☆マーラー |
| 交響曲第1番「巨人」 ★★★ 2013年1月更新 |
マーラーは全部で10の交響曲を書きましたが、いずれも初心者の方には難しいです。マーラーの入門
用としては、この「巨人」か第4番が適していると言われています。「巨人」というのはジャン・パウ
ルの小説からヒントを得て、同じタイトルを与えたもの。
この作品は、マーラーが同時期に作曲した「さすらう若人の歌」と密接な関係にあります。同曲は、若
者の失恋の心の苦悩を描いた作品で、この作品の理解がないと、こちらの「巨人」の理解は難しいと言
われてもいます。「さすらう若人の歌」の第2曲が第1楽章第1主題に転用されていたり、第4曲が第
3楽章に用いられているのです。
なお、マーラーの交響曲の名盤となると、新旧のマーラー指揮者、ワルターとバーンスタインの演奏が
定盤。私も、この二人のいずれかのCDを買えば、まず間違いはないと確信しています。
第1楽章は森の夜明けで始まります。カッコウの鳴き声が何度も聴こえますが、この動機は全楽章を通
じて重要な働きをします。第2楽章はオーストリアの農民舞曲で、第3楽章はフランスの画家カローの
絵による狩人の葬送行進曲です。中間部は非常に優美な音楽となりますが、ここが「さすらう若人の歌」
の第4曲からとられたもの。第4楽章は青春時代の失恋と絶望のうめきを描いたものです。
第1楽章(エッシェンバッハ指揮)数分は静かです
☆推薦盤☆
☆ワルター/コロンビア交響楽団(61)(SONY) S かなり売れてます!
B2☆◎ワルター/コロンビア交響楽団(61)(SONY) S
○バーンスタイン/アムステルダム・コンセルト・ヘボウ(87)(グラモフォン)A
△バーンスタイン/アムステルダム・コンセルト・ヘボウ(87)(グラモフォン)A
H▲アバド/ベルリン・フィル(89)(グラモフォン) A
「巨人」のCDは、バーンスタイン盤よりもワルター盤の評価の方が高い。よって、ワルター
盤が第一のお薦めとなりますが、この曲のファンの方はバーンスタイン盤も是非持っておきた
いところでしょう。両者の違いは、ワルターの方があっさり、バーンスタインの方が、熱くて
こってりという感じです。
そう、バーンスタインは感情を表に出すタイプなので、マーラー演奏はみな熱い。
ワルター盤はもちろんBSCD2の方がお薦め。
三番目の○のバーンスタイン盤は、「マーラー作品集」という2枚組1500円のシリーズで、
「さすらう若人の歌」とのカップリングという、粋な計らいがされています。「さすらう若人
の歌」の評価は二番手でA評価。それで1500円で両方聴けるのは大きく、その意味ではワ
ルター盤以上のお薦め盤とも言えるでしょう。更に!音源は間違いないと思われるのですが、
何とマーラーの第5番も収録されています。この音源が、下でご紹介している第5番のCDと
同じだとしたら、1枚よりも、3楽曲収録されているこの2枚組の方がお安いという不思議な
ことが起こります。販売元のユニバーサルミュージックも気づいていないのでしょうか。
まあ、間違いなく音源は同じでしょう。
バーンスタインの「巨人」のみの単品の国内盤CDは四番目の、2010年に再発売されたも
の。なぜか三番目のCDよりお高いのです。
よって、どうしても「巨人」のみの1枚のCDにこだわりたいという方にはお薦めです。
アバド盤は、アバド&ベルリン・フィルのコンビによる録音では、数少ない名演。ライブ録音
ならではの緊張感を保ちつつ、アバドの音楽性が活き、色彩感充分の演奏。SHM−CD。
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| 交響曲第2番「復活」 ★★★★ 最終メンテ2013年7月 |
この交響曲によってマーラーの作曲家としての実力が認められた記念碑的作品です。
マーラーの交響曲で、マーラー初心者向けなのは、第1番「巨人」と第4番と言われます。この交響曲
第2番「復活」、第3番、第8番などはそれらに比べかなりの大曲。特にこの第2番は5楽章構成で、
単に演奏時間がかかるというだけでなく、合唱もついているので、なおのこと大作で、とっつきにくい
というイメージが強いのですが、演奏頻度はマーラーの全交響曲の中でも最も多いとも言われています。
曲のコンセプトは他の交響曲と変わりませんが、合唱があったり、楽章ごとの作曲意図がはっきりして
いるので、理解しやすく、親しみやすいという点が人気の秘密かもしれません。
第4楽章、第5楽章に合唱が入り、この合唱は、同じ作曲者による「子供の不思議な角笛」という作品
と関係しています。
また、副題の「復活」という名は、第5楽章に由来しているそうです。
では、楽章ごとの作曲意図はというと、第1楽章はある英雄の葬送の音楽で、彼が何の目的のために生
まれて来たのかを表し、第2楽章は英雄の過去の回想と夢、第3楽章は喧騒に満ちた人生の流れ、第4
楽章では英雄は苦しみぬいており、天国に対する憧れを表し、第5楽章では人生の終末の後、最後の審
判を受けた英雄が、やがて永遠に復活するまでを描いたのだと言われています。
第5楽章より(何とバーンスタイン指揮!)
