原爆ドームに花を手向ける初老の男性(山本 學)。
小学校の先生が子どもたちに、62年前原爆が投下された時のことを
説明するのを聞きながら、手を合わせます。
「ゲン!
ゲン!何しとるんじゃ。」
父の声が頭の中で蘇り・・・
昭和20年6月。
太平洋戦争末期の広島。
慢性的な食糧難が続き、朝晩の区別なく空襲警報が鳴り、
日本は敗戦への道を着実に進んでいた。
しかし国は徹底抗戦の構えをますます強くし、二十歳前の少年
たちにも赤紙が届き、一方で戦死の報せが相次いだ。
そんな中、中岡大吉(中井貴一)は下駄の絵付け職人を営みながら、
妻の君江(石田ゆり子)に支えられ、4人の子供たちを懸命に
育てていた。
家族思いの長男の浩二(中尾明慶)、
体が弱いながらも家事を手伝う長女の英子(小野明日香)、
腕白で口は悪いが底抜けの明るさと優しさを持つ元(小林廉)、
末っ子で甘えん坊の進次(今井悠貴)。
そして近くもう一人子供が生まれる。町外れにある麦畑では、まもなく豊かな穂が実る。
麦畑からひょっこり顔を出すゲン。
足は裸足。麦はまだゲンの胸ぐらい。
「あーーーっ!気持ちええーのーーーっ!」と思いっきり伸びをする。
麦に止まったテントウムシに目を輝かせる弟・進次。
「進次!」「アイヨ!」
声を掛け合い二人。
兄と弟のチャンバラごっこ。
草むしりに文句を言う子供たちに、大吉が言う。
「この麦はの、冷たい冬に、霜柱押しのけて芽を吹くんじゃ。
何べんも何べんも踏まれて、逞しい大地に根を張る。
そんでまっすぐ大きく伸びて、豊かな穂が実るんじゃ。」
父の決まり文句に、またか、というように頷きく二人。
麦が実るのを楽しみにしている兄弟。
パン派のゲン。うどん派の進次。
ゲンがパンを食べる真似を始めると、進次が欲しがる。
充分な食料などなく、ひもじい思いをしているのに、
子どもたちは素直で、元気いっぱいで、そして健気です。
「父ちゃん、食いたいよ。」腹の音がなり、父に文句を言うゲン。
「ゲン、進次。
お前ら、この麦のように生きるんで。」
父の言葉に、
「踏まれても強うなれと言いたいんじゃろ。
もう聞き飽きた!」とゲン。
「踏まれたら痛いわ。」と進次。
「踏まれるくらいなら弱くてもええわ。」とゲン。
そんな二人に父のゲンコツが飛ぶ。
そんな父にアッカンベーをして、楽しそうに走り出す2人。
「ダンダン・ジャガイモ・サツマイモ♪ホイホイ!」
歌いながら麦をかきわけ進んでいく。
父にアッカンベーしたあとの子どもたちの笑顔。
親子の信頼関係を見た気がしました。
子どもたちが麦畑を走ったあとに出来た、麦の道。
あの倒された麦は、また力強く立ち上がるんですね。
すごく綺麗な描写でした。
広島市は、中国山脈を背に、瀬戸内海を望む町だった。
東京や名古屋、大阪などの町が激しい爆撃を受けるなか、
人口40万人のこの都市だけは、
なぜか、まだ大きな被害がなかった。
店先に並べられた空き瓶。
お人形を可愛がる赤いオーバーオール姿のオカッパの少女。
「ダンダン・ジャガイモ・サツマイモ・ホイホイ♪」
声を合わせて歌いながら家へ向うゲン、進次、そして大吉。
その時、空襲警報が鳴り響く。
大吉は進次をリヤカーの乗せると、ゲンに後ろを押させ、
リヤカーを引いて急いで家に戻る。
日めくりカレンダーを引きちぎる長男・浩二。
6月25日。午前7時52分。
「学校へ行く時間だっていうのに。」と長女・英子。
家族は急いで庭の防空壕に避難する。
広島の町を攻撃していくアメリカ軍。
「朝っぱらから堂々と攻めてくるんじゃ、
日本はこの戦争に負けるの。」大吉が呟く。
軍部が本土決戦、国民総玉砕を唱える中、大吉は徹底して
反戦を唱えていた。
空襲警報が解除される。
「腹減ったなー、あんちゃん!」進次が言う。
ゲンは空を見上げて叫ぶ。
「おい!アメ公!
爆弾落とさんで米落としてくれー!」
「うどんでもええよー!」進次が続く。
昭和20年6月のこの時期、南方の戦地や沖縄では、
日本軍の玉砕が続いた。
日本の敗戦は色濃くなり、
広島でも食糧難で、米の配給が途絶えていた。
一方、戦局で優位に立ったアメリカでは、
その数年前から極秘の計画が進められていた。
科学者による、原子爆弾の開発である。
学校。
頭の上に爆弾が落ちてきたときの身の守り方を習うゲンたち。
「親指を耳に入れ、残った指で目をふさぎ、
地面にうつぶせに寝ます!」
ゲンの素早い動きを誉める校長。
女たちは、火を消す訓練。
妊娠中の君江を気遣う婦人たち。
だが君江はやめようとしなかった。
竹やりの訓練をする町の人々。
その中にいた大吉のおならに、町内会長が激怒。
「芋ばかり食うてるから仕方ないでしょ。」と大吉。
「精神がたるんでるからだ。
日本人として恥を知れ!
非国民はたたき出すぞ!」
「おい。町内会長さん!
屁をして非国民と言われちゃたまらんの。
出物腫れ物、所嫌わずじゃ。
大体、こんなもんでアメリカ兵を倒せると思っとるんか?
向こうて行く前に、機関銃で皆殺しにされるわ。」
「なんじゃとー!」
「日本は戦争してはいかんのよ。
あんたら、戦争の熱病にかかっているだけじゃ。」
「キサマ!戦争に協力せんのか!」
「今に、戦争の馬鹿らしさがわかるわ!」
大吉はそう言うと、竹やりを投げ捨てその場を去る。
大吉の言葉に激怒する町内会長。
その日の夕食は、さつまいものツル。
食べ盛りのゲンたちが文句を言い出す。
「兵隊さんになったら米食えんのかの。
父ちゃん、兵隊さんになったらええのに。」とゲン。
「父ちゃんはゲタの職人じゃけ、兵隊には呼ばれんのよ。」と君江。
「そんなら、田舎に疎開したら米が食えんのかの。
姉ちゃん、疎開せーよ。」とゲン。
「英子は行けんの。体が弱いけ。」と君江。
「わしが代わりに行ってもええよ。」
大吉がゲンを睨みつける。
「浩二、明日工場の寮に帰るのよね。」
「うん。行ったら、また2週間は帰ってこられん。」
「あんちゃんが働いておる呉には、米があるんか?」
「食べるものはどこにもないんじゃ。」と大吉。
「父ちゃんは夢がないのー。」
「夢がないのー。」ゲンと進次が呟く。
妊娠中の君江は、自分のさつまいもを差し出す。
我慢できずに口にほうばる進次。
ゲンがそれを奪おうと、兄弟げんかに。
すると、大吉が二人の頭をパチン!
