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「テストで100点とってもほめられない」時代へ テクノロジーの進化は、教育になにをもたらすか?

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「テストで100点とってもほめられない」時代へ テクノロジーの進化は、教育になにをもたらすか?

テクノロジーの進化に伴い、仕事のあり方や暮らし方が急激に変化している。にもかかわらず、子供への教育方法は全く変わっていない。今こそ、大人が子供たちの未来のために本当に必要な教育を考えなければならないのではないか……。「これからの未来に必要な教育」について株式会社アソビズム代表取締役・大手智之氏が語りました。(TEDxSakuより)

【スピーカー】
株式会社アソビズム代表取締役CEO 

【動画もぜひご覧ください!】
これからの未来に必要な教育とは?: Tomohisa Ote at TEDxSaku

なぜ子供たちに教育をするのか?

大手智之氏:教育とは……。僕たちはなんで、子供たちに教育するんですかね。例えば、こう言い換えることもできます。僕たちは何のために教育を受けてきたのか。僕はこう考えています。教育は、未来を生きる力を養うためにあると。例えば将来、どういう風な社会が起こり得るのか、どんな能力が世の中に出た時に必要になるのか、そんなことを考えながら教育をしていくのが教育の基本的な考えだと思います。

ほんの半世紀程前は、子供たちが小さいころから大きくなるまでの間に世の中が必要とする能力にはそんなに大きな変化はありませんでした。農家の子は農家になったり、商人の子は商人になったり、子供たちの目の前にいる大人たちの暮らしがそのまま自分たちの将来として未来に広がっていました。

しかし現在、テクノロジーの進化はめまぐるしいものがあります。一節には、僕らの子供たち、2011年に小学校に入学した子供たちが大人になるころまでには、65%以上の仕事が今はない仕事にとって変わるという研究発表もある程です。そんな中で、今、教育のことを考えた時に、50年間教育の内容というのはほとんど変わっていません。

テクノロジーの進化がもたらしたもの

なぜなんでしょうか? このままでいいのでしょうか? 未来と教育。今日はこの二つのキーワードを使ってこれから必要な教育についてみなさんと一緒に考えたいと思います。未来と聞いて皆さんはどのような世界をイメージしますかね? 僕が真っ先に思い描くのはこの人です。シルエットクイズです。というのは冗談で、実は著作権の関係で(笑)。

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さぁ、誰でしょう。アルクマくんではないですよ。ふなっしーでもないですよ。そう、ドラえもんです。彼が生まれたのは今からちょうど100年くらい後の2112年ですね。4次元ポケットから秘密道具を次から次へと出してわくわくした子供時代っていうのがあって皆さんたぶんそうだったと思うんですけど。今日はですね、実は、4次元ポケットを持ってきました。

子どもと一緒に作ったんですけど、どんなものが入っているか、ちゃんと秘密道具も入っているんですよ。じゃん! ぱぱぱぱっぱぱーん。

(会場笑)

これ、糸なし糸電話っていう秘密道具です。

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なんとですね、糸がないのに遠く離れた人と電話することが出来るっていう……。これ、携帯電話ですよね。こんなのがあったんですね、ドラえもんの中に。もう一つ。トレースバッチ。これはですね、体に付けたり、モノにつけるとそれが世界中のどこにいても専用レーダーで場所がわかるという優れた秘密道具なんですよ。これ、GPSですよね。今、こうやって僕らの目の前に当時夢見ていた秘密道具というのがどんどん完成し始めているんですよ。

もちろんまだまだできていないものもたくさんありますけどね。そうやってテクノロジーの進化が僕らにもたらしているものは、暮らしの変化だったり仕事のあり方の変化という風なことが起きています。

テクノロジーが世の中を刷新する

例えばわかりやすい例で言うと、駅の改札口。それから銀行のATM。僕が小さい頃と言えば、駅の改札口に行ったらおじさんがパチパチやっていたんですけど、今はよっぽど田舎に行かないと見れないですよね。ATMは、僕が銀行口座を持つようになってからは大体ATMだったんですけど、昔はお姉さんとかがやってたと思います。

あと最近研究が続けられている自動車の自動運転技術。これがもし完成すれば、たぶんバスやタクシードライバーの運転っていうのはほとんどいらなくなるんじゃないかなというふうに言われています。こうやってテクノロジーの進化が新しく仕事を変えていくということは実は過去にもたくさんあったんです。