☆推薦盤☆
★◎バーンスタイン/ニューヨーク・フィル(87)(グラモフォン) SS かなり売れてます!
△アバド/ルツェルン祝祭管弦楽団(03)(グラモフォン) A 輸
▲小澤征爾/サイトウ・キネン・オーケストラ(00)(SONY) A
B2▲小澤征爾/サイトウ・キネン・オーケストラ(00)(SONY) A
○クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団(61、62)(EMI) A
☆ワルター/ニューヨーク・フィル(57、58)(SONY) B
第2番「復活」はバーンスタイン盤の独壇場。当然のSS評価で、他のCDの及ぶ余地すらな
いほどです。普通にこの曲の素晴らしい演奏を聴きたい方にはこのCDがお薦めです。
このCD、謎の廃盤の時期が続いたのですが、2010年10月に、何と大幅プライスダウン
での再発売。以前は今の倍に近いお値段がネックだったのですが、お安くなったので、もう絶
対的な一枚と言えると思います。
ただ、バーンスタイン盤はSONYから発売のものもあるので、充分ご注意下さい。
他にCDが4種続きますが、これらいずれも魅力タップリのCDなので、興味のある方には是
非お薦めしたいものばかりです。
まず、アバド盤は、この度の更新で初登場。現在は輸入盤のみ。
アバドには他のオケとの録音もありますが、ベルリン・フィルの常連指揮者から引退し、自分
の好きなように音楽活動ができる環境の下での演奏ということと、重病を克服した喜びとが重
なり、年齢を感じさせない熱気に満ち溢れている点が魅力のようです。アバドは元々マーラー
が得意なのでお薦めですね。
小澤&サイトウ・キネン盤ですが、一部でかなり評価されているCD。まだ発売してからあま
り時間が経っていませんが、この作品の上位争いの常連としての地位は確立しています。世界
で活躍する名手が揃った、わが国が誇るサイトウ・キネン・オーケストラの最高傑作であるば
かりでなく、小澤征爾の最高傑作との呼び声もあるほどで、アンチ小澤派までをも唸らせた演
奏なのです。お薦めは、お値段はほとんど変わらないBSCD2の方です。
クレンペラー盤は、何とCD1枚なので、1300円という破格のお値段。クレンペラーはマ
ーラーの他の交響曲にも名盤を残していますし、何と言っても、歌手には20世紀最高の女性
歌手と言ってもいいシュヴァルツコップを起用しています。これが1300円とは!お値段を
考えればこのCDもかなりのお買い得でしょう。
最後には、もう「歴史的名盤」として第一線からは退いた感のあるワルター盤。ウィーン・フ
ィルとの録音もありますが、そちらは録音が古いです。こちらは50年代後半なので、鑑賞に
は差し支えはないでしょう。ワルターのファンの方は当然持っていたいし、この作品のファン
の方も持っていたいCDです。
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| 交響曲第4番 ★★★ 2011年8月更新 |
交響曲第1番「巨人」のところで触れたように、マーラーは初心者の方には難しい。その入門用として
適しているのが、第1番か、この第4番。
マーラーの交響曲は一貫してどれも陰鬱なムードが漂っているが、第1番と第4番は例外的に明るく愉
快である。マーラーは死を怖れるあまり、現世肯定、つまり、この世の愉しさ、素晴らしさへの憧れを
表現している。これらの楽曲でさえ暗くてダメと感じたら、もうマーラーとは無縁でしょう。
第1楽章は傑作で、メルヘンチックやエキゾチックな色彩感のある音楽。マーラー特有のメルヘンさが
漂っている。第3楽章は後半が冗長になるため、マーラー初心者の方にはきついところ。
第4楽章はソプラノ独唱が加わる天国的な音楽。この楽章にも魅力を感じないのならば、マーラーをそ