「このクソ親父!」
「どの口が言うた!この口か!」
「アイタタタタ。ごめんなさい。」
「もうすぐ日本は戦争に勝つよ。
そしたら腹いっぱい食える。」と浩二。
「そうじゃ!」とゲン。
「何を言っとる。日本は戦争に勝つわけないで。」
「勝つよ!工場の先生が言っとった!」
「みんな嘘をついとるんじゃ。
みんな、騙されとるだけじゃ。」
「・・・」黙り込む浩二。
「本当に父ちゃんは、夢がないのー。」ゲンが呟く。
夜。
子どもたちが眠ったあと、下駄に絵を入れる大吉。
君江も夫の仕事を手伝っていた。
眠った子どもたちの布団を直す君江と大吉。
「さっきは殴ったりして勘弁してくれの。
食い盛りのお前らに罪はないんじゃ。」
「ほんまに、いっぺんでええけ、お米食べさしてやりたいですね。」
子どもたちの寝顔を見つめてそう呟く。
大吉は、出来上がった下駄を翌日問屋に持っていき、
そのお金で米を買おうと提案する。
仕事の材料を買うお金がなくなると心配する君江に、
「この子らに、ぼた餅作ってやろう。」と大吉が笑顔で言う。
その時、空襲警報が鳴る。
反射的に飛び起きる長男長女。
寝ぼけたまま体を起こすゲン。
末っ子は、食べ物の夢を見てニッコリ。
朝。
工場に戻っていく浩二を見送る家族。
「浩二、工場の仕事は辛いんか?」大介が聞く。
「学生じゃ言うて勉強しとる場合じゃないんよ。
戦争に勝つには働かんと。」
「・・・」
「お国の為に、頑張ってきます!」
浩二が笑顔で出かけていく。
兄を見送ったあと、ゲンと進次は
「家族が一人減って飯が沢山食える!」と無邪気に喜ぶ。
そんな様子に、複雑な表情を浮かべる大吉。
英子、ゲン、進次が、リヤカーに父の下駄を乗せて問屋へ向かう。
ぼた餅が食べられると子どもたちは上機嫌。
そこへ、町内会長の子どもとその子分たちが石を投げつけてくる。
「お前らの親父は町内の恥や!
戦争に反対する悪い者じゃ!成敗してやる!」
ゲンたちは抵抗するも、父の下駄は川に捨てられてしまう。
「あんた!許さんよ!」
町内会長の息子に掴みかかる英子。
「非国民に、文句言う資格ないわ!」
少年が英子の顔を殴る。
「よくも姉ちゃんをやりやがったな!
よくも父ちゃんの悪口を!」
ゲンは顔を真っ赤にして少年に掴みかかる。
倒されたゲンは、相手の手に思い切り噛み付く。
子分がゲンの頭を棒で殴りつけると、解放された少年は、
子分と共に逃げ出した。
ゲンたちは川からゲタを拾い集め、洗って問屋に持っていったが、
売り物にならないと、お金を貰うことは出来なかった。
家の前に止めたリヤカーに、泥だらけのゲタが積まれている。
英子たちはリヤカーを川に落としたと、大吉たちに泣きながら謝るが、
子どもたちの怪我に気付いた大吉、
「何があったんだ。
父ちゃんの顔を見て、言うてみ。」
父に問い詰められ、ゲンが口を開く。
「父ちゃん!戦争に行ってくれ!
戦争に行って、沢山敵を殺して、
勲章を貰ってくれ!!
戦争に反対する父ちゃんなんか嫌いじゃ!!」
ゲンはそう言い捨て、部屋を飛び出していく。
「お前ら・・わしの為に何かされたんじゃな。」
「町内会長の息子にやられた・・」と栄子。
「非国民と言われたよ・・」と進次。
「わしが竹やりの訓練をバカにしたからじゃ・・。
それで子ども使って!」
そこへ、憲兵がやって来る。
大吉は逮捕され、投獄されてしまう。
子どもを怪我させられた町内会長が、警察に密告したのだ。
反戦主義者への取調べは厳しく、拷問に近いものだった。
大吉は、憲兵に殴られながらも必死に訴える。
「わしら、もう充分に戦争に協力しておる。
長男は、勉強出来んで、工場で武器作りをしておる!
下の子らは、腹を減らせて、芋を取り合ってケンカしておる!
わしら我慢しておる!
これでも戦争に協力しとらんと言われる気か!?」
「黙れ!そんなことは日本人として当たり前のことじゃ!
戦争に勝てば日本はようなる!」
「嘘じゃーっ!
わしゃ騙されん!
戦争はわしらを不幸にするばっかりじゃ!」
「黙れっ!!」竹刀で大吉の背中を殴り続ける憲兵。
「あんたの考えは、危険思想ですね。」
中岡家。
茶碗に箸を立ててみるゲンと進次。
「今日も箸が立たんのー。」
「豆が入っとらんけ。」
「汁だけじゃ腹に溜まらんよ。」
二人が文句を言う。
「我慢して食べんさい。」と母。
「・・・何でじゃろ。」とゲン。
「何が?」
「父ちゃんがおらんとつまらんの。
おるとうるさいのにな。
何でかな。」
「変な子じゃね。」と英子。
「でもそうなんじゃ。
頭をゴツンとされんと元気が出んよ。」
ゲンはそう言うと、自分の頭を叩いてみる。
それを進次も真似をする。
警察に面会に行く君江たちは、大吉の殴られて腫れ上がった顔に
驚き心配する。
「今の日本で、戦争に反対するとこうなる。
心配すんな。
体は傷つけられても、心の中までは傷つけられとらせんわ。
ええかお前ら。
自分が正しいと思ったことを、安っぽう負けちゃいけんで。
わしら何もない貧乏人が、心の中の誇りまで取られとったら、
何を支えに生きとったらええんじゃ!」
警官が慌てて大吉を家族から引き離す。
「君江!わしは当分帰れそうにない。
子どものことを頼むぞ!」
「はい!」
「ゲン!畑は任せたで。麦を立派に育てるんじゃ!」
「わかったよ!父ちゃん!!」
「忘れんな。ゲンは、元気のゲンじゃ!」
殴られた顔で微笑み、そう告げる大吉の言葉を、
ゲンは必死に受け止めようとしていた。
弟と一緒に畑の手入れに向かうゲン。
町内会長が警官と一緒にいる所を見かける。
彼が警察に密告したと知ったゲンたちは、
「父ちゃんの仇!!」
町内会長を待ち伏せ、彼の手に思い切り噛み付いた。
夜、町内会長と息子が中岡家に怒鳴り込んできた。
子どもたちを警察に突き出すと、家に上がりこむ。
ゲンたちから理由を聞いていた君江は、
子どもたちを守ろうと必死に立ちふさがるが、
町内会長はそんな君江を突き飛ばす。
「こん子らは、うちの宝じゃ!
女じゃ思うて、甘う見なさんなよ!」
「女のくせに文句言うな!」
君江の顔を叩く町内会長。
「母ちゃん!!」ゲンたちが泣き叫ぶ。
すると君江は台所から包丁を持ち出し、町内会長に刃物を向ける。
「子どもは絶対に渡しません!
警察に連れていかれた主人の傷は、
あんたの傷どころじゃないんよ!」
騒ぎを聞きつけた隣人の朴が、君江の手から包丁を奪い取る。
「悔しい気持ちはわかる!
でも、奥さんが人殺しになったら、
残された子供たちはどうするんです!」
家を飛び出した町内会長は、
「みなさん!中岡一家は恐ろしいやつらです!
ワシを殺そうとしました!