今からちょうど200年前の18世紀に起きた産業革命の時代。蒸気機関というのが開発されたんですよ。蒸気機関の発達で人々の仕事のあり方というのが大きく変わってですね、例えば馬がいらなくなって、重労働もいらなくなって、もっともっと効率的にいろんなことが開発できるようになってきました。

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そして私たちが今、生きている現在は情報革命の時代と言われています。情報革命も産業革命と同じでコンピュータテクノロジーを使うことを覚えた人たちが、今までとは考えられないスピードで世の中を刷新するサービスを作り続けています。

例えばGoogleとか、Facebook、twitter、YouTube。最近出てきたこういうサービスは今まで10年かかっていたようなことを、たったの1年でやっちゃうくらいのインパクトがあって、ものすごい進化を遂げています。

たぶん、ここにいる若い人たちとか、多くの若い人がこれらのサービスを一つも使ったことがないという人はいないんではないでしょうかね。こういうテクノロジーの進化が仕事を変えていくっていうことのわかりやすい例が一つあるのでみなさんにご紹介します。

仕事のあり方は変わるのに、教育のあり方が変わらない

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これは、新聞の記事を自動的に作成する人工知能プログラムです。ナラティブ・サイエンスという名前です。アメリカの大手の経済誌のForbesは、今から数年前からこの人工知能プログラムを使って経済ニュースを自動的にWebサイトにアップロードするようなことを始めています。コンピュータのすごいところは、人間だったら不可能と言われる膨大なデータを24時間365日、常に監視することが得意なんですよね。

例えば株価。株価の情報といえば高値が更新した。こういったことが起きた時に、コンピュータだったら瞬時にそれをニュース記事にしてWebサイトにアップロードすることが出来ます。面白いのは、このテクノロジーで一番喜んでいるのは実は記者なんですよね。何でかと言うと、今までつまらないと思っていた仕事を全部人工知能がやってくれるわけですよ。その代わり自分たちはよりクリエイティブな面白い仕事だけに没入できる。

これが、一つの例にしか過ぎないですけど、僕は、テクノロジーの理想的なあり方じゃないかなと考えています。未来はそうやって次から次へとテクノロジーが生まれて仕事や暮らしのあり方が変わってきます。なのに、教育のあり方は変わっていかない。じゃあこれから未来の教育ってものをどうしたらいいかということをみなさんと一緒に考えたいと思います。

未来をより良くするためには「」が一番大切

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ところで、僕、ゲームクリエイターなんですけど、ゲームクリエイターが教育の話をするっておかしな話ですよね。しかも顔がこんなに真っ黒なんで、ゲームクリエイターっぽくない感じもするんですけど。実は僕はゲーム業界に20年くらいいるんですけど、ゲーム業界に入った時から教育にはずっと興味がありました。

最初に僕が作ったゲームは『免許を取ろう』というゲームなんですけど、教習所に通って勉強している時にものすごくつまらなくて、眠くなっちゃって、これをもっとゲームっぽく楽しくできないもんかなぁ、と思ったところから作ったのが、その『免許を取ろう』なんですよ。その後、楽しくダイエットをするゲームとか、楽しく受験勉強をするゲームとか、とにかくゲームというのはものすごくたくさんノウハウがあるので、それをなんとか夜の中に役立てられないかずっと考えてきました。

で、今から6年前に娘ができました。その時に、気づいたんですよね。世の中をゲームで良くするっていうのをもちろんやりたいんですけど、今あるものを良くするだけじゃなくて、これから未来のことを考えた時に確かなことが一つあるとすれば、子供たちがいずれ大人になるということなんですね。

であれば、教育がもしかしたら未来をより良くするためには一番大切なんじゃないかと思ったんですね。よし、じゃあ教育で何かやろう。と考えたのがきっかけですね。もう一回ちょっと、話を戻します。ここで一つ、おもしろい絵を見せたいと思うんですけど、今、普通教育で一般的にはテストって言うものが導入されていますよね。

皆さんも受験勉強とかされた方いると思うんですけど。何でテストするかって言うと、テストでその人がどれだけの能力を持っているかっていうのを計るのが一番簡単でわかりやすいからですよね。でも、考えてください。膨大なデータの中から正しい答えを導き出すのってコンピュータが最も得意とするところなんですよ。