れ以上聴くのは厳しいのでは。
第1楽章(バーンスタイン指揮)
☆推薦盤☆
◎アバド/ベルリン・フィル(05)(グラモフォン) A
・クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団(61)(EMI) A
△クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団(61)(EMI) A H
○アバド/ウィーン・フィル(77)(グラモフォン) A 輸
・ショルティ/シカゴ交響楽団(83)(デッカ) A
▲シャイー/ロイヤル・コンセルトヘボウ(99)(デッカ) B
・バーンスタイン/ニューヨーク・フィル(60)(SONY) B 輸
・ラトル/バーミンガム市交響楽団(97)(EMI) B 輸
本来ならば、マーラーの交響曲はワルターかバーンスタイン1枚で済むはずなのだ。しかし、
ワルターは全く評判が悪いし、バーンスタインも彼にしてはいま一つ。
これはなぜかという考察をした評論家によると、本来マーラーが得意である両者が第2楽章の
気味が悪いヴァイオリンなどを「気味が悪く」演奏してしまうとグロテスクになってしまい過
ぎ、現代のリスナーにはどこか抵抗感を与えてしまっているからだという。そのため、推薦盤
の上位に来ている演奏は、その点をなるべく排除した演奏ばかりらしい。
よって、推薦盤は、この度の更新により、なおさら群雄割拠状態になってしまっている。
A評価のCDはいずれも横並びとお考え下さい。
まず、アバドの新盤は、この度の更新で初登場。アバドには旧盤もあり、比較は難しいが、人
間味溢れる温かさと、音楽への愛が感じられる演奏。第1番、第2番のようにワルターやバー
ンスタインという「強敵」はいないし、国内盤ながら特別お高くもないので、録音のよい、こ
のCDが現在の私の一番のお薦め。
クレンペラー盤はなぜかいつも在庫がないし、店頭で見たこともないけれど、廃盤ではないら
しく、評価は高いので、リンクはしておきました。現在はHQCDのみ。高音質ということを
考えると、さほどお高くはないので、お薦め度△にしました。
アバドの旧盤は、以前はこの曲のベストCDと言える時期もあったが、評価が下がったせいか、
長らく廃盤中。よって2枚組の輸入盤しかない。単純に演奏だけを考えれば、今でも第一に推
薦してもおかしくはないのだが、事情を考えると、横並びのA評価が妥当なところ。輸入盤と
は言え、2枚組で新盤よりもお高いので、お薦め度は完全に新盤の方が上でしょう。
ショルティ盤は今まで確固たる評価を築いてきたCDなので、信頼度は最も高い。そういう意
味ではこのCDが一番無難であるし、お安いのだが、現在廃盤中。デッカのCDなので、再発
売されたらお薦め度は○にしたい。
シャイー盤は99年の録音が魅力であるし、お値段もアバドの新盤と同じ。推薦盤の中では、
廃盤を含めると相対的にB評価だが、廃盤を考えなければA評価とお考え下さい。
独特のアプローチで、ソロが強調されているのが印象的。
バーンスタイン盤だが、彼にしては意外にも評価が低く、まさにB評価が妥当といったところ
なのは、上記の理由のためなのだろうか。SACDはあるが、普通のCDは現在廃盤中。
とはいえ、1000円を切っている輸入盤なので、他のマーラーの交響曲では独壇場である彼
のアプローチを聴いてみるのもいかが。
ラトル盤は、ベルリン・フィルとの録音ではなく、彼のベスト演奏の1つとも言えるCDだっ
たのだが、その後ベルリン・フィルとマーラーを頻繁に録音するようになったせいかどうなの
か(?)、評価が下がってしまった。国内盤はない状況。
以上、短評をまとめたが、これといったCDがないのがツライところ。
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| 交響曲第5番 ★★★★ 2011年6月更新 |