この一家は、とんでもない、非国民です!!」と触れ回る。
その場に座り込む君江に、
「母ちゃん強いのぉ!」「すごいな、母ちゃん!」
ゲンと進次が笑顔で言うと、英子は二人の頬を叩く。
「ゲンのバカ!進次のバカ!
なんで二人を殴るん?
あんたら、どんな訳があろうと、
人様に傷させるんじゃないよ。
わかったね?
わかったね!!」
母の真剣な眼差しに、頷く二人。
「・・・じゃけど、あんたら、ようやったね。」
母が二人を抱きしめた。
町の人が中岡家に石を投げ込む。
怯える子どもたちに、
「泣いたらいけんよ。
何を言われたって泣くもんじゃない。
あんたらの父ちゃんは、正しいことを言うとる。
戦争に反対するんは勇気がいるんよ。
父ちゃんのことを、誇りに思うんよ。
あんたらは、父ちゃんの言うように、麦になるんよ。
踏まれても、太う真っ直ぐ伸びる、麦のようになるんよ。
ええね!」
母の言葉に泣きながら頷くゲン。
町内会長は町の人々に、中岡家と付き合わぬよう言いまわった為、
君江は味噌を手に入れることも出来なくなった。
学校。
作文を読む生徒。
『戦地の兵隊さんへ。
兵隊さん、お元気ですか?
お国の為に闘っとる兵隊さん。ありがとう。
僕もはよう大きうなって、兵隊さんになり、
憎いアメリカ兵を沢山殺してやります。』
「よう書けたの。
遠い戦地で戦っている兵隊さんに送って読んでいただこう。
次、中岡。」
「はい!」ゲンが作文を読み始める。
『戦地の兵隊さんへ。
僕の父ちゃんは、日本は戦争をしてはいけん!と言うております。
戦争は人の命を奪って、何もかも壊してしまうからです。
僕も、そう思います。
兵隊さん、死なんで下さい。
お父さんや、お父さんが悲しみますけ。』
先生がゲンの頬を殴る。
「バカたれが!それでも日本男子か!」
「先生が思うたことを書けと言うたけ書いたんじゃ。」
「先生に口答えする気か!」
「正しいと思うたけ書いたんじゃ!
父ちゃん正しいと思う安っぽう考えを変えんなと言うた!」
「なんじゃと!?」
両手にバケツを持たされ、廊下に立たされるゲン。
「父ちゃんの考えは伝わらんの・・。」と呟いた。
工場で働く浩二の元に警官がやって来る。
「二日前、お前の工場で爆発事故が起きたの知っとるな?」
「はい。電機の故障でショートした火花が、
火薬に燃え移ったと聞いております。」
「お前がわざとやったんと違うんか?」
「何で僕が・・」
「とぼけんな!」警官が浩二を殴り飛ばす。
「僕は何も知りません!」
「キサマの親父はな、戦争反対の非国民じゃ。
親父に言われて、兵器の生産止めようとしたんじゃろうが!」
「知らんもんは知りません!!」
警官は浩二を蹴り、踏みつけ、誰に頼まれたのかと追求する。
学校。
英子の友達が、ゲンに、英子が校長室に連れていかれたと
教えにくる。
ゲンが校長室に飛び込むと、英子は下着姿にされていた。
教室の金がなくなり、英子が盗んだと言い張る教師たちに
無実を訴える英子。
「お前らの親父は、戦争に反対しとる非国民じゃ。」
「父ちゃんと、何の関係があるんですか。」と英子。
「非国民なら盗みもやるんじゃ!
それに、お前が取ったところを見た生徒がおるんじゃ!
白状せんか!」
「うちは取っとらん!!」英子が泣きながら訴える。
帰り道。
「ゲン。今日のことは黙っとるんよ。」英子が言う。
「なんでじゃ!」
「これ以上母ちゃんに心配かけちゃいけんの。
じゃけ・・ええね?」
「みんな父ちゃんのせいじゃ!」
「父ちゃんじゃって、辛いけど、頑張っとるんよ。」
「そうじゃけど・・」
涙を拭う英子。
「父ちゃんがおるけ、うちらがおるんじゃないの?」
そう言い微笑みかける英子。
「・・・ほうじゃな!
わしらの父ちゃんは、あの父ちゃんしかおらんもんな!」
「ほうよ!どんな父ちゃんじゃって、うちらの父ちゃんやもん!」
「うん!」
「泣いた顔で帰ると、母ちゃん心配するね。」
「歌を歌って元気出すんじゃ!」
「よし!歌歌おう!」
二人は仲良く歌いながら、家へと歩き出す。
そこへ進次が泣きながらやって来た。
「あんちゃん・・姉ちゃん・・
みんな遊んでくれんのじゃ・・
父ちゃんが非国民じゃ言うて・・。」
「くそ・・」悔しがるゲン。
「・・・進次!歌歌おう!」と英子。
「歌って元気出さんかい、進次!」
二人の言葉に、進次は涙を拭くと、笑顔を浮かべ、
「あいよ!あんちゃん!」と答えた。
「夕空晴れて 秋風吹き
月影落ちて 鈴虫鳴く
思えば遠し 故郷の空
ああ わが父母 いかにおわす」
歌を歌いながら歩く三人の前に、大吉が立っていた。
「とうちゃーーん!!」進次がかけていく。
「・・・帰ってきた・・・。」涙する英子。
ゲンは溢れる涙を帽子で拭うと、ニッコリ微笑み、
父の元へと駆け出した。
父に抱きつく三人。
「寂しかったで。」と進次。
「父ちゃんのバカ!バカバカ!」とゲン。
「もう、どこへも行かんで。」と英子。
「わかった。
もう、どこへも行かんけ。」
「やったー!」
4人は歌いながら、家へ帰っていく。
「父ちゃんが帰ってきたどー!」
七輪でイナゴを焼いていた君江は、ゲンの声に、玄関へと急ぐ。
「お帰りなさい。」正座をして出迎える君江。
「心配かけたの。」
その日の夕食は、イナゴだけ。
「すみませんね。帰ってきたいうのに、お祝いが出来んで。」
君江が大吉に言う。
「わしはええ。
お前らに、辛い思いをさせて悪かったの。」
「父ちゃんがそんな心配すんなよ。」とゲン。
「ほうよ。うちらは、このイナゴを食べてお腹を膨らませるけ
平気よ。」と英子。
「イナゴじゃ、腹が膨らまんよ・・」と進次。
「ほうじゃー。」とゲン。
そこへ、朴が、大吉が帰ってきたお祝いにと、
芋を持ってきてくれた。
ゲンと進次は大喜び。
「なんで、わしらに。」大吉が聞く。
「わしは、戦争に反対している、中岡さんを尊敬しているんです。」
「いや・・しかし・・」
「うちは、父と二人暮しですから、大丈夫です。」
「ほうですか・・なんとお礼を言っていいか・・。
ゲン、進次、英子も聞きんさい。
朴さんはの、戦争で国を奪われての。
奥さんやお子さんをふるさとに残したまんまで、」
ゲンたちは頂いた芋を夢中で見つめている。
「聞いとらんか!」二人の頭を叩く大吉。
そんな様子に楽しそうに笑う朴。
父の久し振りのゲンコツに、ゲンも進次もどこか嬉しそうだった。
干し芋に嬉しそうにかぶりつく進次とゲン。
そんな様子を嬉しそうに見つめる大吉。
君江が自分の分を大吉に渡そうとする。
お腹の子に、と君江に返す大吉。
すると今度は、英子が大吉に自分の芋を渡そうとする。
それを見ていたゲン、
「進次?どうする?
