原発ADR:和解案8割、半額以下…「一律基準」裏付け
毎日新聞 2014年09月02日 07時20分
東京電力福島第1原発事故の賠償問題を裁判外で解決する手続き(原発ADR)を担当する「原子力損害賠償紛争解決センター」が、避難後に死亡した人の慰謝料に関して示した約120件の和解案のうち80%超で、「原発事故の影響の度合い」を5割以下と算定していることがセンターへの取材で分かった。避難後の自殺に関し約4900万円の賠償を命じた先月26日の福島地裁判決は「8割」と認定しており、原発ADRで慰謝料が低く抑えられている実態が裏付けられた。【高島博之】
◇裁判では「8割賠償」認定
センターは、和解案で提示する死亡慰謝料を「基準額」×「原発事故の影響の度合い(%)」で算定する。このため、度合いに関する判断は支払額を大きく左右する。
取材に対するセンター側の回答や、被災者側弁護団に対するセンターの説明を総合すると、これまで示された死亡慰謝料に関する和解案は約120件。原発事故の影響の度合いで最も多いのは「5割(50%)」で、五十数件と全体の四十数%を占めた。さらに「5割未満」も約40%あり、「5割超」は20%弱しかなく、80%超は5割以下だという。
センター側は基準額についても、交通事故の賠償額より数百万円低い2000万円未満に設定している。このため、和解案額の平均は数百万円にとどまるとみられる。
死亡慰謝料算定を巡っては、内部文書の存在が既に明らかになっている。文書は因果関係が相当に認められる場合「一律5割」、5割の判断に無理がある場合「例外的に1割」などと記載しており、これに沿った判断が積み重ねられているとみられる。
一方、避難中に自殺した女性(当時58歳)の遺族が起こした損害賠償訴訟で、福島地裁は強いストレスを重視した。原発事故の影響の度合いを8割と認定して、東電に約4900万円の賠償を命じた。
この訴訟の中で、東電は文書を提出。原発ADRで(1)避難区域から県外に避難した男性(当時30歳)や、旧緊急時避難準備区域に住む女性(同63歳)が自殺したケースで、原発事故の影響を各10%(2)自主的避難等対象区域の農業男性(同64歳)が自殺した事案で30%−−と算定していることを挙げ、裁判でも原発ADR同様、原発事故の影響の度合いを低く算定するよう主張していた。