マーラーを聴き込もうという方が、第1番、第4番、第9番などを聴いたのならば、その後にもってこ
いなのが、この第5番や第2番。全5楽章からなるので、ある程度マーラーに慣れている方でないと、
その長さにすぐに挫折してしまうかもしれない。
マーラーという人物は分裂気質の性格の持ち主で、喜怒哀楽が激しい人物とされているが、この第5番
には彼の人間性が如実に表されている。第1楽章にいきなり葬送行進曲を持ってきたり、音楽も終始揺
れ動き、作曲者が何を言いたいのかが非常に解りづらい。逆に言えば、この第5番を聴き込める方、理
解できる方は、充分なマーラー上級者だと思う。
なお、この作品の第4楽章は、これだけ1曲の単品としてCDにカップリングされていることが多く、
マーラーの楽曲としては最も有名な「交響曲第5番のアダージェット(緩いテンポの曲)」である。こ
の楽章が好きで第5番が好きだというファンの方も多い。この曲は、マーラーの音楽によるラブレター
だったそうで、実際にこの曲を贈ったアルマと結婚している。独特の夢想、幻想の世界が描かれている。
第4楽章(何とバーンスタイン指揮!) 第4楽章(ワルター指揮)
☆推薦盤☆
○バーンスタイン/ウィーン・フィル(87)(グラモフォン) SS H
◎バーンスタイン/ウィーン・フィル(87)(グラモフォン) SS
△アバド/ベルリン・フィル(93)(グラモフォン) A
▲シノーポリ/フィルハーモニア管弦楽団(85)(グラモフォン) A
この作品に関してはバーンスタインの新盤が定盤中の定盤となっており、実際、評価もSSに
値する。マーラー指揮者としての面目躍如といったところで、他のCDを全く寄せ付けない。
どの楽章をとっても本当に素晴らしい限りで、特に、難解なこの曲を理解するには、バーンス
タインの演奏でなければ不可能かとさえ思えるほど。文句なしの1枚。しかもSHM−CD。
ただ、S評価の「巨人」と、まずまずの「さすらう若人の歌」とのカップリングのマーラー尽
くしの2枚組があり、2番目にリンクを貼っておいたが、何と1枚のこのCDよりもお安い。
録音年が同じなので、音源は間違いなく同じだと思われるのだが、発売元のミスなのか??
「マーラー5番」としてのCDが欲しい方でなければ、どう考えてもそちらの方がお得。
ところで、バーンスタインのマーラー演奏は熱気に満ち過ぎ、暑苦しいという意見の方も多い
ので、念のためご用意したのがA評価の2枚。特にシノーポリ盤は1000円という価格が嬉
しい。B評価は乱立状態なのでどれも差がなく、推薦盤は以上としたい。
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| 交響曲第9(10)番 ★★★★ 2011年3月更新 |
交響曲第9番は、マーラーの芸風が色濃く出た作品で、死との戦いを描いている。彼の交響曲の中でも
ベストを狙える作品。この後にご紹介する「大地の歌」より実は後に作曲されたので、交響曲第10番
と表記されることもあるが、未完の「第10番」も存在するのでご注意下さい。
特に重要なのは第1楽章で、マーラーは死の恐怖にのたうちまわっている。金管楽器や打楽器の音が恐
ろしさの限り。しかしマーラーは単に死を恐れるだけでなく、この世の美しさに憧れぬく。生を求め続
ける。まさに「絶唱」というべき楽章。この第1楽章に共感できない方は、マーラーとは相性が悪いと
思う。
第4楽章は憧れの心の総決算で、残りわずかな生命への讃美歌となる。
第1楽章からかなり長いので(20分以上)、初心者の方は厳しいかもしれない。
第1楽章(何とバーンスタイン指揮!)
☆推薦盤☆
◎バーンスタイン/ベルリン・フィル(79)(グラモフォン) S かなり売れてます!