わしらも父ちゃんにやらんといけんかの?」
「わしゃ嫌じゃ。」
「・・・父ちゃん!ワシもやるよ。お祝いじゃけ!」
食べかけの芋を差し出すゲン。
「わしも!
・・・これだけやる!」進次。
二人の頭を撫でる大吉。
「わしはええ。
・・・もう胸がいっぱいじゃ。
お前らの気持ちだけで・・満腹じゃ。」
そう言い隣の部屋で涙をそっと拭う。
「よかったのー、進次!」
「いかったいかった!」
二人は嬉しそうに芋を食べ続けた。
その夜、また空襲警報が鳴る。
遠くの町が、空爆で燃えている。
「岩国の方かの・・」
「不思議ですね。大きい都市はほとんど焼けつくされているのに、
何で広島には襲ってこんのですかね。
今に、恐ろしいことが起きるような気がして
ならんのですよ。」君江が呟く。
昭和20年7月16日
アメリカ・ニューメキシコ州の砂漠で、世界初の原子爆弾の実験が
行われた。実験は成功。ただちにトルーマン大統領に報告された。
7月17日
朝、英子がベランダで泣いている。
「学校なんか行きとうない!」
君江と大吉に泣き叫ぶ英子。
「わしだって、行きとうないよ。」とゲン。
「・・・学校で何かあったんじゃな。」
英子の手を引き学校に向かう大吉。
校長室。
「もういっぺん聞く。
娘が金を取ったっていう確かな証拠があって、
裸にして調べたんじゃな?」
「いえいえいえ・・」と校長。
「いえとは何じゃ。」
「生徒の一人が・・見た言うんで・・」
「それじゃあその生徒をここに連れてきんしゃい。」
「いや・・ですが・・」
「はよう連れてけ!!
娘が盗んだか盗んでないか、ここではっきりさせてやるわ。」
父の迫力に、英子やゲンも怯えている。
別の先生が生徒を呼びにいく。
先生が生徒を連れてきた。
「町内会長の息子じゃ!父ちゃん」ゲンが父に教える。
「お前、娘が金を取ったいうとこ、見たいうんじゃの。
はっきり言うてみ。」
「・・・」
「わしが非国民じゃけ、娘を盗人扱いにしたんじゃないのか?
もし盗んどらんかったら、おどれタダじゃ済ませんけの。」
「中岡さん!子どもを脅すのは、」と校長。
「わしゃ英子の父親じゃ!
子どもを守るのは親の役目じゃ!
自分の子の為なら、わしゃ何でもするわ。
おいっ!!どうなんだ!!」
「・・・見てないんよ・・僕は・・。」
「なら何で先生に言いつけたんじゃ。」
「父ちゃんが・・中岡が憎い憎いって言うけ・・
こらしめたろうと思って・・
ごめんなさい・・。」少年が泣きながら正直に話す。
「ほんまのことをよう言うた。」
大吉は少年の頭を撫でると、先生たちを睨みつける。
「お前らそれでも教師か!
はっきり聞きもせんで、娘を裸にする権利が
お前らにあるか!!」
そう言い、先生を一発ずつ殴りつける。
「父ちゃん!」
止めに入ったゲンを、
「お前は黙っとれ。」と突き飛ばす。
「お前らに子どもを教える資格、ないわ!
お前らの方がよっぽど非国民じゃ!
教え子を戦争に駆り出て、戦場に送り込んで、
先生ぶって偉そうなツラすんな!!
・・・英子、ゲン、帰るぞ。」
田んぼ道、父の背中を見つめて歩くゲンと英子。
「父ちゃん。」とゲン。
「うん?どうした。」
「ううん。何でもないんよ。」
「おかしなヤツじゃなー。
何でものうて呼ぶな。」
父の背中を嬉しそうに見つめる英子とゲン。
「ワシをからかっとるんか?」
ゲンが父を追い抜き、そして振り返る。
「とうちゃん!
わしは父ちゃんが大好きじゃ!
わしも父ちゃんみたいに強うなるけ!」
満面の笑みで大声でそう叫ぶ。
その言葉に微笑む大吉。
「父ちゃん!うちも大好きよ!
うちも父ちゃんのように強うなるよ。」
英子も嬉しそうにそう言うと、弟の後を追いかけた。
その頃、中岡家に突然浩二が戻ってくる。
父を探して走る進次。
「父ちゃん!!
あんちゃん・・兵隊さん・・
じゃけ!じゃけ!!」
家に戻ると、君江が泣いていた。
「どうしたんじゃ?」大吉が聞く。
「わしは戦争へ行く。
海軍航空隊に志願した。
出頭命令を頂いた!」
「浩二・・・何で・・海軍に行く気になったんじゃ!」
「国を守るためじゃ!
国の為ならわしゃ喜んで死ねる!」
「お前本気で言ってんのか?」
「わしは戦争嫌って非国民なんかなりとうない!
海軍に行って鬼畜米兵を叩き潰したるよ!」
「浩二・・・」
「工場の仲間もみんなそう思っとる。」
「親戚の息子が、戦場で撃たれてどんな姿になって帰ってきたか、
お前も知っとるだろう!?」
「命なんか惜しうない!
国の為に死ねれば本望じゃ!」
浩二を思い切り殴る大吉。
「戦争で人殺しをする為に、
お前を育てたんじゃないぞ!!」
「わしは臆病者と言われとうないんじゃ!!」
「命を粗末にすんな!!」
「父ちゃんは腰抜けじゃ!!」
浩二はそう言い飛び出していく。
川岸に座る浩二。
「あんちゃん、何で父ちゃんが嫌がる戦争に行くんじゃ?」
ゲンが隣に座る。
「わしゃ戦争に行かんといけんのじゃ。
親父のせいで犯人扱いにされた。
じゃけ海軍に行って、非国民じゃないことを見せたる!」
「・・・」
「お前らが胸を張って、この町を歩けるようにしたる!
あんちゃん戦争に行って、アメリカ兵を殺しまくったる。
勲章をいっぱい貰ったるんじゃ。」
「・・・わしらの・・為か・・。」
夜、空襲警報が鳴る。
空爆にあったのは、呉の海軍工場だった。
「仲間がおる!わしの仲間が!!
わしは戦争に行くよ!仲間の為にも!!」
そう言う浩二に、大吉はもう何も言えなかった。
浩二の出征の日。
いつもと同じ様に下駄に筆を入れる大吉。
「お父さん、行って来ます。」浩二が大吉に挨拶する。
「勝手にせい。お前はもうわしの子じゃないわ。」
大吉は顔を見ようともしない。
「浩二を見送ってやってつかあさい。
お願いじゃけ。」
君江が頼んでも、無駄だった。
「お国の為に、敵地で見事に死んで参ります。」
浩二が家を出ると、見送りの人たちは隣人の朴だけだった。
「誰も出てこんのか!?
浩二あんちゃんはこれから戦場に行くんじゃ!
もう非国民と言うたら承知せんぞ!
浩二あんちゃん、バンザーーイ!」ゲンが叫ぶ。
進次と朴が続く。
大吉はその声に・・・。
広島駅。
汽車に乗り込む浩二。
「みんな、母ちゃんを頼むぞ。」
「あんちゃん、頑張れよ!」と弟たち。
「・・・さよなら。」と英子。
汽車が動き出す。
「母ちゃん・・・」
「体に・・気いつけんさいよ。
死ぬんじゃないよ。
絶対に死ぬんじゃ。」
君江が浩二の手を握り締めてそう言う。
浩二は涙をこらえて頷くと、敬礼してみせた。
「あんちゃん、バンザーイ!!」
ゲンたちが汽車を追いかけてくるの見つめながら、
浩二は笑顔を浮かべて敬礼する。
「帰ってこいよ!待っとるぞ!
