エボラ出血熱が西アフリカで過去最大の流行となっている。病原体のエボラウイルスは野生動物に寄生しており、ヒトが感染すると致死率が極めて高い脅威の存在だ。有効な治療法はなく、生態や感染の仕組みも謎が多い。被害の深刻化を受け創薬研究が加速しそうだ。(黒田悠希)
エボラウイルスは1976年、中央アフリカのコンゴ(旧ザイール)を流れるエボラ川沿いの流行で発見され、その名が付いた。
空気感染はせず、接触で広まる。潜伏期間は最長21日。発熱や頭痛など風邪に似た症状が起きる。進行すると消化器系を中心に全身から出血し、多臓器不全を起こす。致死率は今回の流行で約50%、過去は最悪で90%に達した。
ウイルスは糸状で、DNAより原始的なRNAと呼ばれる核酸が遺伝情報を担う。RNAはタンパク質の殻に覆われ、さらに外膜に包まれている。外膜の表面にはタンパク質と糖でできた多くの突起があり、これを使ってヒトの細胞の膜に付着し、感染する。
細胞が外部の分子を取り込む機構を使って丸ごと侵入し、ウイルスと細胞の膜が融合してRNAなどが細胞内に飛び出す。細胞内の小器官を利用してRNAやタンパク質を合成し、それが細胞膜の近くに集合。膜を破って子孫ウイルスが外に出て、また別の細胞に感染していく。
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