○バーンスタイン/アムステルダム・コンセルト・ヘボウ(85)(グラモフォン)S
☆▲ワルター/ウィーン・フィル(38)(DUTTON) ↑A 輸
第9番のCDと言えば、まずバーンスタインによる2つの名盤がオーソドックスだが、この曲
のファンの方にはどうしても持っていて欲しいのがワルター盤。1938年の録音なので音は
悪いが、歴史的名盤として語り継がれてきた。EMI所有の、戦前のウィーン・フィルとの伝
説的録音の一つ。
この演奏は1933年、ワルターにナチスの手が伸びた後、コンサートの直前に死の脅迫状が
舞い込んだりという状況下で演奏された。音質は確かに悪いが、それがかえって真実味を増さ
せる。また、当時のウィーン・フィルの音色の甘美なことといったら絶品。その点の背景を考
慮してB評価を主観でA評価としました。
演奏自体は後述のバーンスタイン盤2つの方が明らかに評価が高いが、ファンの方には記念碑
的録音として持っていて欲しい。しかし現在EMIの国内盤は廃盤中。近いうちに再発売され
ると思いたいが(以前は1500円でした)、輸入盤ですら見つからない。そこで、このよう
な伝説的録音ならお任せの、OPUS蔵(オーパスくら)をあたってはみたもののやはり無い。
ナクソスにはそれらしい録音はあったものの、場合によっては劣悪な音質を通り越して雑音で
演奏が聴けない場合もあるナクソスだけに、避けました。何とか私が見つけたリンク先はイギ
リスのDUTTONというマイナーレーベルの輸入盤のCD。英文での解説とレヴューを見た
限りでは、音源は間違いなく同じで、EMI盤よりも音質はいいらしいとのこと。
バーンスタイン盤は2種類で、79年録音のベルリン・フィルとの一期一会の録音が大変人気
なのだが、何度も細部まで聴きこめば、コンセルトヘボウ盤に部があるという意見が多い。第
1楽章の弦の甘美な音色、ホルンやトロンボーンの気味悪さ、本当に素晴らしい。他の指揮者
と比べると、いかにバーンスタインがマーラーを得意にしていたかが分かる。
ベルリン・フィル盤は、バーンスタインとベルリン・フィルによる唯一の顔合わせの演奏記録。
かつては5000円近くでなかなか手が出なかった方もいらっしゃったCDなのだが、2枚組
が1枚となり(CDの収録時間が延びたようです)、しかも1600円という破格のプライス
ダウンで再発売。信じられないほどのお安さ。
コンセルトヘボウ(アムステルダム・コンセルトヘボウとロイヤル・コンセルトヘボウは同じ
オーケストラです)盤は謎の廃盤のため、しばらく輸入盤しかなかったのだが、2010年1
0月に国内盤が復活。ということはベルリン・フィル盤同様に1枚になって超プライスダウン
なのか?と期待したものの、確かに大幅にお安くなってはいても、2枚組ということは変わら
なかった。
従って、演奏そのものというよりは、信じられないほどお安くなったベルリン・フィル盤の方
を第一にお薦めとしました。ファンの方は、ぜひ両方揃えるべきでしょう。今なら両方合わせ
ても4000円強。一時期ではベルリン・フィル盤ですら買えませんでした。時代の流れにひ
たすら感謝です。
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| 交響曲「大地の歌」 ★★★ 最新更新2014年7月 |
「大地の歌」は実は交響曲第9番の前に作曲された。「大地の歌」は交響曲ではあるが、ソリストによ
る声楽曲でもある。男女1人ずつのソリストが交代に歌う。
また、6つの楽章から成り立っているが、マーラーの他の交響曲に比べて各楽章の演奏時間が短いので、
マーラー入門用にも良いかもしれない。
第1楽章は「大地の哀愁をうたう酒の歌」で、酒の力で死の恐怖を忘れ去ろうとする酒宴を描いている。
第2楽章は「秋に淋しきもの」で、寂寥に耐えかねた人間が自殺を考える。第3楽章は「青春について」
で、第6楽章への伏線となっている。中国的なムードの中、陽気に独唱が歌うが、人生の無常感が隠さ
れており、青春のはかなさが描かれている。第4楽章は「美について」で、美しい乙女達の愉しげな遊
びが描かれ、表面は明るいが、人間の恋と命が風のようにそよぐ。第5楽章は「春に酔える者」で、飲
めなくなるまで、終日酒に溺れようという自堕落の歌である。第6楽章、つまり最終楽章は、「告別」
で、全曲中最も長い。諸行無常を告げる鐘の音が聞こえ、虚無僧の笛が夕闇にさえ渡り、アルト独唱が
現世への告別を歌い始める。
第1楽章(バーンスタイン指揮) 第4楽章(何とワルター指揮52年)
☆推薦盤☆
○クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団(64,66)(ワ−ナー) SS
◎ワルター/ウィーン・フィル(52)(デッカ) ↑SS かなり売れてます!