あんちゃーーーん!!」
電車の中。
窓の外をふと見ると、誰かが河原を走っている。
「父さん!?
・・・父さーーん!!」
少しでも近づこうと川にはいっていく大吉。
「中岡浩二、バンザーーーイ!
バンザーーーイ!
バンザーーイ!」父が叫んでいる。
「ありがとう!!ありがとう父さーーん!!」
大吉は頷くと、息子の為に万歳を泣きながら唱え続けた。
彼のカバンに、父の作った、梅の絵の下駄が入っていた。
「父さん・・・ありがとう・・・。」
それを手に、浩二は号泣するのだった。
昭和20年7月26日
アメリカ、イギリス、中国の首脳による、
日本の無条件降伏を要求する、ポツダム宣言が発表された。
このポツダム宣言に対し、日本は降伏せず、
これを黙殺した。
アメリカのトルーマン大統領は、戦争を有利に終結させる為、
原爆投下を実行に移す命令を下した。
麦畑で作業をする中岡家。
麦の高さは、ゲンの首の辺りまで育っていた。
「もう食えるよ!」とゲン。
「もう少しじゃ。」
「なんじゃ。まだか・・。」
「もう少ししたら食べられるんよ。ゲン。」と英子。
「はようパン作って食いたいのー。」
「うどん食べたいなー。」
軍歌を口ずさむゲンに、父のゲンコツが飛ぶ。
「兵隊さんの歌はいかんよー。
父ちゃんが浩二あんちゃんのことを思い出すけー。」と進次。
「あーそうじゃった・・・。」とゲン。
笑顔で子どもたちを見つめていた君江が、倒れてしまう。
原因は、栄養失調と過労。
「栄養を取って安静にすること以外、手はないですの。
薬がのうては、医者として、どうにも出来んですわ。」
医師がそう言うのを、ゲンと進次は眠っている母を見つめながら
聞いていた。
川を見つめて考えるゲンと進次。
「母ちゃんの病気を治してやらんと・・。
どうしたらええかのー。」
「どうしたらええかのー。」
頭を抱えながら川に飛び込むゲン、
「ひらめいたー!!」
大吉は、芋を分けてもらおうと、親戚の家に行ってみたが、
自分たちが食べるのに精一杯、と断られて帰ってきた。
「食べるものは、もうどこにもない・・。」
悲しそうに英子に呟く。
眠っている君江を見つめる二人。
「君江・・・。
すまんの・・・。
お前が病気になるのは当たり前じゃ。」
「戦争さえなければ、栄養失調なんかには・・・。」
すると、庭に何かが投げ込まれる。
英子が開けて見ると、新聞紙に3円包まれていた。
新聞紙に
『コノオカネデ
エイヨウノツクモノヲ
カツテクダサヒ』
と書いてある。
「きっと、隣の朴さんよ!」と英子。
「朴さんが?」
「どうするん、父ちゃん。」
「・・・」
ゲンと進次が家に戻ると、魚を焼いたいい匂いがする。
「魚じゃ!」
母の持つ皿に、小さなメザシが乗っている。
目を丸くして魚をじーっと見つめる二人。
「あんたら、いつの間に帰ってきたん?」と英子。
「姉ちゃん!これどうしたんじゃ?」
「朴さんの行為に甘えさせて貰うた。」
「すまんね・・。
ゲンと進次も、食べ。」と君江。
「ええんか?母ちゃん!」
喜ぶ進次の頭をゲンが叩く。
「母ちゃんは病気なんぞ。我慢せい!」
「・・・ほうじゃな!!
忘れとったけど、わしゃ、お腹が一杯じゃ!」
「やせ我慢せんでもええんよ。腹が減っとるじゃろ。」
「ゲンは元気のゲンじゃ!
食べんでも生きていけるわ!
な、進次。」
「生きていけるわ!」
二人はそう言い部屋を走って出ていく。
申し訳なさそうに魚を見つめる君江。
と、お腹の音を鳴らしながら、進次が部屋を覗き込む。
少し迷ったあと、にっこり微笑むと、進次が君江になにやら
耳打ちする。
それを聞き、切ない表情を浮かべる君江。
進次はにっこり笑っている。
「ごめんよ、進次。」
進次が首を横に振る。
「何言うたん?」英子が聞く。
「なんでもないやーい!」
進次は笑いながら部屋を出ていった。
「母ちゃんが食べたあと、骨を頂戴って・・・。」と君江。
「進次ったら・・・。」
ゲタ売りの帰り、リヤカーを引く大吉は、
ゲンと進次が集まった人々に浪曲を披露しているところを見かける。
「イヨーッ、ベンベン!」
「妻は夫を労わりつつ〜
夫は妻に慕いつつ〜」
進次の舞いの可愛らしさと、ゲンの歌声に足を止める人々。
「かわいそうに。」
「親と死に別れたんやね。」
人々の言葉に、進次は兄に抱きつく。
「そうです。お父さんは、戦死しました。
お母さんは、病気で死にました。
ああ・・哀れなこの兄弟に、お恵みを!」
二人が揃って頭を下げる。
人々は同情し、空き缶にお金を入れていく。
「丁度時間とな〜り〜ました〜
この続きはま〜た〜あした〜」
「ペンペン!」
二人の様子を黙って見つめる大吉・・・。
「3円稼いだぞ!進次。」
「今日も母ちゃんに、メザシを食べさせてやれるわい!」
「魚を食べれば元気になるんじゃ!」
「うん!」
ゲンが川に潜って閃いたとは、このことだったんですね!
