めは52年録音の新盤としました。    さて、フルトヴェングラーのベートーヴェンの録音において、特に「英雄」「運命」「第九」    は伝説化されているため、録音日が違う多くの「歴史的録音」が存在する。彼のベ−トーヴェ    ンの録音で、一般的に常に馴染まれてきたのは、EMIかグラモフォンという、メジャーレー    ベル所有の音源。それ以外の「歴史的録音」「秘蔵音源」は、OPUS蔵やデルタ、ナクソス    などから発売されているが、国内盤だけでも、これがかなりややこしい。輸入盤も含めれば、    訳が分からなくなるほど。例えば、この「英雄」においては、一番上に挙げたEMI所有の5    2年録音の音源は、11月26,27日の録音であるのに対し、11月30日や12月7日、    はたまた同日のEMI録音後のライヴ録音などという音源も多くのレーベルから「発掘」され    ている。これでは、CDの買い間違えが起こってしまう。充分にご注意下さい。    フルトヴェングラーという指揮者は実演での表現の違いが大きな指揮者なので、日付が違うだ    けでかなり演奏スタイルが違うことが起こりうる。    この「CLASSIC MUSEUM」でご紹介しているのは、あくまでEMIやグラモフォンなどのメジャ    ーレーベル所有の音源によるCDが主体なので、お間違えのないよう、ご注意下さい。    「運命」「第九」でも同様のことが起こっています。専門書籍等で評価され、ここでご紹介し    ているフルトヴェングラーのベートーヴェンの録音は、EMIかグラモフォン所有の音源です。    他のレーベルのCDや、録音日が異なるものは、はっきりと明記してあります。評論家による    評価はメジャーレーベル所有の音源に対してのものです。しかし、録音日が違う音源で、そち    らの演奏の方がお気に召したということであれば、大変素晴らしいことですが、ここでご紹介    している「評価」とは無関係ですので、ご了承下さい。    話がくどくなりました。ややこしいですねぇ。でも、彼が人気者である証拠でもあります。    トスカニーニ盤は39年と53年の録音があり、音質も評価も53年の方が上。    だが、音質はかなり劣るものの、39年の方がはるかに脂がのっている演奏で、古い音質に抵    抗がない方には、39年の方がお薦め。ただし、破格の全集にしかなく、1枚ものは国内盤は    おろか、輸入盤にもないことが多い貴重な音源。    この全集は2011年に発売された、国内盤ながら破格のお値段の全集。    評論家の評価は明らかに高い53年録音の新盤は、2種類用意しました。2枚組の方が当然お    高いが、A評価で、同曲ベスト演奏とも言えるベト1が入っているCD。1枚ものは廃盤中。    39年盤は、スケールの大きさや立派さこそフルトヴェングラー盤に譲るものの、ものすごく    気迫の充満した究極の凄演で、第1楽章冒頭の主題を聴いた時には震え上がった私の想い出の    CD。彼の芸風のごとく、切れば血のでるような弦の熱気に溢れた切れの良さ、ティンパニの    猛打、地の底まで突き刺さるようなリズム、まさにリアリズムの極致。トスカニーニイズム。    ベートーヴェンが目指した音のドラマとはこういうものであったに違いないと、有無を言わせ    ず納得させられてしまう。39年盤は、今は録音の古さもあってB評価が妥当だが、かつては    歴史的名盤と謳われていた録音なので、主観でA評価にしました。破格のお値段の全集より。    トスカニーニの正規盤は、RCA発売のもの。戦前に活躍した指揮者なので、彼のベートーヴ    ェンの演奏も、色々なレーベルから音源が発掘されたりしている。そのため、CDも、面白い    ものが発売されたと思ったら、すぐに廃盤になってしまうなど、非常に把握しづらいです。    これは「英雄」に限ったことではないので、ご承知おき下さい。推薦盤の一番下の全集は、2    011年に発売されたものですが、レーベルはRCAではありません。国内盤としては破格の    お値段ですが、いつ廃盤になるか全く分かりません。個人的には、「今がお買い時」です。    バーンスタイン盤は、フルトヴェングラー盤がモノーラル録音だけに、ステレオ録音のベスト    盤としての地位を確立している。彼自慢の恰幅の良さと柔軟性に満ちた演奏で、フルトヴェン    グラー盤ほどのスケールの大きさやトスカニーニ盤ほどの熱気はないが、ステレオ録音第一の    お薦め盤。新しい演奏がお好きな方には、この度追加したヤルヴィ盤がお薦め。    更に、バーンスタインの輸入盤の全集も加えておきました。国内盤は廃盤のようです。
交響曲第4番  ★★ 最新更新2014年7月