・ワルター/ウィーン・フィル(52)(デッカ) ↑SS H
△ワルター/ウィーン・フィル(36)(OPUS蔵) A
△ブーレーズ/ウィーン・フィル(99)(グラモフォン) A
▲ラトル/バーミンガム市交響楽団(95)(EMI) B 輸
「大地の歌」のCDは、以前からクレンペラー盤とワルター盤が抜きんでている。
クレンペラーはステレオ録音だが、録音の古いこの2枚に及ぶ演奏が現れないのは、歌手がポ
イントという説がある。演奏自体はもっと新しい録音の方が優れている気がするけれども、私
も全く同感で、特にワルター盤の歌手2人は、これ以上望めないほど。それぞれが素晴らしい
けれども、このコンビを超える演奏は二度と現れないのではないのかと思うほど。
もちろん、クレンペラー盤の歌手も(男声は20世紀を代表するヴンダーリヒ)素晴らしい。
という理由から、私のイチオシはワルターの新盤。新盤はウィーン・フィルとの録音で、珍し
くデッカのCDなのでご注意を。テンポといい、楽器の表情といい、完璧に近い演奏。モノー
ラル録音だが、定評ある英デッカの録音だけに音質は気にならない。特に歌は、録音が古くて
もあまり差し支えないというのが定説なので、これ1枚で充分ではないだろうか。主観でS評
価をSS評価にしました。2009年に再発売されて、どれだけ音質が良くなっているか。
A評価の36年録音の旧盤もお好みでどうぞ。
ステレオ録音でSS評価のクレンペラー盤は、彼の芸風である厚みのあるオーケストラにのっ
て、熱く生への告別をうたう。独唱の二人も素晴らしい。こちらも文句なしにお薦め。
それでも、という方には、新しい録音で最も評価が高いブーレーズ盤がお薦め。
また、ラトル盤も入れておきたい。輸入盤しかないが、1000円をきっている格安のCD。
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☆メンデルスゾーン |
| 交響曲第3番「スコットランド」 ★★★ 最新更新2014年7月 |
メンデルスゾーンという作曲家は、何と言っても「真夏の夜の夢」の「結婚行進曲」が超有名で、その
次に「ヴァイオリン協奏曲」が有名だが、交響曲も書いており、この第3番「スコットランド」と第4
番「イタリア」が主に録音や演奏をされている。よりポピュラーなのはこの「スコットランド」の方だ
が、「イタリア」の第1楽章が有名。
初心者の方にはやや難しく、中級者以上向けの作品か。
副題の通り、スコットランドに旅行をした時の風景、印象を描いた標題曲的な交響曲。
第1楽章はロマンティックで、旋律が非常に美しい。第2楽章はメルヘンティックな曲。
第3楽章はスコットランドの森を思わせ、森の向こうには古城が見える。第4楽章は暗いニュアンスを
漂わせ、荘厳な結尾部に到達する。
第1楽章(ノリントン指揮)
☆推薦盤☆
★◎クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団(60)(ワーナー) SS
○カラヤン/ベルリン・フィル(71)(グラモフォン) A
△アバド/ロンドン交響楽団(84)(グラモフォン) B
▲アバド/ロンドン交響楽団(84)(グラモフォン) B
「スコットランド」のCDはクレンペラー盤の評価が断然のSS評価。
彼のテンポは概して遅いのだが、そのずっしりとした厚みにのってロマンティックな旋律が美
しく歌われていく。じっくり、堂々と進めていくからこそ各楽器の色合いの変化などが美しく
表現されている。このCDはHQCDながら1200円という超お得盤。絶対の1枚でしょう。
しかし、私はどうも彼の演奏が苦手。いま一つ旋律を美しく演奏する指揮者ではないし、テン
ポも遅いので、そこに抵抗感を感じる方にはカラヤン盤を推薦したい。カラヤンの芸風はある
意味クレンペラーとは正反対なので、旋律の歌いを強調した演奏が好みの方にはこちらをお薦
めしたい。
かなりA評価に近いB評価のCDとしてアバド盤も挙げておきました。
上から3番目は再発売のCD。4番目は、いつ廃盤になるかは分かりませんが、「イタリア」
とのカップリングという美味しい1枚です。
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| 交響曲第4番「イタリア」 ★★ 最新更新2014年7月 |