帰り道。
「戦争孤児っていうのは、儲かるのー!」と進次。
「人を騙すのは、胸が痛いけどな。」とゲン。
その時二人は、町の人々が、病人を良くするには、恋の生き血を
飲めばいいと話をするのを耳にする。
「鯉!」
「鯉!!」
「鯉がないとダメなんじゃ!」
「鯉を捕まえんと母ちゃん治らん!」
二人が向かった先は、大きな池のある家。
「行くぞ!進次。」
「あいよ!あんちゃん!」
鯉を捕まえようと、二人は池に飛び込んだ。
騒ぎを聞きつけ、家のものが出てきた。
「こらーーーーっ!!」
家主に追いかけられる二人。
「ごめんなさーーーい!!」
なんとか家に逃げ帰った二人。
すると、父が真顔で立っていた。
「こっちへ来んしゃい。」
大吉はそう言い部屋の奥へ。
「バレたんじゃ・・浪曲やってることが・・。」
「殴られる!怖いよぉー。」
父、母、姉の前に正座する二人。
「うちに金を投げ入れたのは・・・・お前らじゃな。」と大吉。
「ごめんなさい!!」「ごめんなさい!!」二人が謝る。
「・・・・・」
二人を見つめる大吉。
父の手が動く。殴られるかと歯を食いしばる二人。
大吉は、そんな二人の頭を優しく撫でる。
「お前らの浪曲は、上手かったぞ。」
「父ちゃんから聞いたよ。」母も微笑む。
「もう物乞いなんかするな。
お前らの気持ちは・・父さん痛いほどわかったけ。
じゃけんもうすんなよ。
わかったな。」
父の言葉に二人が頷く。
切ない表情で語っていた大吉が、やっと微笑む。
それにつられて二人も微笑む。
泣きながら二人を抱きしめる大吉。
「痛いよ。父ちゃん。」二人が嬉しそうに笑う。
「わしゃ幸せもんじゃ。
お前らのような子どもがおって。」
「殴られんかった。」進次がゲンと顔を見合わせて笑う。
「母ちゃん、はよう元気になるけんね!」
母の言葉に、母に寄り添う二人。
涙を拭う大吉。
「ねえ!父ちゃんと母ちゃんの為に、
うちら、もっと強うなろう!」と英子。
「うん!」
「約束しよう!」
「あいよ!姉ちゃん。ええの?進次。」
「あいよ!あんちゃん。」
三人が指きりする姿に微笑む両親。
「ゲン、進次!母さんにも、浪曲を聞かせてやれ。」
父に言われ、二人は照れながらも浪曲を披露する。
中岡家に幸せな笑みが満ちていく。
昭和20年8月6日
午前1時45分、マリアナ諸島にある、アメリカ軍基地から、
爆撃機が、発進した。
爆撃機の名は、エノラ・ゲイ。
世界に初めて人類に使用される、
原子爆弾が積まれていた。
縁側に寝そべり、空を見上げるゲン。
「今日もええ天気じゃのー。」
「天気じゃのー。」進次が真似をする。
久し振りに君江が一緒に食事を取る。
「母ちゃん!ようなったんか?」
「ええ。あんたらの浪曲を聞いたけんね!」母が笑う。
「今日も汁だけか・・。」と進次。
「我慢しんさい。指きりげんまんしたじゃろ?」と英子。
「・・・汁の飯も、今日までじゃ。
ゲンが学校から帰ってきたら、麦畑に行く。」と大吉。
「父ちゃん!麦を刈るんじゃな!」とゲン。
「そうじゃ。」
「パン作ってくれるんじゃな!」
「ああ!」
「うどん食べられるんじゃな!」
「お前ら、今日までよう辛抱したの。」
「良かったね!二人とも!」
はしゃぎまくる二人。
「座って食べんさい!」
父の声も耳に入らない。
その時、空襲警報が鳴る。
「・・こんなはようからか。」と大吉。
「みんな、はよ防空頭巾着んしゃい。」と君江。
防空壕に入ろうとしたゲン、
「あ!忘れとった!」
慌てて家に戻ると、壁に掛けた日めくりカレンダーを
ビリっと破く。
今日は、8月6日・・・。
広島上空は快晴。
気象観測機から、エノラ・ゲイ号に報告が入った。
この時、広島への原爆投下が、決まった。
空襲警報が解除される。
「偵察機だったか・・」と呟く父。
「英子、ゲン、はよう学校行かんと遅れるよ。」と母。
「はーい。」
空を見上げていたゲン、思い切り木の棒を振り、
あっかんべーをした。
弟の進次はそんな兄に拍手を送る。
兵庫海軍航空隊
「大和魂のある限り、我が、大日本帝国は、
必ず、勝てるのだ!!」
上官の言葉を聞く航空隊。
その中に浩二がいた。
ベランダで洗濯物を干す母に、ゲンが挨拶する。
「母ちゃん!行って来ます!」
「気をつけるんよ。」
「あいよ!」
仕事をする父に挨拶するゲン。
「父ちゃん、行って来ます!」
「今夜は、パンとうどんだ。」
「楽しみじゃー!!」
「姉ちゃん、行こう!」
「エンピツ削ってから行く。」
「なら、先行くど。」
兄が家を飛び出していくのを、なぜか寂しい気持ちで見つめる進次。
「あんちゃん!!」進次が笑顔で兄の後を追う。
だが、ゲンの姿はもうなかった。
がっかりする進次。
と、そんな進次を、誰かが「わっ!」と後ろから驚かす。
振り返ると、ゲンが笑顔で立っていた。
「エヘヘヘヘ!」嬉しそうに笑い合う二人。
「あんちゃん!はよう帰ってこいよ!
麦を刈りに行こうな!」
「おう。待っとれ〜!」進次のホッペを引っ張りながらゲンが答える。
「うん!!」
元気に走り出すゲン。
手を振りながら兄を見送る進次。
ふと、ゲンが足を止めて振り返る。
何事かと心配そうな表情を浮かべる進次。
真顔で振り返ったゲン、進次をしばらく見つめ、
そしてにっこりと微笑む。
兄の笑顔に、同じ様ににっこり微笑む進次。
「パーン!」ゲンが叫ぶ。
一瞬驚く進次、ニンマリと笑うと負けずに叫ぶ。
「うどーーん!!」
「パン!」
「うどん!」
元気に手を振り合う二人。
ゲンは再び走り出し、角を曲がっていく。
「待っとるぞー!」
進次はいつまでも手を振り続けた。
いつにも増して元気に学校へ走るゲン。
「待っとれ、進次。」
病院の階段でお人形を抱く、赤いオーバーオール姿の少女。
店の前に並んだ瓶。
「気持ちええの〜!」
ゲンが町を駆け抜けていく。
8時14分。
原子爆弾を積んだ、エノラ・ゲイ号は、広島市の上空に達した。
ゲンが学校に到着する。
校庭にいる友達に呼ばれ、駆け寄ろうとした時、
ゲンは一人の女性に呼び止められる。
「ちょっと!」
声のするほうへと、学校の門を出るゲン。
「何ね?おばさん。」
「1年生のオオノミノルの母なんじゃけど、
急用があって、息子に会いたいんじゃが、
一年生は学校かね?
それとも、お寺に行ったんかね。」
丸い大きなめがねをかけた母親が、ゲンに聞いてきた。
「わしゃ2年じゃけ、わからんよ。
先生に聞かんとのう。」
その時、上空を飛行機が飛んでいく。
「あれ?B29じゃ。いつの間に来たんじゃ?」
「おかしいね。空襲警報も鳴らんのー。」
ここでCM。
ここにCMを入れないでほしかった。
緊張感が途切れてしまいます。
8時14分。
頭巾に手を伸ばす英子が、ふと時計を見つめる。
ベランダで洗濯物を干す母が、
庭で遊ぶ進次が、飛行機の音に空を見上げる。
静かで穏やかな麦畑。
ゲンたちが楽しみにしている麦が、風に静かに揺られている。
エノラ・ゲイが爆弾を投下した。
時計の針が、8時15分をさしたその時、
上空600メートルで世界初の原子爆弾が炸裂した。
まばゆい光と爆発音に、誰もが目を覆う。
病院の前に座っていた少女が、まぶしさに、人形を落とす。
人形が、熱に解かされていく。
店先に置いてあった瓶がぐにゃりと曲がり、溶けていく。
麦が突風に煽られる。
大爆発の炎と煙が、ものすごい勢いで町中に襲い掛かる。
1945(昭和20)年8月6日
午前8時15分
原爆投下
瓦礫の下から起き上がるゲン。
咳き込みながら辺りを見渡す。
「何が・・起きたんじゃ?」
大切な帽子に火の粉が燃え移る。
足元に、変形した丸いめがねが落ちていた。
「あれ・・・
おばちゃん?」
さっきまで一緒にいた女性は、木々の下敷になっている。
焼き焦げた手足。突き刺さったガラス。
力が抜けてその場に座り込むゲン。
ゲンを守った壁の向こう側は、死体だらけだった。
地獄と化した町の中を、自分の家へとさ迷い歩くゲン。
「父ちゃん・・母ちゃん・・姉ちゃん・・進次・・。」
ゲンがリヤカー、中岡家の表札を見つける。
そのそばに、真っ黒に焦げた麦藁帽子。
「あんた!進次!!」母の声が聞こえる。
君江が、崩れた家に向かって泣き叫んでいた。
「ゲン!!」
「母ちゃん!!