 この交響曲第4番は、ベートーヴェンの9曲の交響曲の中でも第2番、第7番と並んで一歩地味な存在。
 しかし、第3番「英雄」作曲後の、一皮向けたベートーヴェンだけに、ダイナミックで爆発力に満ち、
 鋭いリズムの刻みが魅力の曲であり、第2番あたりと比べると、いかにもベートーヴェンチックな、あ
 るいはロマン派シンフォニックな交響曲であるという印象を受ける。よって、ベートーヴェンの後期
 の交響曲のように、ダイナミズムに溢れた交響曲が好きな方の中には、この「ベト4」のファンも多い。
 特にこれといったドラマ性などはなく、第7番などのようにベートーヴェン・サウンドを楽しむ交響曲
 で、曲調も第7番に似ている。
 第1楽章の冒頭で2分半程もったいぶったような演奏を聴かされるが、そこから軽快なサウンドへと一
 変する。ベートーヴェンならではのユーモアだろうか。

第1楽章(何とクライバー指揮!)
 ☆推薦盤☆  ・カルロス・クライバー/バイエルン国立管弦楽団(82)(オルフェオ)     SS  ◎カルロス・クライバー/バイエルン国立管弦楽団(82)(オルフェオ)     SS  ○ムラヴィンスキー/レニングラード・フィル(73)(アルトゥス)       ↑S  △ワルター/コロンビア交響楽団(58)(SONY)               B    まず、誰にも安心してお薦めできるのはSS評価と断然の評価を得ているクライバー盤。    ムラヴィンスキーもそうなのだが、この両者は速いテンポで、きびきびと鋭いリズムを刻んで    いくトスカニーニタイプの指揮者なので、曲との相性が抜群にいい。誠に気分爽快。    国内盤は廃盤中のようなので、輸入盤にリンクを貼っておきました。    ムラヴィンスキー盤は本来ならばA評価のCDだが、日本公演のライブ録音であるため、彼の    CDとしては珍しく音質が良好。しかし、アルトゥスというレーベルのCDはどれもお高く、    このCDは特にお高い。    この演奏をS評価にした理由は、終楽章に見られるような、高速のテンポの中で身をえぐられ    るようなリズムの刻みや、ティンパニの強打が尋常ではなく、単にサウンドを聴かせるだけで    はない、彼特有の神業的なムラヴィンスキー・マジックが施されている気がするからである。    クライバーのようなドライヴ感+αの厳しさ、鋭さに何とも心を惹きつけられる。    ワルター盤は「運命」とのカップリングでもあるため、CDとしてはお得。    彼はダイナミズムに溢れた演奏をする指揮者ではないが、第1、第4楽章などはスケールは小    さいものの、リズムは細かく刻まれ、細部に色々なニュアンスがある。ワルターの老かいさが    活きており、新鮮な感じさえ受ける。癒し系のベト4がお好きな方にお薦めしたい。
交響曲第5番「運命」  ★  最新更新2014年7月

 第1楽章冒頭のテーマがあまりにも有名なので、この作品を知らない方はいないでしょう。交響曲の中
 で1番有名といっていい作品。普通はやはり「運命」と呼ばれるが、「ベト5」でもOK。
 第1楽章は冒頭の「運命の動機」が何度も繰り返され、迫りくる運命と戦う姿が描かれている。
 なお、この冒頭をベートーヴェン自身が「運命はこのように扉を叩く」と言ったというのは有名な話で
 ある。おそらく学校の先生に教えてもらった方が多いと思うけれども……これは何の根拠もない作り話
 なのだそうな。この作り話を信じているのも日本人だけらしいとのこと。
 第2楽章、第3楽章では運命と戦う苦悩が描かれ、やがて第4楽章では勝利の曲となる。第2楽章、第
 3楽章は息が詰まるほどの暗い曲だが、第4楽章は明るく、最も演奏効果に富んでおり、何度聴いても
 心が弾む。知名度相応の、ベートーヴェンならではの傑作。
 「運命」は第2楽章、第3楽章が暗いとはいえ、第1楽章は有名であるし、第4楽章も演奏効果抜群な
 ので、ベートーヴェンの交響曲の入門用はおろか、あらゆる交響曲の入門用にふさわしい作品。