これからの時代に社会から求められるスキル

例えばこれは、IBM社が開発したワトソンという人工知能プログラムなんですけど、アメリカの人気クイズ番組にJeopardy!っていうのがあるんですけど、それで、過去最高の連勝記録を持っているチャンピオンを負かしちゃったんですよ。例えばこんな問題です。

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パッと見てすぐに瞬間的に判断するのが難しいような抽象的な問題がでるようなクイズ番組なんですよね。それをですね、ものすごい文章解析アルゴリズムを使って瞬時に把握するわけですよ。膨大なデータベースの中から正しい答えをチャンピオンよりも次から次へと早く答えを出して圧倒的な点数差で勝っちゃったんですよ。

この例からもわかるようにコンピュータって言うのは学習アルゴリズムが進化すれば人間よりもデータを覚えて答えを示すというのが得意なところなんですよね。ちなみにこれの答えはわかりますかね? TEDxです。

チェスの世界、頭脳戦の世界でも1997年にディープブルーという人工知能プログラムが人間のチャンピオンを負かしちゃったんですよ。もうチェスの世界では今チャンピオンは人間ではないんです。コンピュータです。そして、これからたぶん、テストというものの価値がどんどん下がっていくと思います。テストで良い点をとるということが人間の評価ではなくなっていくと思います。

その例が一つあります。今Googleでは、学歴、成績問わず。と打ち出しています。採用に関して。そして人事採用者も学校の成績、テストの点数は、その人の潜在能力を計る上では何の参考にもならないと言っています。これが今、実際の社会が求めているスキルなんです。

じゃあこれからどうしたら良いのか。僕たちはどういう風に子供たちを教育していけばいいのか。それは人間にしか出来ないことを伸ばせば良いんです。得意を活かす。例えば芸術的なセンスや人を感動させるような力に代表される想像力ですよね。

テクノロジーよりも前にまず想像力

想像するという力は人間だけに与えられた特別な力です。コンピュータはこれが出来ません。今の段階ではね。想像するというのはテスト勉強をやるようにどんどん積み重ねるものじゃないんですよ。感覚、五感そういったものを使いながらいられる環境の中でしか養えないものなんです。

例えば今インターネットでたくさんの情報がありますよね。本屋に行ってもたくさんのHow to本、マニュアル本があります。子供の病気一つとっても、今、目の前に子供が病気でいるのに、その顔色とか息づかいとか臭いとかを全く無視して、インターネットの情報でなんとか病気に対応しようとする大人が増えているんです。

これだと感覚がどんどん鈍ってきますよね。僕は長野に来てから山に行ったり、キャンプに行ったり自然体験をすごくするようになってきたんですけど。それで顔がこんなに黒くなっちゃったんですけど。キャンプに行くと最近多くの人が火をおこせないし、かまどでご飯が炊けないんですよね。

別にそれは初めてだから良いんですよ。でもそういった初めてのことを頭で考えてもわかるわけがないんですよ。だから僕は、触ったり、音を聞いたり、匂いを嗅いだりすれば中を想像できるからそうすればいいのに。感覚を使って、五感をフルに使ってよ、と思うんですけど。

でも若い人はどうするか。スマートフォンで調べるんですよ。「かまどでのご飯の炊き方」別に情報を集めるのは良いんですけど、それをやっていたら感覚がどんどん鈍ってくるし、最終的には「私の夢は」とかってGoogleに聞くようになったり、Amazonからリコメンドで「あなたにふさわしい奥さんです。」なんて言われるようになっちゃう訳です。

それでは主従が逆転しているんで。あくまでも主は人間です。想像力を使ってコンピュータテクノロジーを使っていかなければダメなんです。そういう風に常々考えています。

子供に情報を与えすぎると思考が停止する

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ちょっと紹介したいのがあるんですけど、これが私の娘が通ってる幼稚園です。長野にあります。僕は長野に東京から移住したんですけど、この幼稚園に通わせたいっていうのも半分くらいの理由としてありました。ここでは3歳から6歳までの子供たちが一つの家族のように野山を駆け巡って日々暮らしています。

例えば、薪を割ったり薪を運んだり、かまどで火をおこしたり、木に登ったり。五感をフルに使って毎日そういう風な暮らしをしています。例えば子供たちってテレビとかゲームとか、キャラクターみたいなものにものすごく反応するんですよ。でもそういうものを与え過ぎちゃうと子供の想像力というものをどんどん鈍らせちゃうんじゃないかなと思っています。