父ちゃんやみんなは!?」
「家の下敷になっとる!」
「父ちゃん!!」
ゲンの声に大吉は気を取り戻す。
「痛い・・」泣き叫ぶ進次。
「はようここから出せ。」
父の言葉に、瓦礫をひとつずつどかしていくゲンと君江。
瓦礫の下に、動かない足が見えた。
「姉ちゃん!」
頭から血を流す英子。返事はなかった。
「なんとか・・してくれ。」と大吉。
「痛い・・・」進次が泣いている。
「進次・・大丈夫!?」と君江。
「待っ取れ!今出してやるぞ!」
瓦礫をどけていくゲン。父と手が触れ合う。
君江が進次の腕を捕まえる。
「柱に挟まれとる。どかしてくれ。」と大吉。
「今やるけんね!」
大きな棒で柱を動かそうとする君江とゲン。
「痛い!」
「我慢するんじゃ、進次。
すぐに出られるけ。」と大吉。
「父ちゃん・・」
進次は泣きながら父に手を伸ばす。
届きそうで届かない二人の手。
「頑張るんじゃ、進次。」
大吉の指が進次の指を捕まえる。
が、2人の手はすぐに離れてしまった。
泣きながら二人を必死に助けようとする君江とゲン。
「わしらだけじゃ無理だ。」
行き交う人に助けを求めるゲンだったが、誰もそれどころではなかった。
「火が回ってきとる!」
気がつくと、火の手がすぐそこまで迫ってきていた。
「母ちゃん!火が!」
「はようせんと!」
2人は必死に柱を持ち上げようとする。
「痛いー。我慢できんー。」進次が泣く。
「がんばれ!
一緒に麦を刈りに行くって約束したじゃろ!」
「うどんが食べたいよー。」
「食べような!うどん一緒に食べような!」
「死にとうないよー。」
「火が・・・」君江が叫ぶ。
「諦めんな、母ちゃん!」
「危ない!」大吉が叫ぶ。
火のついた柱が落ちてきた。
火が、あっという間に家に燃え移っていく。
「怖いよー。」進次が泣き叫ぶ。
その場に座り込む君江。立ち尽くすゲン。
「君江!逃げるんじゃ。
ゲンを連れて、逃げるんじゃ!」
「あんたーっ!!」
「お前らだけでも、助かるんじゃ!」
「別れるんは嫌じゃ!」
「生きるんじゃ!」
「嫌じゃーっ。みんなと一緒に死ぬ!」
泣き叫ぶ君江。
「よく聞け!
お前には、まだ母親の役目が残っとる。
腹の子ども、育てる、仕事があるんじゃ。」
「嫌じゃ!嫌じゃーっ!嫌じゃーっ!」
「こんなに言っても、わからんのか!」
「熱いよーっ!」進次が泣き叫ぶ。
「進次ーっ。」泣き崩れるゲン。
「泣くな!ゲン!」大吉が言う。
「どうしたらええんじゃ?」
「お前は死んじゃいけん。
お前の、妹か弟か、母ちゃんの腹の中にはおるんじゃ。
兄さんならしっかりせい!
はよ、母ちゃん連れて逃げるんじゃ!」
「父ちゃん!!」
「父ちゃんの言うことが聞けんのか!」
「聞けん!」
「頼むけ、逃げてくれ・・」
「嫌じゃ!」
「頼む!!
強うなるんじゃ、ゲン。
わしのせいで苛められても、
お前は、負けんかったろ。
父ちゃん、頼もしかったぞ。
嬉しかったで。
忘れたんか。
ゲンは、元気のゲンじゃ!」
父がゲンに笑いかける。
「・・・」
泣くのを我慢して父を見つめると、ゲンは力強く頷く。
「母さん、頼んだで。
はよう、母さん連れて逃げるんじゃ。」
息子に笑顔でそう諭す大吉。
「・・・わかったよ。」
ゲンはそう言うと、泣き伏せる母を家から引き離そうとする。
「何するんじゃゲン!」抵抗する君江。
「父ちゃんの言うことを聞くんじゃ!」
父のほうを見つめると、父は笑顔で見ていてくれる。
「しっかり生きるんじゃ!ゲン!」
「父ちゃんー!」
「行かんでーー。」進次が泣いている。
「進次ーっ!!」
「心配すんな。
英子と、進次の側には、父ちゃんがおるけ。
はよう、母ちゃん連れて逃げるんじゃ。
はよう!!」
「進次・・英子・・」
燃え盛る炎に歩み寄ろうとする君江を、通りがかった大人が止め、
安全な場所へと連れていく。
君江たちが離れていくことを確認すると、大吉の顔から笑みが消えた。
「あんちゃん!あんちゃーん!
熱いー。」進次が泣いている。
「進次!進次!」大介が進次へ手を伸ばす。
「父ちゃん・・」
2人の指が触れ合う。
「許してくれよ・・。
助けてやれんで・・。」
父を見つめる進次。
「父ちゃん、側におるけ。」
父の言葉に、信時は泣きじゃくりながら歌を歌い始める。
「じゃん・・じゃん、じゃがいも、」
大吉も一緒に歌いだす。
「さつまいも・・ホイホイ。」
号泣しながら、母を連れていく男の後をついていくゲン。
振り向くと、瓦礫は崩れ落ち、家は大きな火に包まれ・・・。
「じゃんじゃーーーっ!」
空を仰ぎ、ゲンが泣き叫ぶ。
広島に投下された原子爆弾は、強烈な熱戦と放射線を
四方に放射し、
町に大きな被害をもたらした。
原爆によって、この年の暮れまでに、10数万人の市民が
死亡した。
瓦礫によじ登り、辺りを見渡すゲン。
焼けつくされて何もなくなってしまった町の姿に、
ゲンはただ叫ぶことしか出来なかった。
※一部公式HPあらすじを引用しました。
ゲンの叫びで終わった第一部。
その後に続くエンドロールは、麦畑でおもいっきり伸びをする
ゲンの笑顔。
まさに、地獄と天国。
天国、と形容した麦畑のシーンですが、
そこは天国ではなく、貧しさと、ひもじさ、世間からの非難の目に
闘う中岡一家でした。
それでも、元気いっぱいの子どもたち。
麦畑を元気一杯走り回るゲンと進次。
なんて表情の豊かな子どもたちなんでしょう!
冒頭から、彼らの表情に引き込まれ、のめり込んでいきました。
厳しいけれど、まっすぐで、頼もしくて、愛情深い父。
優しくて強い母。
家族を守ろうと戦地に向かった兄。
病弱だけれども優しくて強い姉。
そして、ヤンチャだけれど優しい子どもたち。
病気の母に、戦争孤児と嘘をついてお金を稼ぎ、
自分たちからとは言わずに庭にお金を放り込む。
自分たちだって食べたくて仕方がないのに、母に魚を食べさせ、
残った骨をねだる進次のいじらしさ!!