副題の「イタリア」の通り、メンデルスゾーンがゲーテの勧めでイタリアに旅をしたときの、イタリア、
特にローマのあたりを描いた曲として知られている。軽快なリズム、簡潔な構造が特徴の交響曲。
第1楽章冒頭は、眩しく照らす太陽に、青い空、という、メルヘンティックなイタリアの風景をメロデ
ィ−にしたもの。「どこかで聴いたことがあるな」と思われる方も多いのでは。
第3番「スコットランド」と同様、標題曲的な交響曲であり、両者には通じるものがあるが、テンポが
全く違う。「イタリア」は第4楽章に代表されるように非常に躍動感溢れる曲なので、「スコットラン
ド」とこの「イタリア」で好みが違っても全くおかしくはないと思う。私は完全にこちらの方が好き。
また、こちらの方が演奏時間が短く、テンポの速い演奏ならば、あっという間に終わってしまう感があ
って聴きやすい。よって初心者〜中級者向けとしました。
第1楽章
☆推薦盤☆
☆◎トスカニーニ/NBC交響楽団(54)(RCA) S
☆トスカニーニ/NBC交響楽団(54)(RCA) S H
☆▲トスカニーニ/NBC交響楽団(54)(GUILD) S 輸
☆トスカニーニ/NBC交響楽団(54)(RCA) SH
○アバド/ベルリン・フィル(95)(SONY) A
△アバド/ロンドン交響楽団(84)(グラモフォン) A
△アバド/ロンドン交響楽団(84)(グラモフォン) A
△ガーディナー/ウィーン・フィル(97)(グラモフォン) A H
トスカニーニ盤は古くから歴史的名盤として語り継がれてきたもので、今もってS評価である
のは凄いです。それだけ演奏が素晴らしいということなのですが、54年の録音ですから、一
時期は音質の古さのために評価が落ちていました。しかし、再三の音質向上によって随分と音
質が良くなり、今では不動のベスト盤です。確かに、ステレオではないので音の拡がりに乏し
いかもしれませんが、正直、驚くほど音質は良く、私の知っている範囲では、トスカニーニの
膨大な録音中、最も音がいいらしいのです。さすがは音質に定評のあるRCA。
彼の芸風が「イタリア」のような抒情音楽と合うのかと思われる方もいるかもしれませんが、
この作品には躍動感があり、ベートーヴェンの交響曲のように勢いが必要なので、まさしくト
スカニーニの芸風とマッチしています。緊張感と活きたリズム、そして時には灼熱のように燃
え立つ迫力。特に第4楽章は、ファンの方なら、すぐに彼だと気づく方も多いのでは。
いえ、イタリア生まれの陽気な性格であるトスカニーニのお得意のレパートリーと言えば、オ
ペラも含め、実はイタリアものが多いのが実情なのです。なぜ廃盤中なのでしょうか。
個人的にはSS評価にしたいくらいの、素晴らしい演奏です。XRCDもあります。
3番目に輸入盤を挙げておきましたが、このCDは2枚組のトスカニーニのメンデルスゾーン
集ながら、約2000円というお安さ。その意味では、1番上の廃盤中の国内盤よりもお薦め
かもしれません。ハイフェッツとの伝説のヴァイオリン協奏曲つきです。
国内盤にこだわりたいという方は、4番目のHMVへのリンクのXRCDをどうぞ。
54年という録音がどうしても気になる方には、アバドの新盤をお薦めしたいです。アバド&
ベルリン・フィルはこれといった名録音をほとんど残せませんでしたが、この演奏は数少ない
成功例の一つです。アバドの持ち味である抜群の音楽性が活き、夢想の世界を感じさせます。
ステレオ録音のベスト盤といったらアバド&ベルリン・フィル(95)で決まりのようです。
カップリングで考えれば、「真夏の夜の夢」とカップリングのこのCDはかなりお薦めです。
4番手としては、アバドの再発売盤。評価は新盤にはかなわないので、お薦め度を下げました。
その下にあるのは、「スコットランド」とのカップリングという美味しい1枚ですが、いつ廃
盤になるのかは分かりません。
ちょっと珍しいのがガーディナー盤。何と古楽器演奏の第1人者的指揮者の1人であるガーデ
ィナーがウィーン・フィルを指揮したもの。楽譜も他の演奏とは違うらしいのです。
この作品は、以上の演奏が抜きん出た評価のようです。個人的には、何とかトスカニーニの国
内盤の再発売を願うところです。
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