うちは数年前からテレビは見ないようにしているんですけど、子供たちって退屈な時間があるとどうなるかって言うと、自分の世界で想像しだすんですよね。「退屈は想像の入り口」という言葉があるんですけど、やっぱり子供っていうのはあまりにも情報を与えすぎると想像力が思考を停止しちゃうんです。

未来に備えたテクノロジー教育

こういう自然の中で本当に自由にさせると次から次へと内面の世界を自分で発掘して、想像力っていうのはたくましくなっていくものじゃないかなって思っています。それで、想像っていうのをやって、その後ですね、自分自身が想像というのを十分に味わってファンタジーの世界を味わった後。

これが大体10歳くらいだと思うんですよ。多くの教育学者が10歳までで内面のファンタジーの世界は終わるって言ってるんですけども、この10歳までは僕は十分な自然体験をやって欲しいと思います。

10歳から後ですね。これはコンピュータの産みの親であるアラン・ケイっていう方なんですけど、この方も10歳はとても大事な年齢だと言っています。10歳に体験したことが10年後、大人になって開花すると思っています。僕が初めてコンピュータに出会ってゲームを作り始めたのが実は小学校4年生のちょうど10歳の時でした。

ここの目の前にあるパソコンは、その当時僕が使っていたパソコンです。そうやって、自分たちが今まで自然体験をして想像力を使って、その後何を学んでいくのか。私が是非、子供たちに勧めたいなと思っているのは最新の未来に備えたテクノロジー教育です。

例えばゲーム開発だったり電子工作。これは僕達が取り組んでいる未来工作ゼミっていうゲーム開発。電子工作をするワークショップです。先日、小布施の浄光寺で開催させてもらいました。この時はマサチューセッツ大学が作ったスクラッチというゲーム開発ツールがあるんですけど、それを使って子供たちにゲーム開発を体験してもらいました。

自分のアイデアを形にする力を養って欲しい

プログラミングというとすごく難しいものを大人は考えるんですけど、ものすごいシンプルなブロックをただ組み合わせるだけなんですよね。プログラムのロジックっていうのはそんなに難しいものではなくて、ちょっとやれば、30分くらいやれば子供たちはすぐに反応して自分のアイデアを形にしていきました。僕らが一番やりたいのは、ゲームプログラムを作りたいわけではないんですよ。

プログラミングを勉強して欲しい訳でも……。まぁ、プログラミングはやって欲しいんですけど、プログラマーになって欲しいわけではないんですよ。こういったことを取り組むことによって、自分のアイデアを形にする力っていうのを養って欲しいんですよ。今インターネットがあるおかげで自分のアイデアを世界に発表するのが簡単になってきていますよね。

そして、こういうコンピュータプログラムを学べば自分のアイデアを形にしてより具体的に世の中に提案できるようになります。そういった力を子供たちには是非身につけて欲しいなと考えています。でも、ここで気をつけなければいけないのは、さっきも申し上げたとおりテクノロジーというのを先に持ってきてはダメなんですよね。

大人が子供のために「未来に本当に必要な教育」を考えるべき

今、早期教育で出来るだけ早いうちに子供たちに教えようという流れがあると思うんでうけど。あるいはそういった流れに疑問を感じている人が出てきていると思うんですけど、テクノロジーはある程度自分の内面性が確立した人に与えるべきだと思います。

それが出来ていない人に与えると、さっき言ったように感覚を無視して知識に頼るような人間になってしまうんです。このバランスが重要です。感覚と創造力を養うための自然体験。そして、未来に備えた最新テクノロジーの教育。この二つのバランスを理想的な形で提供していくのが僕はこれから未来にあるべき教育の形だと思っています。

そして長野。自然が豊かですよね。これだけ自然が豊かな長野で、しかも、もともと教育県。今もポテンシャルが相当高いと思います。長野だからこそ、こういう未来のチャレンジっていうのが適しているんじゃないかと考えています。最後になりますが、20年後の未来についてもう一度最後に考えたいと思います。

僕の教育学はあくまでも僕の考えなので、これが本当に正しいかどうかというのは未来を見てみないとわからないです。でも、確実に確かなことが言えるとすれば、僕らの子供たちは僕らの想像できない未来にこれから生きていくことになります。だから、僕ら大人が子供たちのためにできることがあるとすれば、未来に本当に必要な教育を考え続けるということなんじゃないでしょうか。今日はありがとうございました。

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