お母さんも優しい子どもたちの思いがどれほど切なかったか。
お金はないけれど、愛に溢れる一家です。
貧しくても強く逞しく。
世間に蔑まされても、強い絆でしっかりと支えあう。
今の日本人が無くしかけている尊いものが、
そこにありました。
お父さんが長男・浩二を万歳唱えながら見送るシーン。
学校へ出かけていくゲンを見送る進次。
いつもの出来事なのに名残惜しそうな二人。
この二つのシーン、これが、別れの時なのだろうと感じ、
家族の笑顔に涙が溢れました。
お父さん役の中井さん、お母さん役の石田さん、
長男役の中尾さんが素晴らしかったのはもちろん、
今回は三人の子役たちの演技にやられっぱなしでした。
上にも書きましたが、本当に表情が豊かで、愛らしくて。
子役たちのプロフィールを見てみました。
見ていたドラマもあるけれど、正直記憶に残っておらず。
これからが本当に楽しみな子どもたちです。
末っ子・進次役の今井悠貴君はまだ9歳!
時々見せる表情が阿部サダヲさんに似ていて、
本当に可愛い!
ゲン役の小林廉君の演技は見事でした!
番宣で、父親役の中井さんは、子どもたちを本当に叩いたと
言っていました。
子どもたちも、彼らの人生の中でこれほど頑張ることは
他にはないだろう、というぐらい頑張ったそうです。
お母さん役の石田さんは、撮影中、何度も本気で泣いて
本気で笑ったとおっしゃっていました。
「おかあちゃん!」とまとわりつく子どもたちが今いなくて
寂しいとも。
レビューしながらまた泣いている自分がいました。
後編もしっかり見ていこうと思います。
※後編はこちらです。
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キャスト
中岡 大吉 : 中井 貴一
ゲンの父親。やさしく厳しい一家の大黒柱。下駄の絵付け職人。戦争に強く反対しており、堂々とそれを主張してはばからない。そのため周囲から非国民と責められるが、その信念を曲げることは決してなかった。「踏まれても真っ直ぐ伸びる麦のように強くなれ」と子供たちに言い聞かせて育てた。
中岡 君江 : 石田 ゆり子
ゲンの母親。夫を支え、子供たちを守る良妻賢母。夫が拘留されている間も自分を鼓舞して強く生きようとする。そして、混乱のさなか瓦礫の片隅で赤子を出産するが・・・。
中岡 元 : 小林 廉
どんな逆境にもくじけない明るさと強さを持った少年。口が悪く、喧嘩っ早いところもあるが、決して弱いものいじめを許さず、母や姉をいたわる優しさも持ち合わせている。
プロフィール
中岡 浩二 : 中尾 明慶
ゲンの長兄。真面目で一本気な性格。学徒動員で軍需工場で働いていたが、「非国民」として迫害されるのを撥ね返す為、海軍の予科練に志願する。
中岡 英子 : 小野 明日香
ゲンの姉。体が病弱で、学校の集団疎開には行けなかった。非国民といじめられても、両親に心配をかけないようにそれを黙っていたやさしい女の子。
プロフィール
中岡 進次 : 今井 悠貴
ゲンの弟。甘えん坊の末っ子。やんちゃで明るい。
プロフィール
中岡 元(現代) : 山本 學
現在のゲン。
朴 永甫 : 勝村 政信
中岡家の隣人。気が優しく、なにかとゲンらを気に掛ける。
鮫島 伝次郎 : 小野 武彦
町内会長。中岡家を目の敵にする。
田中校長 : 鶴田 忍
ゲンらが通う国民学校の校長。
沼田先生 : 大河内 浩
英子の担任。英子が金を盗んだと一方的に決めつけ・・・?
警察署長 : 矢島 健一
大吉を危険思想の持ち主と厳しく責め立てる。
浜田警察官 : 市川 勇
鮫島とつるんで“非国民”を取り締まる。
佐伯司令官 : 升 毅
浩二が所属する海軍航空隊の司令官。
特高警察刑事 : 田中 要次
軍事工場での爆発事故を浩二が仕組んだのではないかと疑う。
菊代 : さくら
原爆で幼子を亡くした若い母親。
倉田 伸介 : 村田 雄浩
ゲンと出会う兵士。
矢部医師 : 平田 満
救護所の医師。
耕作 : 杉本 哲太
原爆の被害をまぬがれた山向こうの村の一家の主。
ウメ : 中島 ひろ子
耕作の妻。
林 清子 : りょう
君江が頼る友人。君江たちをかばうが・・・。
林 セツ : 左 時枝
清子の義母。君江たちを疎んじる。
吉田 英造 : 佐藤B作
征二の兄。征二を遠ざける。
吉田 政二 : 成宮 寛貴
画家の卵だったが、被爆して両腕を失い、絶望の底に・・・。
吉田 花子 : 深浦加奈子
被爆した政二を忌み嫌う義理の姉。
スタッフ
原作
中沢 啓治
脚本
君塚 良一
音楽
佐藤 直紀
プロデュース
増本 淳
プロデュース
小椋 久雄
演出
西浦 正記
演出
村上 正典
中井 貴一さんの主な出演作品
石田 ゆり子さんの主な出演作品
原作は中学時代に学校の図書館で借りて読んでいますが、昨日のドラマはそれとは別物と思いながら見てました。どういうわけか別物と思って見ていたんです。あの悲惨な物語と、美しい日本の風景がふんだんに出てくるドラマがどうにも結びつかなかったんだと思います。
しかし、ゲンを校門の前で呼び止めたおばさんが出てきたとき、原作の記憶が急激によみがえってきました。
そうだ、このおばさんに呼び止められたから校門の影に入ってゲンは助かったんだ、でもおばさんは熱線を浴びて死んじゃうんだ、たくましいお父さんも死んじゃうんだ、優しいお姉さんも、明るい弟も死んじゃうんだ、そしてゲンはこの家族から離れるとき弟から「ズルい!」って言われるんだ・・・。
原作とドラマがやっと結びついて、胸のドキドキが止まらなくなりました。見ていて辛かったです。
戦争がどんどん遠くになっていく感じがしています。せめて八月だけは戦争に思いを馳せたいですね。
今では大吉のように反戦を強く思う人たちが大多数ですが、当時は情報も規制され真実の戦局も操作されれば、回りに流される人が多かったのでしょうね!自分も当時に生きていれば流されていたと思います〜
信念を持って反戦を訴える大吉、父親として強さと優しさを表してくれました!警察の拷問にも耐え戻ってくると英子を疑った教師を糾弾、でも町長の息子には手を出さなかったり、元と進次が嘘の浪曲でお金をもらった時も母親のためにしたことと抱きしめてやったり、浩二が出兵するときも冷たくしながらも最後は父親として見送るすがたに涙しました、さいごの進次に手を伸ばし励ますシーンも凄いですね!中井さんの戦火で倒れるシーンは山田太一さんの「終わりに見た街」を想い出しました!
君江も自分が栄養を摂らなくてはならない時にも子供たちに分け与える優しさと殴りこんできた町長を追い返す強さ「ほたるの墓」でも強くなくては生活できない母の姿をみましたが、これからもっと強くなるのかな?
元が少し父親の言っている反戦に気付いての作文や言動に対してまだ解っていないのか空襲警報にも無邪気に唄う進次が印象てきでした!太田総理でもこの話題を討論していましたが、なぜ一般市民のいる場所に投下したのか理解できませんね?被爆経験者が書いたスケッチとドラマの中の幽霊のような手で逃げ惑う姿が重なり悲しくなりました!
後編もよろしくお願いします!明日はドラマが重なりますので、時間の空いたときの記事書きまでお待ちします、暑いですが体調にも気をつけて!