第1楽章(何とトスカニーニ指揮)  第3楽章終わりから第4楽章へ(バーンスタイン指揮)
 ☆推薦盤☆  ★◎カルロス・クライバー/ウィーン・フィル(74)(グラモフォン) SSかなり売れてます!  ★カルロス・クライバー/ウィーン・フィル(74)(グラモフォン)  SS  ☆○フルトヴェングラー/ベルリン・フィル(47)(グラモフォン) ↑SS売れてます!  ☆フルトヴェングラー/ベルリン・フィル(47)(グラモフォン)  ↑SS  △フルトヴェングラー/ウィーン・フィル(54)(ワ−ナー)      A  ☆トスカニーニ/NBC交響楽団(52)(RCA)           B  ☆△トスカニーニ/NBC交響楽団(52)(RCA)    2枚組   B  ・クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団(59)(EMI)      B  ▲ブリュッヘン/18世紀オーケストラ(90)(デッカ)        B  ・パーヴォ・ヤルヴィ/ドイツ・カンマー管弦楽団(06)(RCA)   B  ・ライナー/シカゴ交響楽団(59)(RCA)             B  ・ライナー/シカゴ交響楽団(59)(RCA)             B  ☆△トスカニーニ/NBC交響楽団(39)(メモリーズ)   全集   B    クライバー盤は彼の最高傑作の1枚で、特に初心者の方には真っ先にお薦めしたい。聴き古さ    れた「運命」がまさに今生まれたかのように活き活きとしており、クライバーの天才が光る。    特に、今まで他の「運命」を聴いてきた方は、かなりの衝撃を受けるだろう。速いテンポから    鋭い弦の切れ、金管の強奏、ティンパニの強打、まことに爽快で、ダイナミズムの極。これが    天才と称されたカルロス・クライバーの世界である。20世紀を代表する名盤にも選ばれた。    おまけに、クライバーお得意の第7番とカップリングにもなっていて、CDとしてもお宝もの。    ただ、演奏がややスポーツ的なので、嫌う方もいるかもしれない。    フルトヴェングラーの47年盤は、彼の「運命」のベスト演奏というだけでなく、彼のあらゆ    る演奏の中でもベストを争う猛演で、古くから人類の至宝とされてきたライヴ録音。運命との    戦いのドラマをこれほどまでに表現しきった演奏は類を見ない、芸術至上主義の演奏。    第二次大戦のため演奏活動を停止していた彼が、ようやく指揮台に立った。47年5月27日、    ベルリンで行なわれたベルリン・フィルとのライヴ録音。荒廃したベルリンで、彼が「運命」    の演奏に込めたすべての思いが集約されている。そういった背景を踏まえ、彼の表現力が全快    している演奏。特に第1楽章は運命の動機が出てくるたびにテンポを落とし、壮絶なまでのド    ラマを展開する。まさに、二度と再現できない不滅の金字塔なのだ。演奏記録としてはすべて    のクラシックCDの中でも最高クラスの価値をもつ一枚。    個人的には、SHM−CDよりも、音質が悪い通常のCDの方が、かえって、戦禍が残る当時    の荒廃的な情景が浮かんで、演奏にマッチしている気もする。    クライバー盤とフルトヴェングラー盤は全くスタイルが違うので、クラシックの聴き方の勉強    という意味でも、両方持っていたい。    もちろん、2枚とも、あらゆるクラシックCDの中でも最も有名なCDの一つ。    フルトヴェングラーの54年録音の新盤は、47年録音の旧盤に比べるとはるかに音質がいい。    燃えに燃えた旧盤と比べると、これが同じ指揮者の演奏かと思えるほど客観主義的に聴こえる    が、終戦から大分年月が経ち、彼ならではの格調の高い、かつドラマチックな「運命」となっ    ている。こちらはこちらで「54年録音の運命」という名盤としての地位は確立しているCD。    なお、「英雄」と同様、フルトヴェングラーの「運命」の演奏の音源も多数存在します。    トスカニーニ盤は彼独特のダイナミズムに富んだ演奏で、古くからフルトヴェングラー盤と双    璧をなしてきた名盤。音が古いので、今ではB評価だが、歴史的名盤として持っておきたい。    1枚ものよりは、どちらかというと第8番まで収録されている2枚組の方がお薦め。    ちょうど脂がのっている39年盤も歴史的名演。一番下の破格なお値段の全集もお好みで。    クレンペラー盤はHQCDなので音がいい。演奏は前者3人とは異なり、テンポは遅く、感情    に流されることなく堂々と進められるので、実に立派な演奏。クライバー盤やトスカニーニ盤    のようなダイナミズムはないし、フルトヴェングラー盤のようなドラマもないが、こういうど    っしりとしたスタイルの「運命」を好む方には、お薦めの演奏。HQCDながら1200円。    ブリュッヘン盤も、堂々とした重厚な演奏。古楽器による運命としてはベストとも言える演奏    で、古楽器ファンにはかなりお薦めの1枚。    パーヴォ・ヤルヴィ盤はこの度追加された最新録音。A評価のベト1同様、現代的な速いテン    ポで、ダイナミズム溢れる演奏。躍進力が素晴らしい。    ライナー盤は59年という古い録音だが、XRCDの発売に伴って音質がかなりよくなり、再    び評価を挙げた。カップリングが豊富な通常盤の方をお薦めしたい。


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